第44話 凶悪な過去
父は、昔から暴君だった。
いいや、正確には政治すらきちんとしないただの「莫迦」だったのかもしれない。
父は、まず、税金を引き上げた。
ただでさえ不作であるというのに、私欲のために国民を犠牲にするその姿は、私にとって、一番信じられない光景だった。
国庫には物資が不足し、それでも贅沢する父をどうすることもできなかった。
次に、伝染病を無視した。
隣国との和平条約を結ぶ際、伝染病が流行しているのではないかと疑った隣国に対して、嘘の報告書を作成して無理やり結んだのだ。
そして、何の対策もしない。
また、個人的に沢山の人を傷つけ、殺してきた。
ある侯爵家の令嬢に惚れた、と言ったときにはもう妻がいたというのに、迫りに迫った。
もちろん、令嬢は拒む。「陛下には、皇后陛下という素晴らしい奥方様がいらっしゃるではございませんか」と。しかし聞く耳を持たず、手を出してしまう。
令嬢は運悪く身籠ってしまい、しかし彼女は身を投げる。
それから家族は抗議しているが、遺体はまだ見つかっていないという。
大量虐殺をした時もある。
しかし、それは秘密裏に行われ、関わった人は、人質をとられるなどして脅され、誰も口を開かない。
そうやって、様々な凶悪な行いをしてきた父、しかし証拠がもみ消されている。
今皇帝を倒すためにすべきことは、まず証拠から見つけねばならないのだ。
婚約破棄を告げられたループ令嬢は、実は溺愛されていたことを知る 〜私の想いは届かない〜 月橋りら @rsummer
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