【#9】急増
「キーンコーンカーンコーン」
午前の授業終了を知らせるチャイムが鳴り響き、これから昼休みに入る。
昨日は
初日は色々あったな。
装備をどちらも隠しボスのものに出来たので上々の滑り出しと言えるだろう。
配信の方もなかなか良い調子だったのではないだろうか。
昼休みといっても俺は教室を出て何かやるということなどなく、席から一歩も動かずぼーっと窓の外を眺めながら母が用意してくれた弁当を食らう。
脳まで暴食刀と化しているのか、と一人ツッコミを入れ、ゲームに使うエネルギーを温存するかのように放課後までだらだらと過ごす。
「おい! GHO2やったか?」
んお? 今にも夢の中へご案内されそうだったところを現実に引き戻したのはクラスメイトの気になる一言。
もしかして――という希望はすぐに破壊され、仲良しグループであろう彼らは話し出す。
だが、右耳へと入ってくる話に俺の体は自然と少しでも聞きやすいよう動き始めていた。
側から見れば半身を道に突き出す邪魔者でしかないが、この会話は貴重だ。
一言も聞き逃すまいと耳に全神経を集中させる。
「――――だよな」
内容は
今日帰ったら
GHOにおいてマルチプレイはカジュアルな面とガチな面を併せ持つ。
どちらかと言うと俺はガチな面が多かったので、入れて! と始まるストーリーを心の中で作り、存在しないマルチプレイを楽しんだ。
「あんた、何してるの?」
おっと、聞くのに夢中で忍び寄る人影に気付かなかった。
「どうした、香凛」
話しかけてきたのは、マルチプレイを楽しんだ仲の――ではなく唯一のと言ってもいい話し相手。
「ゲーム進んだ?」
幼馴染からゲームの話とは珍しい。
もしかして興味を持ってくれたのでは……ならばここは重要な局面だ。
暴食龍の体力ゲージがあと1割といったところか。
一度間違えればゲームオーバー、慎重にいこう。
「あ、ああ。 程々にな」
どうだ、これはとても無難な返しじゃなかろうか。
まずは様子見だ。さあ、どう動く……。
「そうなんだ……えっと……」
「どうした?」
「キーンコーンカーンコーン」
何だと⁉︎ 乱入モンスター……そう来るか。しかし、まだ授業が始まるまでは――――。
◇◇◇
くっ……聞き出せ……なかった。
あの後話しかけても何故か避けられるし、やはり選択を間違えてしまったのだろうか。
ゲーム内の俺を呼び出して話した方が良かったか? いやしかし、前作がまだ抜けきれていない俺を登場させるなどその瞬間から冷たい視線に晒されること確定だ。
現実はどうしてこんなにもプレイングが下手くそなんだ。
ええい! とにかく今はGHO2を進めるんだ! 現実逃避ではない。
俺はただ
◇◇◇
ふう、やはり
サウザの街へと戻った俺は今日もGHO2を進めていく。
まずは配信っと……メニューウィンドウを開き、『配信機能』のバーをタップする。
タイトルは【#2】何にしようか。右手を頬につけ配信タイトルになりそうなものを周りを見渡しては考える。
……ん……んん⁉︎ 見渡してみて何も思い浮かばなかったので、一度自分のチャンネルを見つめると昨日と違う点が目に飛び込む。
よし、これをタイトルにしよう。
しかし、何故急にこんなことになっているんだ?
【#2】登録者2万人ありがとう
3700人が視聴中
『レットチャンネル』 2万
配信のことはよく分からんが、登録者数と視聴数は比例しているのか? 確かに、
しかも、これからさらに増えていくことだろう。
そして、配信機能は今作からだ。
もしかすると、まだ地盤が固まっていないからこそ起こる現象なのだろうか。
ここまでになる心当たりはないが、ありがたいことに変わりはない。
〇 2万人おめでとう
〇 初見です
〇 セブンさんから来ました
〇 切り抜きから来ました
〇 切り抜きから
〇 バズってますね!
〇 初見です
〇 おめでとー
〇 暴食龍第一発見者だ!
〇 切り抜きめちゃ上手でした
〇 レットさん来たあああああ
〇 プレイは真似出来ないけど、参考になる
〇 うおおおおお
〇 初見です
〇 初見です
一度
『ステータスオープン』
名前……『レット』
武器……『暴食刀』
防具……『ディノスコート』
体力……『2500』
攻撃力……『1200』
防御力……『2000』
称号……【龍殺し】
切り替え可能【沼の王】
ディノスコートは昨日倒した"沼の王者"
『ディノスコート』
・防御力+2000
・固有アビリティ【洗浄】
・形状変化
称号【沼の王】は沼地では沈まず、水面を歩くことができるようになる。
紹介はこれくらいにして、やっていくとしますか!
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