【#44】煌めき

 その名を呼ぶと、どこからともなく現れる聖剣。


 それは、円卓の騎士のみが持つことを許される最強の剣。


 何故なのか、例え円卓の騎士以外がその名を呼ぼうとも応えてはくれない。


 金の柄、鍔、白光はっこうした刀身ブレード、その周りでキラキラと煌めく菱形ひしがた


 さて、その力はどれほどのものなのか。




 頭上前方に現れた聖剣エクス、だがこれは……一本だけだぞ?


 いや、まてよ、確かにアーサー王は二人で一人前と言っていたし、二本なんて一言も発していない。


 と、いうことは……。


 俺は、すぐさま右足に力を込め地面を蹴り、飛ぶ。


 その先には呼びかけに応え、空中に召喚された剣。


「あ! ちょっと! これは僕が使うに相応しいんだね!」


 コンマ数秒遅れて右隣に立っていたグランは鎧を揺らしながら跳躍する。


「いや、俺にこそ相応しいだろ!」


「違うね! 僕だよ!」


 黒ロングコートの男と光鎧の男のいざこざ。まさか、剣を振るえるのがどちらか一人だけとはな。


 だが、譲る気はない!


「よしっ!」


 右手には柄を握る感触、取った!


「渡さないよ!」


「わっ、おいっ!?」


 右から割り込んできた男の左手は同様、柄を握る。


「俺の方が握っている部分が上だ!」


「いーや、下の方が偉いんだね!」


 お互い、握った剣を自らの元へと引き寄せんとする。


『固有アビリティ【浮遊】』


「残念だったな騎士君、俺は空中に浮けるのだよ。 君だけ落ちるがいい」


「なっ!? むっかー! 絶対離してやらないよ! ロングコート君、僕の体重ごと支えられるかね?」


 二人の男は一本の剣を巡りニヤニヤと不敵な笑みを浮かべる。


 しかし、なんて握力なんだ。


『固有アビリティ【挑発】+称号【モットオレヲミテ】』


「さてさて、流石の君も僕に集中しながらはきついんじゃないかな?」


 ぐっ、称号まで持ち出してくるとは……これは無理、だ……。


 【浮遊】を切ると、その体は光鎧の男と共に落下していく。


「あっ!? 急に切らないでよ!」


 切った直後の影響か、ふわりと落下する俺に対し、彼の落下速度は速かった。


「待て! そんな速く落ちていくな! 右腕が!? ……あれ?」


 妙に軽くなったと柄に目をやると、握っていたはずの左手が消えていた。


 これが聖剣エクス……。


 上に向いた視線を前に戻し、伸ばし切っていた腕を曲げ、剣を目の前に構える。


「あれぇ!?」


 何だ? まだ握っていると思っていたのだろうか。


 ゆっくりと地に近付いていく間、即座に落下していった光騎士の方を確認した。


「グラン、それは!?」


 その左手にはの聖剣エクス。


聖剣エクスこれは分裂でもしたのかね!」


 分裂か……ん? もしかしてだが、聖剣エクスは元々二本になる予定で、召喚をし終えてなかっただけなのか!?


