【#6】聞き込み
「アオン」
「ありがとな」
踏み締めた地面は柔らかい感触だが、すぐに硬くなっていく。
次に辿り着く街が必ずここ『サウザ』ということではないが、入り口からでも分かるほど沢山のプレイヤーで賑わっていそうだ。
暴食龍は例外として、ルーポ近辺はチュートリアルと言ってもいいだろう。
ボスモンスターと一戦交えてみたが、モーションが複雑化していてなかなか面白い。
まあ、結局モーションなど関係なく力でねじ伏せる暴食刀が異常すぎたんだがな。
さて、サウザに入っていくとするか。
目的は既に二つ決まっている。
一つ目は暴食刀に引けを取らない防具を作ること。
二つ目はイベントクエスト探し。
ソラノオホシサマとまではいかないが、何か強いボスモンスターに出会ってみたい。
初見の奴だとなお嬉しい。
まずは一つ目の防具。
これは、隠しボスがいいだろう。
暴食龍が出現した時のように、何か特定の行動を起こすのもいいが、あれは稀な事だ。
当てずっぽうだと時間を無駄に費やすかもしれない。
NPCが隠しボスやイベントクエストの情報を握っていることも少なくない。
会話を進めることで、その情報に辿り着ける場合もある。
今回はこれでいこう。
早速聞き込みだ。
まずは商人。
「おお、あんちゃん! 見てってくれよ!」
取り敢えず三回ほど聞こう。
「おお、あんちゃん! 見てってくれよ!」
「おお、あんちゃん! 見てってくれよ!」
違いそうだ。
次は座り込んでいるお婆さん。
「なんじゃ? 何かようかの?」
よし、疑問系がきたぞ。
「すみません、最近何か変わったこととかありませんでしたか?」
「なんじゃ? 何かようかの?」
「なんじゃ? 何かようかの?」
凄く怪しそうだったが違うか。
片っ端から聞いていくしかない。
ムキムキのおじさんがいる、話しかけてみよう。
「なんだあ、俺様に何か用か?」
「最近聞いた情報とかあるか?」
「おおう! あるぜ!」
おっ、これはきたかもしれない。
「ちなみにそれは何だ?」
「ああ? 情報が欲しいなら金を寄越しな?」
そういうタイプか。しかし、本当の情報を握ってるんだとしたら渡すしかない。
「いくらだ?」
「そうだなあ、10000ゴールドだ」
ほぼ全財産じゃねーか。
仕方ない、10000で済むのなら……。
「分かった」
『-10000』
「これで教えてくれるんだよな?」
「ああ? 情報が欲しいなら金を寄越しな?」
うん、今すぐ斬ってやろうか⁇
落ち着け……NPCキルはペナルティの対象だ。
我慢しろ俺。
もしかしたらがあるかもしれないが、もう払えるお金はない。
気を取り直して次だ。
受付のお姉さん。
あまり期待はしていないが、お金を取られることはないだろう。
「すみません」
「クエスト受付へようこそ! 何を受注なさいますか?」
もう一度。
「クエスト受付へようこそ! 何を受注なさいますか?」
ぐっ、まだだ。
「……うーん、最近困ってるんですよね」
これは⁉︎
「どうしたんだ?」
「商人が使用する道に突然沼地が現れて困っているんです」
〇 え⁉︎ マジか⁉︎
〇 今すぐサウザ向かうわ
〇 きたあああああ
〇 レットさん凄すぎ‼︎
〇 参考になります
〇 初見です
〇 暴食龍と同日だよ⁉︎
〇 うおおおおお
〇 受付のお姉さんさあああああん
お姉さんから聞いた話によると、ある日商人が荷物を運ぶ道に突如沼地が現れた。
回り道をしてもいいが、道を逸れると危険なため、一刻も早く沼地が出現した原因調査に出向いて欲しいとのことだ。
砂漠を一瞬にして沼地に変える力……間違いない、隠しボスだろう。
『ライドモンスター召喚』
「アオオオン」
「頼む」
再び疾走狼に乗り、沼地へと向かう。
◇◇◇
街から離れれば離れるほど視界が砂漠色に染まっていく。
現在、商人用の道を走っているが、少しでも逸れると狼ではスピードが著しく落ちそうだ。
砂漠で狩りを続けるなら、専用のライドモンスターが欲しいかもしれない。
「止まってくれ」
本当にあった。
そこには途切れるように真っ茶色の沼地が道を塞ぐ。
広さは縦横ともに小学校にあるプール二つ分、50mほどだろうか。
狼から降りた俺は沼地に近づく。
近くで見ると広いな……少しだけ足をつけて、すぐに引き上げる。
はまったらそのまま何も出来ずに終わるくらいの深さはありそうだ。
これは、大変かもな。
しかし、近づいただけでは何も起きないか。
ここからはボスモンスターを出現させるための"何か"をしなければいけない。
俺は刀を鞘から抜き、沼地を攻撃してみることにした。
『十字斬』
クロス状の斬撃が水面へ直撃し、そのままの形で大きく水飛沫を起こすが、何も起こらない。
これで目覚めて来ると思ったんだが、かなり深いところにいるのか?
色々試したが、全部外れだ。
アイテムボックスに何か使えるものがないか……。
アイテムウィンドウを開き眺めてみるが、これといって何も思い浮かばない。
下へスライドしていっても見当たらない。
うーん、左手で横向いた顔を支え、右手人差し指で上、下と無駄にスライドさせる。
あっ。手が滑りライドモンスターボックスをタップしてしまった。戻そ……う……。
……ああ⁉︎
その時、目に入ったのは茶色い
いや、しかし、これは……。
『ライドモンスター召喚』
「ナマアアア‼︎」
元気なところ申し訳ないが……。
「ナマア! ナマナマア!」
現在ブサナマを沼地で遊ばせている。
俺はとても残虐なことを考えているが、ブサナマは必ず救うから許してくれ……。
「ナマッ、ナマッ!」
うぅ、そんな楽しそうに遊ばれると心が痛い。
沼の上で右ヒレ、左ヒレと叩きつけているようだ。
その顔は満面の笑み。
「ナマ?」
ん? 何だ?
ゴゴゴゴという音とともに、水面の中心から波紋が広がる。
まずい!
『戻れライドモンスター』
俺は
波紋がさらに大きくなり、今にも消えそうな水面の魚を喰らうかのように沼地の主が姿を現す。
「グロロロロ!!」
黒く染まったティラノサウルスのような見た目に大きなエラがついている。
頭には二つ生えるトビウオのヒレ。
『"沼の王者"
沼から飛び出し、餌を見失ったそれはこちらへ襲い掛かってくる。
初見だ。
〇 うおわあああああ!
〇 ブサナマ……
〇 でっか!?
〇 恐竜マジか
〇 やば
〇 やば
〇 こえええええ
〇 迫力えぐい
さあ、やろうか。
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