【#34】冒険者

「いやいや、うちの剣がすまないね!」


「ああ、大丈夫だ」


「あれえ? もしかして、今話題のアンレットくんかい?」


 金髪のフェザーマッシュで、陽のオーラを感じる爽やかイケメン。

 首から足先まで白く光り輝いている細い鎧を纏い、左腰にロングソード用の鞘を携える。

 

 そうか、今の俺はアンノウンとしても、レットとしても認識されているのか。


「人違いじゃないか」


「あー! そういう感じでくるんだ! 僕、悲しいよ!」


「はあ、そっちは相変わらずだな、グラン」


「うんうん! アンレットくんもアンレットくんのままで嬉しいね!」


〇 グラン!?

〇 グラン様だ!

〇 ええ!? また有名人!?

〇 ノータ、セブン、サタン、エンラ、グラン!?

〇 かっこいい!

〇 そうか、前作で交流あったよな!

〇 アン様とグラン様の図

〇 これは捗る!

〇 今日も輝いている

〇 もう驚かないよ!? 無理だけど!

〇 ただの草原にいるトッププレイヤー二人

〇 ありがとうございます


 グラン、"金色の究極体"ゼロを討伐した五英雄の一人で、GHO前作の知り合いだ。


草原ここにいるということは、このマップに来たばかりなのか?」


「あ! それ聞いちゃう? 気になっちゃうよね!」


「そうか」


 何をしていたのか気にはなるが、取り敢えずグランに付き合うのはここまででいいか、早く街に行きたいしな。


 そうして、止めていた歩みを再び始めようとした。


「ちょ、ちょっと!? 冗談だって! 教えるよ! もう、まったく、アンレットくんはいっつもそうだよね!」




 教えてくれた内容はこうだ。

 一足先に着いていたグランは、クエスト受付に向かったが、どうやら他の街とは勝手が異なるらしい。


 冒険者ギルドと呼ばれるそこは、自ら板に貼られている紙を選んで依頼を受ける。


 そして、選択できる依頼は冒険者ランクというE~Sまであるランクによって変わり、EならEランクの依頼、DならEとDランクの依頼を受けられる。


 一律Eランクで始まるので、グランのような実力者でも最初からAランクなんてことはないが、飛び級することはあるらしい。


 草原でモンスターを討伐していたのは、依頼を受けてランクを上げようとしていたからだな。


 このマップには独自の強さ指標がある。

 俺も進めるのであれば、まずやるべきは冒険者ということか。


「助かった」


「やけに素直だね? ちょっと気持ち悪いかもしれないよ」


 さて、そうと決まれば目指すは冒険者ギルドだ。


「ねえ! 無視しないで!」



 ◆



 規模は都と呼ぶべきだろうが、分かりやすく街と呼ぶことにしよう。


 入口に着き、そのまま街に入る、とはいかず、門番の許可を得らねばならない。


 冒険者に登録することでもらえる冒険者カードがあれば、スムーズに出入りできるらしいが、初めての俺にはゴールドを支払い、身分を証明するしかない。


 今回は、グランが一緒なので、身分証明の部分は省かれた。


「通っていいぞ」


 背丈の何倍もある大きな門を潜り抜けると、そこに広がっていたのは外観から想像していたような中世ヨーロッパの街並み。


 整備されている三又に伸びた大路おおじ、その又を埋めるように建物が立ち並んでいる。


 家や店が入り混じったそこは、大勢の人で賑わいを見せていた。


 そして、街の奥にはその全てを見渡すように建てられた立派なお城。


 マップの名前はこう表示されていた。


『西洋の都キャメロット』


 キャメロットと言えば、アーサー王物語を連想させるが、この街とは何か関係があるのだろうか。


 考えるだけで探索がしたくなってしまうが、まずは、冒険者ギルドに行こう。


「グラン、道案内を頼む」


「おっけ!」




 三又の道の真ん中を進んでいき突き当ると、そこには、一際目立つ豪華な木造りの建物。


 隣の建物の何倍もの大きさで、西部劇であるような木の板が二枚並ぶ入口、その上の看板には英語でギルドと書かれている。



 板を押し、中へ入ると、既に冒険者が座る木造りの長机とベンチ、丸机に丸椅子なんかもある。

 視線の先には、クエスト受付があり、その左側に建てられた板には無数の紙が貼られている。



「ようこそ、冒険者ギルドへ」


「冒険者登録をしたいのだが」


 

 紙にプレイヤーネームやアバター年齢などを記入し、受付のお姉さんに渡す。


 ここで記入することは適当でもいいんだろうが、まあ、せっかくだしな。


「はい、問題ないです。 貴方はEランク冒険者『レット』として登録されました」


「ありがとう」


 これでクエストを受けられる、当面の目標は冒険者ランクを上げることだ。


「いやあ! 僕に後輩ができちゃったねえ!」


 お、登録したことによって、プレイヤーネームの頭上に冒険者ランクが表示されるようになったらしい。


 そして、冒険者の先輩となったことで、上機嫌に腕を組む男の頭上にはこう表示されていた。


『"Eランク冒険者"グラン』


 ……一緒じゃねえか。

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