第20話 制裁を

◇◇◇

レティシアから、報告を受けていた。


そして、お願いもされた。


「お父様の書斎に行って、不正の証拠を見つけてください」


わざわざそんな、家が潰れるほどのそれを、娘が言うものか、と思ったが、行ってみる価値はあった。


そして、それは当たっていた。


「ひどいな…」


横領、賄賂、裏帳簿。

様々な書類を見つけて、階段を下ってきた。


もちろん、レティシアを救うために。


「残念だよ」


本当に。


「捕まえろ」

「待ってください、殿下!話を」

「話は裁判で、だ。これは、覆しようのない事実だろう?」


その後、彼らは裁判で有罪判決、侯爵と侯爵夫人は4番牢に入れられた。


レティシアの兄である次期エリオット侯爵は、そのエリオット家の功績に免じて謹慎処分に加え、子爵への降爵が決まった。


「ありがとうございました、殿下」


幸い傷痕が残らなかったレティシアは、私に感謝を述べた。


レティシアは、あんな家族から育てられたのか。道具として。


私の父親も大概暴君だが、それと同様、レティシアも「本物の愛情」を受けて来なかった。

私は母が愛情深く育ててくれたし、そこに偽りはないとわかっているが、彼女の場合は偽りしか貰わなかったのだ。


私が言えることではないが。


私も彼女も、不遇なのだと、世の中の残酷さを改めて思い知らされた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る