【#43】聖剣

 その姿は神々しく、背から生える八枚の金色の翼にショートヘアだった黒髪は白髪となり金色のメッシュが入っている、金色へと変化した鎧には名残なのか水色のラインが胸の中心から所々へ流れる。


 『"超越騎士"ランスロット零』、右手で握るは鎧と同様、金色を基調とした直剣。


 珍しいな、剣を数秒見つめるとその横に現れる小さな横長のウィンドウ、まさか戦闘中にエネミーの武器名まで表示されるとは。


 『聖剣ゼロ』、それが剣の名だ。


「よお、ランスロット。 お目覚めかい?」


「待ってたよ! 早く君と戦いたいんだね! だけど、僕より輝いているのは許せないよ!」


「俺もレット、グランお前たちとは本気で戦ってみたかった。 まあ、こんな状況になってしまったが」


 正直ランスロット、もとい、円卓の騎士と過ごした時間は短い。


 現実の時間だと一日も経っていないからな。


 それ故か戦闘へ向けている感情の方が大きい。


 (戦闘狂が)


 ああ、今ならノータが言っていたことが沁みる。


 とまあ、早速やっていくか。先ほどから戦いたいと疼いて仕方がないんだ。


 吹き飛ばされた草原の一部は黒い大地へと変わっている、両手で柄を握り右肩に担ぐように構え、その地面を踏み締め力強く蹴り前方へ飛んでいく。


 もう一度言うが、今度は声を高らかに。


「ランスロットォォォ!!」


 右肩を見せていたランスロットは体を正面にさせ、地面を覗いていた剣の視線は此方へ向けられた。


 十メートル以上離れていた体は五、三、一と近付いていき、振り下ろした刀は右手で構えられた剣と交わる。


「ゼロとの戦いになると思ってたんだがな、まさかあんたと交えることになるとは」


「ふっ、お前はまだまだだな、レット」


「? あんたがどれほど強かろうが俺は……ぐっ!?」


 何だ!? 突然自分自身の力が弱く……いや、自分自身というよりもこれは……。


 顔に向けていた視線を砂漠ノ守護刀へやる。まさか、だが、そんなことがありえるのか!?


 すぐさまバックステップを二回いれ、距離を取る。


「そんなことがありだとはな」


 その表情は絶望、ではなく、喜び。


「この剣はゼロそのものだからな」


 砂漠ノ守護刀は聖剣ゼロと交えた瞬間、耐久値がゼロになっていた。


 耐久値がゼロになると、その武器の攻撃力は著しく減少する。


 突然力が弱まった原因はこれだが、触れただけで……。


 正確には、目に入れただけで効力はないが、剣から常時放出し纏っている零の輝きの影響か。


 ランスロットの剣となったことで、今までの零の輝きとは別物だ。


 さて、どうしたものか、近距離武器の俺とグランだけではなかなかに厳しい。


 耐久値の回復方法には鍛冶屋や修理キットなどがある、しかし、修理キットを使い切る時間を待ってはくれないだろう。


 相性が良さそうな砂漠ノ守護刀を失ったのは痛いな、暴食刀では力不足か、ノータやサタンがいればまた違う動きができるんだが。


 ヘシキリハセベに切り替え直し携える。


「うーん、僕たちでは厳しいね!」


 光鎧の男が正直に代弁してくれたようだ。


 だが、二人であればやりようはある、試していくしかないか。


『抜刀"火縄"』


 柄を握り右上へ引き抜くと弾丸の如し黒いそれはランスロット目掛け発射された。


 視線は此方、龍騎士の背後に見えるは近付く光騎士。


『飛刃"火縄"』


 引き抜いた場所へ戻すようにもう一度刀を振るうと飛んでいく弾丸の後ろをついて行くように二発目の黒い弾丸を撃ち込む。


『刺突"火縄"』


 両手で持ち上げるよう構えた刀を突きながらさらにその後ろをついて行く黒いロングコートの男。


 この挟撃であれば、避けなかった場合一太刀は浴びせられるはずだ。


「……お前たちはその程度だったか」


 ランスロットは前に構えていた剣を高速で右下へと払う。


 剣を振った幅は胸辺りから腰までだが、天に昇るように放たれた金色の斬撃は徐々に光を放射する。


 ……どういうことだ、何故何もない空へ……そういうことか!


「レット、そのままだよ!!」


『固有アビリティ【挑発】+称号【モットオレヲミテ】』


「ああ!」


 俺は刺突した状態のまま目を瞑り、斬撃から放たれる輝きを回避。


 強制ヘイトを食らった状態だと最短距離で攻撃したくなるはずだ、グランに正面から攻撃を仕掛けた場合は刺突が直撃する。


「……とでも考えているのだろうが、現在の装備では俺に効力はない」


「なあランスロット、それは


「なっ!? ……しかし、それではただの仲間割れだぞ?」


「ランスロット! 君は僕たちが本当にその程度だと思っているのかい?」


「ならば見せてみろ」


 狙うはグラン、抜刀、飛刃、刺突の順にスキルを放った時、それを


 恐ろしいがそれだけでいいんだ。


 光の放射が止み、開いていく瞼、視界に映るは目を開けた光騎士と今にも直撃しそうな三発目の弾丸。


 一、二発目は既に彼の背後を進む。


 光鎧の男は切っ先が胸へと突き刺さる間一髪のところで道を譲るように左へ体ごと躱し、通り過ぎると次第に足は地面に近付きやがて接触する。


 勢いで土に二本の線が伸びていき、その線は途絶えた。


「……わざとギリギリで躱したよな?」


「ん? 何のことかね! 僕は危なかったんだよ!」


 「前のめりになりすぎて転ぶ様を見ようとしてただろ!」と言いたいところだが、今回はグランの回避能力ありきの作戦だ。


「確かに凄い、のかもしれないが、それで終わりなのか?」


 振り返ると、直線状に立っていた龍騎士は既に十メートル前方の位置へと移動していた。


 さて、本番はここから。


 耐久値をゼロにする輝きを纏う剣に零の輝きを放つ斬撃、対抗するには俺たちで揃う必要があった――。



「レット、グラン」


「どうしたんだ、アーサー王」


「何かね!」


「ランスロットが連れてきた君たちは確かに強い、が、まだ二人で一人前と言うべきだろうな」


「もちろん、僕が0.9人前だよ!」


「それだけ言いたかったわけではないだろう?」


「ああ、君たちは既に我々の仲間、騎士だ。 もしも、困難に陥った場合ある名前を口に出すがよい、きっと力になる。 だが、今の君たちでは二人同時に呼ばないと応えてはくれないだろう」


「ある名前とは?」


「『□□□□□』、円卓の騎士のみが扱うことを許される最強の武器だ」



 ――アーサー王よ、もしかしてこうなることが分かっていたのか?


 まさに今が"困難"というやつだ、使わせてもらうぞ。


 後ろを振り向き歩いていく、そして、冒険者、騎士としての相棒の横に立つ。


「いくぞ、グラン!」


「ああ!」


 さあ、俺たちの元へ。


「「来い、聖剣エクス!!」」



〇 めちゃくちゃな強さや

〇 こんなん勝てんて

〇 次元が違いすぎる

〇 レト×グラまじやべえ

〇 こんなパーティーメンバーいたらえぐい

〇 きたきたきたきた

〇 く、くる

〇 聖剣ゼロvs聖剣エクスだと!?

〇 うおおおおお

〇 さらに熱くなってまいりました

〇 鳥肌

〇 頑張れ!

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