 確かに、出現した瞬間取り合ったからな。



「……グラン、すまない」


「僕も悪かったね!」


 浮いていた足は既に地を踏み、光鎧の男の左隣に並び立つ。


「俺は一体何を見せられていたんだ……」


 そして、本当にすまない、ランスロット。


 気を取り直して再開といこう。


「相棒よ!」


 左手で握った剣の切っ先を龍騎士に向けて構える光騎士。


 あまりこういうのは柄じゃないんだがな、しかし、悪くない。


「ああ、行くぞ!」


 右手で握った剣の切っ先を光騎士同様に構える黒騎士。


 それはまるで、鏡の先にもう一人の自分がいるようだ。


 聖剣を腰に携えようとした瞬間、ヘシキリハセベは自動的に切り替わり、聖剣は煌めきを放ちその姿を変化させる。


 直剣は一瞬にして刀へ。


 金色でキラキラと菱形が煌めく鞘、柄。


『聖刀エクス』

・攻撃力+8500

・固有アビリティ【煌めき】


 その赤い瞳は金色に染まり、キラキラと煌めく。


レット、グランお前たちは最高だな! さあ、来い!!」


 前屈みになり両足へ力を込め、左手で鞘を抑え右手で握った柄を引き抜く。


『抜刀"煌"』


 十メートル離れた位置に佇む龍騎士の元へ一瞬にして移動する。


 通った道には目の高さに残る二本の金色に煌めくライン。


「はああっ!」


 斬りかかろうと振り上げた刀は縦に構えられた直剣と交わりキラキラと火花が散りゆく。


「いいのか?」


「ああ」


「ぐっ!?」


 振り抜いた白光した刃はランスロットを弾き飛ばす。


「何故ゼロにならない!?」


「俺たちの煌めきはランスロットあんたの輝きを超える」


「それは、どういう……」


 刃を収め、もう一度地を蹴り、追撃を加えんとする。


『抜刀"煌"』


「来ることが分かっていれば!」


 ランスロットの右側を駆け抜ける瞬間、 刀を素早く引き抜きながら耳元で囁く。


「どうかな」


「速っ!?」


 剣を構え守ろうとするが間に合わない。


 その力は剣ごと吹き飛ばし、頭上にあるバー、残り体力ゲージを一割ほど減少させた。


「ぐ、くそっ!」


 龍騎士は駆け抜けていった俺へ視線を向ける。が。


「なあ、いいのか?」


「っ!?」


 その男は急いで前方へ振り返るが、既に目の前では剣を振り下ろす光騎士。


『スパークルカリバー』


 刃は完全に対象を捉え、纏っていた煌めきはさらに光を放つ。


「があっ!?」


 直撃だ。体力ゲージは黄から赤へ変わり、残り体力は全体の一割。


 後一撃入ればこの戦いが終わる。


 ランスロットは今までで最大のスキルを放ってくるだろう。


 此方も全力でぶつかるのみ。


「ハァ、ハァ、やるな……だが!」


 右方向にステップで距離を取り、剣を天に向け素早く振り上げたランスロット、頭上には無数の斬撃が飛び、停止する。


零の輝斬ぜろのかがやき


 もちろん、その一つ一つが零の輝きを放つ。


 ゼロ状態になるか、目を瞑ったまま無数の斬撃が襲ってくるというチートスキルか。


 聖刀がなければ終わっていただろうな。


「グラン! 最大火力を叩き込むぞ!」


「了解だね!」


『固有アビリティ【煌めき】』

『固有アビリティ【煌めき】』


 【煌めき】、通常時でも光を放つ聖剣はさらに眩く、鋭く。


 煌めく刃は武器、防具、プレイヤーが受ける他の影響を全てする。


 戦闘中一度のみ使用可能で使用後は全ての煌めきを失うので、使い所は見極めなければいけない。


「食らうがいい、俺の最大、『零の輝斬』を!」


 頭上で停止していた輝きを放つ無数の斬撃は狙いを定め動き出す。


極抜刀きわみばっとう"煌"』

『エクスカリバー"煌"』


 光騎士が剣を振り下ろすと右上から後を追うように煌めきの爆発が連鎖する。


 その様はまるで流れ星。


 『零の輝斬』を全て破壊していく。


「なんだと、一振りで!?」


 抜刀の上位スキル『極抜刀』、聖刀この武器であれば。


 鞘を抑え、右手で柄を握り腰を落とし前屈みに、地面を蹴った瞬間、立っていたのは龍騎士の背後。


 『極抜刀』は


「ランスロット、俺たちは強くなりましたか」


「……ああ、騎士の先輩としてこれ以上の幸せはないよ」


 肩から腰にかけて傷が付き、ランスロットは膝から崩れ落ちた。


 赤だった体力ゲージは減少、やがてゼロになり、超越騎士の体は少しずつ電子の波に消えていく。


「お前ら、迷惑かけたな」


 そう言い残し完全に姿を消した。


 俺たちに対して、円卓の騎士に対して、真意は分からないが、『"超越騎士"ランスロット零』との戦いは終わった。



〇 お疲れ様!

〇 熱かった

〇 俺も極抜刀したいぜ

〇 かっこいいなやっぱ

〇 ナイス!

〇 ないす~

〇 さよなら、ランスロットTT

〇 ラン様……

〇 観てても疲れた

〇 うおおおおお

〇 この後何が起こるんだ

〇 長かった戦いもこれで……

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