「unknown」と呼ばれ伝説になった俺は、新作に配信機能が追加されたので配信を開始してみました 〜VRMMO底辺配信者の成り上がり〜
トス
第一章
【#1】初配信
VRMMOグランデヘイミナムオンライン、通称『GHO』。
全世界400万本売れた大人気オープンワールドゲーム。
『異世界で大いなる旅を』と銘打って発売されたこのゲームは端から端まで綿密に作られていてまるで異世界に来たと錯覚させるほどのものだ。
とても高い難易度だが、その高い難易度がクセになると話題になった。
この物語の主人公も一人のGHOプレイヤー。
しかし、他プレイヤーとは違う点が一つある。
それは、名前を非公開にしてプレイしていたことだ。
ここでは『名無し』と呼ぼう。
名無しはとても優れたプレイヤー。
しかし、トッププレイヤー達の栄光には及ばず、彼を知るプレイヤーはいない。
名無しということも起因しているのかもしれない。
だが、ある日一夜にして彼はトッププレイヤーの仲間入りを果たすことになる。
『"天翔ける龍"ソラノオホシサマ』が討伐された。
ソラノオホシサマは見た者を感動させるような神々しさを持つとても大きな蛇型の白い龍で、存在が確認されてからそれまで一度も討伐したプレイヤーがいないモンスターだった。
当時は、空中での滞在時間が長いため遠距離武器複数人での挑戦が主流。
しかし、強力な風を纏っていて中途半端な攻撃は全て弾かれてしまう。
日々数多くのプレイヤーが挑戦するも、討伐には及ばなかった。
現状を打破したのは、『名無し』。
彼はソロでソラノオホシサマに挑み、その結果に全プレイヤーは騒然とした。
誰も倒せなかったモンスターが、刀一本でどのようにして討伐されたのだ。
頭の先からつま先まで黒い装備に身を包まれた謎のプレイヤー。
正体不明だった
『
そして、彼はGHOにおいて伝説の存在となった。
◇◇◇
眠気が襲う午後の授業、先生が五十分間何を言っていたかなど覚えていない。
窓の外を眺めていたら授業の時間は過ぎていく。
そんないつもの日常。
だが、今日は違う。
ぼーっとしているかのように見えるかもしれないが、今はとても早く帰りたい。
何故かって?
今日は待ちに待ったGHOの新作『GHO2』の発売日なのだ。
「キーンコーンカーンコーン」
「今日の授業はここまでだ」
「起立、礼」
授業が終わり帰るだけの放課後、今日はそんな放課後も愛おしく感じる。
待ちに待ったこの時がついに来た。
「
俺を呼び止めたのは、小学生からの幼馴染『
黒髪ロングで端正な顔立ち。周りからはよく可愛いと言われている。
一言で表すなら『清楚系美少女』ってやつだ。
話しかけてくれることに感謝はしているが、周りの視線が痛い。
高校生にもなると、流石に気になってしまう。
「あんた、またゲーム?」
「いいだろ、今日は急いでるんだ。 では、さらばだ!」
「ちょっと!!」
すまないな。
俺は教室から足早で去っていった。
今のうちに色々考えておくか。
やはり最初は、前作でも使っていた刀がいいな。
モーションが気になる。
俺は帰路に就き、初期設定を考えた。
◇◇◇
自宅に到着し、母親に挨拶を済ませ自室へ急ぐ。
事前ダウンロードは済ませておいた。
ダウンロード版というものはとても便利だ。
早くやりたい、制服のままでいいか。
VRヘッドセットを装着して、すぐさま起動する。
「dive go」
これは、GHOに入る時の掛け声みたいなものだ。
俺はついにGHO2の世界へ突入する。
タイトル画面には街や森、湖が映し出されている。
始まる前だというのに、既にゲーム世界へと足を踏み入れてるみたいだ。
スタートしてまずは、キャラメイク。
前作は少年アバターだったが、今作は少し成長させるか。
黒髪に赤目、顔と体は二十歳くらいの青年をイメージ。
凛々しい顔立ちに体系は細マッチョ。
プレイヤーネームは、本名の
これでいこう。
GHOには考えうるだいたいの武器は揃っているが、最初の武器はもちろん刀。
防具はロングコートにするか。
初期設定が終わる。
ついに始まるんだ。
中世ヨーロッパのような街並みが神視点で映し出され、目線の先に吸い込まれるような演出が入った後、つま先から順番に体が構築された俺は最初の街『ルーポ』へと降り立った。
