【#16】新たなる英雄
『"封印されし災鳥"ディザスターフェニクス』の体力ゲージは今にも五割を切ろうとしていた。
その場にいる誰もがこのまま押し切れるだろうと思っているだろう。
いけいけムードの中、ついに残り体力五割を切った。
「この調子で後五割だ」という言葉に賛同する声が様々な方位から聞こえてくる。
プレイヤー達の結束がより深まる――その瞬間だった。
耳を覆わないとおかしくなりそうな奇声とも取れる嘆きを叫んだ厄災は空中で大きく両翼を広げ今まで隠していたかのように真なる力を解放した。
翼は二枚の下からさらに二枚生え、合わせた四枚の翼を羽ばたかせる。
様子が変化したのは四枚の翼となった鳥だけではなかった。
悪い知らせとも捉えられようか。
先ほどまで生き生きとしていたプレイヤーの殆どは両手両膝を地面につき、俯いている。
どうしたのだとすぐ様そのプレイヤーに駆け寄り、状況を尋ねる。
「どうしたんだ?」
「あ、ああ。 あんたは立っていられるのか。
「何と出ているんだ?」
「『称号を持たないプレイヤーは厄災の覇気により動けなくなります』って』
「そうだったのか、教えてくれてありがとう」
激動すぎて忘れてしまっていたが、現在は二日目だ。
最低でも暴食龍並みを倒さなければいけないと仮定すると、称号を持つプレイヤーというのはかなり少ないだろう。
なるほど、視界に入るだけでも数名は覇気の影響を受けていない。
今この場に立つ者全てが称号持ちというわけか。
そして、前作でも見かけた奴らがちらほらいるな。
『【パーティーログ】現在のパーティーメンバーはこちらです』
『レット、セブン、ノータ、グラン、エイム、マサカズ、ユウタ、サンダー 以上八名』
ほとんど
これではまるで一角ではなく――。
だが、このメンバーで本当に組んでしまってもいいのか⁇
お相手さんも空高くに向かってやってやったと言わんばかりに叫んでいる、残りを殲滅するためのやる気は十分みたいだ。
『"解放されし厄鳥"ディザスターフェニクス』
悪いが勝たせてもらうぞ。
先に動いたのは不死鳥、炎の玉を八つ作り出しその全てに魂が宿っていようかのに鳥の形に変化したそれはそれぞれのプレイヤーを襲う。
動くと追って来ているように見える。
ホーミング性能付きか。
俺の予測通りであればこのまま火の鳥を無視して攻撃に移れるはずだ。
同じことを考えていたのかボロボロの村人服を着ている中年で黒髪の男は大剣を腰の右横に構え、一直線に空を羽ばたいている者に向かって行く。
圧倒的に飛距離が足りないように見えるが問題ない。
近付くことによって接近が早まった火の鳥は襲い掛かろうとするが、俺自身も正確な位置は分からない遠距離から静かに撃ち落とされる。
これでもう火の鳥が命中することはないだろう。
この精密射撃は――そして、中年の男は空中に咲く花を足場にしていき厄災に到達する。
それに呼応するかのように、金鎧の男も同じように動き出していた。
両手で思いきり大剣を振るうと、二人掛かりでやっと崩せた巨大生物は一人の村人風の男によって態勢が左下へと傾いていく。
大きな隙が出来るのを見計らうかのように、赤い斧を振り回した男は此方へ視線を向ける。
『形状変化(暴食刀)』
その瞬間、視界は桜色になり、花弁が開くと目の前には情けない声を上げる厄災。
『月喰らい』
俺の隣にもう一人、同タイミングで花弁の中から姿を見せた金鎧よりもさらに輝く鎧を着る眩しい金髪の男。
『エクスカリバー』
赤い斬撃と鎧同様眩いその斬撃は無慈悲にも下翼を狙い、一太刀ずつ浴びたそれは一枚、二枚と消失していく。
緑のゲージは黄色へと変化し、残り一本と半分といったところだ。
第二形態は殆どのプレイヤーを再起不能にするためか体力は低めに設定されている。
さらに燃え盛った鳥は負けじと二枚になった翼で飛び立ち、広範囲に熱波を放ってきた。
しかし、それは俺たちがいる前方だけだ。
後ろはガラ空きじゃないか。
『形状変化』
『牡丹』
甚平の少女がそう呟くと、厄災には似つかわしくない赤い花がその後方に咲き乱れる。
『チェンジ』
パチンッと指を一度鳴らすと、パーティーメンバー全員が花との位置を一瞬にして入れ替えた。
これはまったく……凄すぎるとしか言いようがない。
厄鳥の背後を取った称号を持つ者たちは各々の全力をこの瞬間に注ぎ込む。
皆が叫ぶ。
『形状変化』
『月喰らい』
『満月』
『竹林槍』
『エクスカリバー・改』
『最大出力・大剣砲』
『マシンガンスナイプ』
『ゴアディマンド』
『サンダーボルト』
計八名の最大火力を背に受けた厄災はまるで次の厄災を呼ぶかのような奇声を上げ、頭上にある体力バーは全て消滅した。
紫色の悍ましいオーラは消え去った不死鳥は盛大に複数の電子の塊と化し、そのまま世界へと一部へと飲み込まれていった。
『"封印されし/解放されし厄鳥"ディザスターフェニクスの素材を入手しました』
『称号【砂漠の英雄】を獲得しました』
『【全体ログ】災厄は勇敢なるプレイヤー達の活躍で討伐されました』
〇 どわあああああ
〇 倒したあああ!
〇 お疲れ様です‼︎
〇 感動した!
〇 やばすぎるって
〇 はあ、控えめに言って最高
〇 行けばよかったあああ
〇 お疲れ!
〇 マジかっこよかった
〇 全員上手すぎ
〇 こんなクエストあるなら言ってくれよおおお
〇 何か連携やばくなかった⁇
〇 これがトップか
〇 早く称号付けます
〇 最高だった! ありがとう‼︎
今回のクエストは長かったな。
既に懐かしさすら感じる。
最初から手伝ってくれたノータとセブン、厄災を倒すために駆けつけてくれたプレイヤー達。
そして、それを最後まで見守ってくれた視聴者に感謝しかない。
余韻に浸るのもいいが、実はまだ二日目なんだ。
早く
明日からは新たなモンスターが待っているのだろうか。
「レット、お疲れ」
大きな戦いを労いに来てくれたのは激闘を共に繰り広げた仲間たち。
「ノータ、セブン、ありがとう。 助かった」
「当たり前」
「お前、前よりも丸くなったか?」
右手でVサインを作る優しい少女と過去をつついてくる意地悪な男。
このまま進めていけばまた会うこともあるだろう。
仲間とはいいものだな。
まだ話したい奴は何人かいるし、その人物たちも何か言いたげな表情をしているが、今日は流石に疲れてしまったのでフレンドだけ送り休むことにする。
「お疲れ様でした」
【#2】登録者2万人ありがとう
9624人が視聴中
『レットチャンネル』 4万
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