第36話 再び訪れた悲劇

カツン、カツン。


この静まり返る5番牢で、足音が響く。


「レティシア。まさか、君が」


反逆罪を起こすなんて。


彼は呆れたように言い放った。


「すまないがーー婚約を破棄させてほしい」


ーー目の前が真っ暗になる。


ええ、そうでしょうよ、わかっていたこと。


けれど、いざ口にして言われるとーー私は耐えれるほど強くない。

ループして、慣れたわけでも、無でいられるわけでも。


辛いのだ。


「ふ…ふふ、ふふふ、あはは」


笑いが止まらない。


もう、どうでも良くなった。ーー何もかも。


あなたと紡いだ少しの時間は、次のループに役立てよう。

そう、覚悟する。


「っふ、次は、何度目でしょう?」

「まさか、また繰り返すつもりでーー」

「ええ。今まで通り、でしょう?」


期待することなど、何もない。


黒いローブの男が現れ、殺され、そして回帰するーー。

相違ないだろう。


◇◇◇

レティシアが、反逆などするだろうか。


賢い彼女がーー?


「ほら、言ったじゃないですかぁ。何かしら、企ててたんですよっ」


ルビィ嬢はざまあみろ、と言った感じで笑っていた。

反省のかけらもない。


ブレスレットを見つめる。


ペアで買った時、彼女は今までにないほど感情を表に出し、嬉しそうにしていた。

すごく、愛しかった。


彼女がーー私を裏切っていないと、そう思いたいのに。



そして、様子がおかしくなりはじめたのは、それから一週間後だった。



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