一人歩く者や座り込んで二人で話す者、周りには既に結構なプレイヤーがいるな。
まずはメニューを開く。
『アイテム』
『装備』
『スキル』
『ステータス』
『クエスト』
『コミュニティ』
『マップ』
『配信機能』
『オプション』
『ログアウト』
一通り確認して、まず最初に配信機能というものを起動する。
これは今作から追加された機能で、どうしてもやってみたかった。
大手配信サイトと連携し、そのプレイヤーの一人称視点、ドローンカメラ視点を配信することが出来る。
連携してと……タイトルは『【#1】初配信』なんの捻りもないがこれでいいだろう。
よし、『レットチャンネル』
ステータスも確認しておくか。
『ステータスオープン』
名前……『レット』
武器……『支給刀』
防具……『支給コート』
体力……『500』
攻撃力……『30』
防御力……『100』
まずは、
◇◇◇
序盤の静かな森、聞こえてくるのは他プレイヤーの声が多いだろうか。
早速モンスターを狩り始める。
縦に二回ほど斬りつけると、『ウルフ Lv.1』はその場に倒れ消滅する。
ウルフは序盤に出てくる灰色の狼型モンスターだ。
十体ほど狩り、モーション確認を終えた。
違う部分もあったが、あまり変わってはいない。
これであればすぐにボスモンスターを狩れそうだ。
もう少し進んでみるか。
草木を掻き分けていくと、開けたところに出る。
「グルルル」
あれは、ボスモンスターだ。
グルグルと喉を鳴らす大きめの黒い狼。
『
前作にもいたが、まさかこんな森の浅いところにいるとは。
あちらも気づいたのだろうか、黒長狼は地面を蹴り、口を大きく開けながら一目散に襲い掛かってきた。
飛び込んでくるところを、右に体を移動させ、横腹の辺りを思い切り斬る。
すると、斬った箇所には電子の傷がつく。
黒長狼の頭上にある緑のゲージ、『体力ゲージ』が減少する。
モーションは変わらないな。
攻撃力は高そうだが、分かっていれば簡単だ。
右、左と襲い掛かる爪を左、右と体を揺らし何度も避け、避けるたびに一太刀浴びせていく。
体力ゲージは残り二割といったところか。
そろそろだな。
俺は刀を鞘に納め、姿勢を低くしスキルの準備をする。
黒長狼は上から覆いかぶさるように両手の爪で切り裂いてきた。
タイミングを見極め、近づいてきたところでスキルを放つ。
『抜刀』
鞘から刀を一瞬にして抜き、一直線に移動し目にもとまらぬ速さで鼻先から尻尾の先まで斬る。
それはまるで横向きに稲妻が走ったようだ。
凄まじい攻撃により体力ゲージがなくなった黒き狼はその場に倒れ消滅した。
いい運動になったな。
『黒長狼の素材を入手しました』
モンスターを倒し、視界の左側に報酬が映し出される。
これであれば武器が作れそうだ。
一度街に戻ろう。
◇◇◇
現在、鍛冶屋を目指している。
「おい! 空見ろ!!」
「綺麗!」
ん? 何だか周りのプレイヤーが騒がしくなってきたな。
どうしたんだ。
空がどうとか……。
俺も空を見上げる。
なっ⁉︎
まだ明るいよな? こんなにもくっきりと見えるなんて……。
イベントクエスト中だとゲーム全体に影響を及ぼすものもあるが……いや、俺はこの演出を知っている。
昼の空でもはっきりと見える天の川、多分この後……。
「天の川に沿って何か動いているぞ!」
やはり。
シャラランと鈴のような音を鳴らし、
カロロロという鳴き声とともに姿を見せ、白く大きな蛇型の龍が天の川を駆けていく。
まさか今作にもいたとはな。
『"天翔ける龍"ソラノオホシサマ Lv.?』
その龍は数分間だったが見ていた者を釘付けにし、その後、空の彼方へと消えていった。
〇 初見です
〇 こんにちは
〇 こんにちは
〇 やば
〇 綺麗
〇 かっこよ
〇 あのモンスターは一体
〇 何かのイベント?
ん? いくつかコメントをくれている。
知らないのも無理はない。
ソラノオホシサマはGHOを相当やり込まないと出会うことすら叶わない最強のボスモンスターだ。
また戦いたい。
俺は想像以上の興奮を覚えていた。
【#1】初配信
10人が視聴中
『レットチャンネル』 1
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。