【#45】その後
『称号【円卓の騎士】を獲得しました』
『称号【Sランク冒険者】を獲得しました』
『"超越騎士"ランスロット零』討伐後の視界左下、背景が透ける黒いボードに白い文字で連なるログ。
一見普段と変わらない見慣れたものだが、今回は違う。
イレギュラーな事態だったが、俺たちは確かに"超越種"を倒した。では、一体何故"あれ"が表示されていないのか。
"あれ"というのは、英雄の名誉。
……だが、ログが表示されていない以上考えても仕方がない。
「レット! 終わったね!」
消えたランスロットの前で立ち尽くしていた俺に背後から手を振り駆け寄ってくる光の騎士グラン。
「ああ、お疲れ」
体ごと振り返り、掲げられた手へと自らの右手を伸ばし快音を響かせる。
何はともあれ、長き戦いは終わった。
今は、ここ西洋の都キャメロットで出会った相棒と共に喜びを噛みしめるとしよう。
…………超越種の上位存在、まさかな。
◆
「レット、グランよ。 此度は誠に素晴らしい活躍であった。 ランスロットを止めてくれてありがとう」
石造りに囲まれた正方形の部屋、その中心を占領する巨大ラウンドテーブル、それを囲むように配置された十三脚ある背もたれが座高より高い椅子に座り、当たり前のように話すアーサー王、ランスロットとの戦いに夢中で完全に忘れていたとは言えないが、戦闘後近付くと他の騎士も同様、『蘇生可能時間:無限』の状態で瀕死になっていた。
「うんうん、流石だね、僕は!」
「二人はすぐ旅に出るのだったな」
「ああ、だが、本当に聖剣は持って行ってもいいんだな?」
「もちろんだとも! 他の地でも【円卓の騎士】、【Sランク冒険者】として頑張ってくれ」
「短い間だったが、世話になったな」
「さらばだね、騎士たちよ!」
ちなみに、吹き飛ばされた円卓とその部屋は次来た時には元通りとなっていた。
どういう原理か、まあ、「ゲームだからな」としか言えないが。
正確には、今回のクエスト中に登場しなかった魔術師マーリンという人物が修復したのだそうだ。
一目会いたいとも思ったが、既に目指すは次のマップだ。
手に持つ小型転移石を用い玄関部分へワープし、つい先ほど通り抜けたためか開放状態の門を潜り城を後にする。
「レットさん、グランさん、行ってらっしゃいませ」
「行ってきます」
「行ってくるよ!」
正面側に控えていた門番に挨拶を済ませ、他称"戦闘狂"は次なる場所へと戦いを求めに行く。
「相棒よ、またね!」
「ああ、またな!」
【#4】次はどんな冒険が待っているのだろうか
39843人が視聴中
『レットチャンネル』 18.7万
◆
「ふあああ、ふうう」
白い天井、頭を支える天井よりも白いクッション、胴体を沈ませる白い床、首から足元まで覆い被さる青い布、木造りの土台の上でゆっくりと体を起こすと、視界に入るは白い壁。そこには高品質な黒い衣服が壁から生える突起物にぶら下がっている。
右を向くと、真っ白な横に伸びたデスク、そこ置かれている異世界への扉。それは、誰かを待つようにこちらを見ている。
薄暗い空間だが、外から差し込む光によって視界は確保されていた。
光、昨日激闘を繰り広げた者を想像してしまうが、あれほどの眩さはない。
木造りの土台から足を下ろすと、木の地面が優しく受け止めてくれる。
腰を上げ立ち上がり、俺は六帖ほどあるそんな部屋を後にした。
朝の支度を済ませ戻ってくると、異世界への扉『VRヘッドセット』を装着し、再びその扉を開ける。
「dive go」
最初に映し出された画面には、今まで巡ってきたマップの風景たちが移り変わり、過去を遡らせ懐かしませてくれる。
もちろん、キャメロットで足を運んだ風景を人目線のアングルや空からのアングルなんかもな。
ログインすると、タイトル画面に吸い込まれるような演出が入り、最後にログアウトを行った場所へ。
視界の左下には、『ログインしました』と表示され、その上に『ノータがログインしました』や『セブンがログインしました』と、現在プレイしているフレンドのログイン履歴が残る。
『レットがログインしました』
『グランがログインしました』
おっと、相棒も来たか。グランとはキャメロットの地で別れ、俺は西方面、グランは東方面へと向かった。
些細なことだが、今頃自分より先にログインしていた男を見て悔しがっていそうだ。
そして、既に次のマップ、その手前でログアウトをしていた。
一歩踏み込めば、新マップだ。
その前に配信を始めようか。
【#5】次なる強敵を求めて
31890人が視聴中
『レットチャンネル』 21.6万
〇 おはようございます
〇 おはよ!
〇 レットさんおは
〇 今日も目が離せない
〇 おはよー
〇 ついさっきまで興奮していたばっかだが?
〇 配信観ながら進めよう
〇 刀使い始めました
〇 おは
〇 部屋で極抜刀しました
〇 レットさんんんん!
〇 今日も楽しみです
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