【#35】初依頼

「ゴブリンって、緑色のやつだよね!」


「ああ、確かそのはずだ」


 俺とグランは現在、Eランク依頼『ゴブリン討伐』を受け、ライドモンスターに乗り、ゴブリンが生息する森の中を駆けている。


「その馬はガチャ産なのか?」


「そうだね! よくぞ聞いてくれた! 純白の馬はこの僕にピッタリだと思ってね!」


 白い馬か、サタンであればなんと名付けるのだろうか。


「あ! 今僕のこと、白馬の王子様だと思ったよね! そうさ! その通りなのさ!」


 しかし、森を進めどゴブリンが見当たらないな。


 E最低ランクの依頼なので、そんな難しいものではないと思うんだが。


「そういえば、サタンに『キュウビノキツネ』渡してたよね! 羨ましいよ! 金色の狐なんて、まさに僕とお似合いだったろうに!」


「欲しかったのか?」


「いや! サタンに渡したなら文句はないね! 彼のライドモンスターへの愛情は並大抵じゃないからね!」


 ゴブリンは疎か、他のモンスターすらまばらな気がする。


 一体、この森で何が起こっているというんだ。



「レット! あれ、緑色だしゴブリンじゃないか!」


 輝く鎧の男が指差す先には四メートルはあるであろう緑色の巨体が座っていた。

 黄色の目をしていて、牙が上向きに生えている。


「そうだ……な?」


 俺の認識が間違っているのか、このマップがおかしいのか、それは、明らかに想像していたゴブリンとは似ても似つかない。


『ゴブリンジェネラル Lv.330』


 足元には、小さな緑色のモンスターが何体も転がっていて、連鎖するように光の粒となって消滅していく。

 喰われたのだろう、あれが、本来のゴブリンか。


 他のモンスターが見えなかった原因はゴブリンジェネラルこいつだったというわけだ。


 まあ、ゴブリンはゴブリンだ。

 依頼を達成させるには討伐するしかないだろう。


「グラン、これから戦闘だ。 ステータスを確認しておいてもいいか?」


「もちろんだね」


 グランに数秒視線を向けると現れるステータス画面、やはり強いな。


名前……『グラン』


武器……『輝剣ライトカリバー』

防具……『輝鎧ライトアーマー』


体力……『6000』


攻撃力……『5900』

防御力……『4300』


称号……【モットオレヲミテ】


 セブンと防具が似ているが、グランの場合は輝けば輝くほど目立つと思って装備しているんだろうな。


 セブンが生粋のタンクだとすれば、グランは、回避型のタンクだ。

 避けながら、自分も攻撃に加わる。


 一見、回避型の方が良く見えるが、一概にどちらが良いとは言えなかったりもする。

 ダメージを受ければ受けるほど火力を上げるスキルがあったりと、戦い方は異なるからな。


 ゴブリンジェネラルあちらも俺達に気付いたようだ。

 地面に横たわっていた大剣を右手に持ち立ち上がる。


「特別にアタッカーを譲るよ! 前は僕に任せて!」


「了解」


 ゴブリンは雄叫びを上げ、俺はその隙に視界から外れるように左へ動き、正面はグランが担当する。


 叫び終わると、視界には金鎧の男しかいない。


 何故だと考える素振りを見せようとするが、どうしても目の前の相手が気になってしまう。


 恐らく、グランが持つ防具と称号が作用しているのだろう。

 

 結局、思考を放棄したゴブリンは大剣を片手で振り上げながら突進を仕掛けてきた。


 大剣が届く距離まで詰め寄ると、それを力一杯に振り下ろし、グランは剣を横に構えて受け止める。


「ぐっ、重いね!」


 金属同士が激突し、火花を散らす。

 ゴブリンはすぐに力で押せると確信したのか、ニヤリと笑うが、グランはその油断を見逃さない。


 さらに力が増した瞬間、剣を引き寄せ受け流す。


 強力な一撃は仇となり、大剣は地面を抉る。


「今だよ!」


「ああ!」


 ゴブリンの体勢が前に崩れ、俺は左に構えた刀を振り払い、狙いやすくなったうなじを斬り裂く。


「グオオオ⁉︎」


 そして、グランは受け流した勢いのまま、首元を斬り裂いた。


 首が飛んでいく、ということはないが、体力ゲージは緑から黄へ変わり、残り体力は三割以下だ。


 そこで攻撃は終わらない、振り切った刀、剣を即座に持ち替え、次は右から振り払う。


 二人の武器が共鳴するかのようにキランッと光り、同じ箇所をもう一度斬り裂く。


 黄は赤へ、そのままゲージはなくなり、ゴブリンジェネラルは声を上げぬまま、両手を地面につき消滅した。


『ゴブリンジェネラルの素材を入手しました』


 これで依頼を達成できた、はずだ。


「レット、やったね!」


「お疲れ」


 俺は武器を鞘に収め、手を挙げる。


 そこに駆け寄ってきたグランは、右手を前に振り、快音を響かせた。

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