第三章

【#33】新天地

 翌日、昨日は濃い一日だったが、随分と夜更かしをしてしまった。


 起きたら昼になっていたが、今日もやっていこう。


 サタン、エンラとはノブナガで別れ、各々次のマップへと向かう。


 GHOこのゲームを続けていれば、また何処かで会うこともあるだろう。


 四日目の配信タイトルはどうしようか。


 ……うん、これでいこう。


【#4】次はどんな冒険が待っているのだろうか

 24368人が視聴中

『レットチャンネル』 13.6万


〇 こんにちは

〇 こんにちはー

〇 こんにちは!

〇 配信初見です

〇 昨日は凄かった

〇 今日も楽しみ!

〇 配信観てプレイして忙しい

〇 面白すぎて乍ら見ながらみできん

〇 きたあああああ

〇 こんにちは

〇 待ってましたあああああ!

〇 ポテチとコーラ準備完了


「こんにちは」


 そして、昨日から変化したことが大きく二つ。


 一つは、装備と称号が変わった。


『ステータスオープン』


名前……『レット』


武器……『ヘシキリハセベ』

防具……『サムライコート(階級:武将)』


体力……『4100』


攻撃力……『6400』

防御力……『3200』


称号……【妖術操作】

切り替え可能:【龍殺し】【沼の王】【砂漠の英雄】【孤高の英雄】【妖を祓う者】


 新たな装備『ヘシキリハセベ』、『サムライコート(階級:武将)』には、討伐した祠主とぬらりひょんの素材を半分ずつ使った。

 

 『サムライコート(階級:武将)』は黒のロングコートで、襟が立ち、後ろへなびいている。

 裾には、金、赤の燃え上がっているようなラインが交互に入り、ノブナガが着ていた直垂したたれを彷彿とさせる。


 『ヘシキリハセベ』は金色の柄、銀色に艶めく刀身で、それを収める黒い鞘の刀だ。


『サムライコート(階級:武将)』

・防御力+3200

・固有アビリティ【浮遊】

・形状変化


『ヘシキリハセベ』

・攻撃力+6400

・固有アビリティ(使用できません)

・形状変化(使用できません)


 ヘシキリハセベの固有アビリティと形状変化が使用できませんと表示されているが、これはぬらりひょんを討伐した際に出てきた裏クエスト【亡霊】と何か関係がありそうだな。


 【妖術操作】は、ぬらりひょんが使ってきた、妖術を操作できる称号だ。

 称号自体で発生させられる妖術は握力を持たない腕が二本増えるくらいだが、恐らく、装備と合わせればかなりの力を発揮させるだろう。


 二つ目は、イベント告知だ。


 内容は、『絆を試せ! 二人三脚競走』とタイトルで、他プレイヤーと足を縛り二人三脚で障害物競走を行うというものらしい。

 開催日は二日後の夕方から夜にかけてだが、めぼしい報酬が特にないので、現状は参加しない方向で考えている。


 目立った事はこんな感じだろうか。



 さて、早速攻略を進めていくとしますか。


『ライドモンスター召喚』


「アオン」


「今日も宜しくな、疾風狼スピードウルフ


 名残惜しいが、和の町ノブナガに別れを告げ、まばらな自然の中を駆けていく。



 ◆



 一日だけだったが、見慣れていた景色を抜け立ち止まると、眼前には一面に草原が生い茂っていた。


 それは、変わらないはずの空気がまるで美味しいと感じられるほど。


 そよ風が吹き、草原の頭をゆらゆらと靡かせている。


 見渡すと、小さく森や湖なんかも見える。


 そして、眼前の奥には大きな城を構えた都、あれが今回の拠点だろう。


 最初の街ルーポと似ていて、中世ヨーロッパ風の外観をしているが、その規模は遠目でも何倍もあるように見える。


『マップ』


 そう呼び出すと手順がショートカットされ、視界中央に地図が表示された。


 まだ、入り口付近の部分しか明らかになっていないが、マップをスライドさせてもなかなか見えてこない境界線。


 ここは、相当広いマップなのだろう。


 再び疾風狼を走らせ、都を目指す。


〇 綺麗

〇 空気うま!

〇 異世界みたい

〇 ファンタジー世界だ

〇 一面草原は癒されるわ

〇 着いた!

〇 もう面白そう

〇 わくわく、わくわく

〇 他マップ無視してでも行きたい

〇 ひろ!

〇 おいおい、これ一日で終わるのか?

〇 転移もの始まっちゃう?


 異世界か、本で読んだような……確かに言われるとそうかもしれない。


 だが、俺の装備はこのマップの世界観に果たして合っているのだろうか。


 戦国武将が異世界に転移したり、転生することもあるだろうし何とかなるはずだ。



「アオン」


「どうした?」


 疾風狼が見つめていた先には、群れで今にも襲い掛かろうとするモンスターがいた。


『レッドウルフ Lv.70×4』

『キングレッドウルフ Lv.150』


 現実の狼と同じ大きさの赤い狼とその五倍はあるかという真っ赤な狼。


 疾風狼の背から降り、すぐさま右手で柄を握る。


 王はまず、配下を差し向け、様子を伺う。


『抜刀』


 横並びで突進してくるところを、抜いた刀を横に振り払い、四体纏めて一太刀浴びせる。


 レッドウルフの体力ゲージは一撃で消滅し、その場に倒れた狼達は光の粒となって消えた。


 残りは配下を失った王様だ。


「ガルルル」


 牙を鳴らし、地面を蹴り噛み付いてくる。


 刀を縦に構え、飛び込んでくるタイミングを見計らう。


 ……今……だ! ん? 視界の右前方に突如として現れた切先を此方へ向け直進してくる剣。


「――――い! ――――れ!」


 その威力は、このまま動かなければ巻き込まれてしまうほど。


 飛んできた方向から何やら声が聞こえるが、「避けろ」とでも言っているのだろうか。


 狼が飛び込んでくるところでバックステップを入れる。


 すると、偶然なのか剣は狼の左横腹に直撃し、さらに偶然なのか急所を突かれたかのように地面に落下して動かなくなった。


 緑色だったゲージは半分以上減少し、黄色へ、残り体力ゲージは四割ほどといったところだろうか。


 飛んできた直剣の持ち主には悪いが、ダウン状態となったキングレッドウルフの首元を掻っ切り、体力ゲージは消滅した。


『レッドウルフ×4の素材を入手しました』

『キングレットウルフの素材を入手しました』


 そして、遠くから走ってきている人影はやがて、プレイヤーとしてシステムに認識される。


「すまなーい! 大丈夫かい!? つい、剣を思いっきり投げてしまったよ!」


「げっ」


 その|プレイヤーは、どうやら俺がよく知る人物だったらしい。

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