第二章

【#18】三日目

 現在GHO2が発売されてから三日目の学園、明日明後日は休日なので早く帰って攻略を続けたい。


 ゲームの世界では目まぐるしく景色が変わっていくので、授業中でさえいつもの変わらない日常感がたまらなく染みている。


 昨日同様聞こえてくるはクラスメイトイマジナリーフレンドの声。


 その内容はGHOプレイヤー間に広がっている超大型ボスモンスター出現及び討伐した出来事。

 これは想像を超えるほどの話題になっていた。


 数百人単位での新しい狩り、今後も何が隠されてるんだというわくわく感。


 まあ、その原因が今まさに先生に問題を答えろと右手人差し指を刺されていて内心焦っている奴だと誰も思うまい。


 俺がこの箱の中でいう騎士とすれば、剣を向けているのは騎士団長というところか。


 期待に応えられないならお仕置き確定じゃないか。


 ふふふ、だがそんなものはデザーディアンと刃を交えた私には通用しないぞ。


 なかなか問いの答えを導き出さない騎士に、周りの同僚騎士は早くしろという視線を送ってくる。


 待て待て、そんな急かそうとするなよ。

 今答えてやるからな。


「答えは3だ!!」


 ふう、決まった――。




 ――失意に打ちひしがれている騎士は――うぅ、騎士団長にこれでもかと叱られた。

 そんなに怒んなくてもいいじゃん。



「あんた、本当バカね」


 死体蹴りをしてくるかのように近付いてきた影は毎度おなじみになりつつある黒髪ロングで制服に身を包む幼馴染の香凛。


「マナーが悪いですよ」


「は? 何言ってんの」


 腐れ縁の現実についていけていないゲーマーに何の用なんだ。


「凄かったね、昨日」


 え? ごめんなさい、一体全体どういうことなのでございましょうか。


 昨日……は英雄と厄災との戦闘に忙しかったのですが。


 もしかして――いや、まさかそんなはずは――。


 あるのか!? あってもいいのか!?


「"封印されし厄鳥"ディザスターフェニクス」


 あ、間違えた、何言ってんだ俺。


「そうね」


 そ・う・ね!? これはどっちと捉えればいいんだ??


「我、英雄、厄災を払いし者」


 この暗号を解けることが出来れば本物だ!


「かりーん!」


「今行くー!」


「あ、ちょ」


 清楚な彼女は麗しきお友達の元に行ってしまった。



 ◆



 あの後から頭の中がもやもやするが、これからそれを忘れるような体験をすることだろう。


 昨日に引き続き砂漠の街へと舞い戻った英雄は次の街を目指す。


 何かに引きずられている気がするが、そのうち戻るはず。



 今日も今日とてやっていきますか。


 目の前を右手人差し指、中指を立て二回連続タップすると現れるメニューウィンドウ、左に十本のバーが表示され、その上から八本目にある『配信機能』を人差し指で一度タップする。


 タイトルを入力し、配信開始をタップするとそれは始まる。



【#3】新たなる街へ行こう

 7487人が視聴中 

『レットチャンネル』 6万


〇 こんにちは

〇 こんにちは~

〇 今日も楽しみです!

〇 初見です

〇 最前線攻略組だ

〇 こんちは

〇 始まった!

〇 昨日はお疲れさまでした~

〇 次は何が見られるんだ……

〇 こんにちは

〇 こんにちは

〇 きたあああああ


 よし、問題なく機能しているな。


「みんな、今日も宜しく」


 昨日は色々な事が起こったからな、纏めるために一度確認しておこう。


 メニューウィンドウから開くことも出来るが、やはりこれをするなら――。


『ステータスオープン』


 そう呟くと現れるプレイヤーの強さが一目で測れる画面が表示された。



名前……『レット』


武器……『砂漠ノ守護刀さばくのしゅごがたな

防具……『ディノスコート』


体力……『2500』


攻撃力……『5600』

防御力……『2000』


称号……【孤高の英雄】

切り替え可能【龍殺し】【沼の王】【砂漠の英雄】


 砂漠ノ守護刀はデザーディアンから入手した素材で作成した刀身が砂漠色の刀だ。

 今のところ使い道がなかったディザスターフェニクスの素材を刀装具に使用し、鞘は黒く紫色のオーラ纏っていて、柄とつばはオレンジ色になった。

 英雄と災厄の関係性があったからこその出来た芸当だろう。


『砂漠ノ守護刀』

・攻撃力+5600

・固有アビリティ【砂の主】

・形状変化


 暴食刀とは一度お別れだが、今回のような特殊な組み合わせがあるのであれば再び携える日は近いだろう。


 ちなみに称号【砂漠の英雄】は砂漠の街サウザでゴールドを消費する際に10%割引されるというものだった。



 一通り確認し終えたな。


 ならば、行こうか。

 タイトルにもあるが、今日は新しい街を目指す。


『ライドモンスター召喚』


 もちろん呼び出すのは疾風狼スピードウルフ、長い道のりだと思うが頼んだぞ。


「アオオオン」


 大きな灰色の狼の背に乗り、お世話になった砂漠の街サウザへ別れを告げる。


 サウザでは大きくゲームが動き出した思い出深い街、また戻ってくるからな。




 そして、一面の砂漠を駆け、景色が変わるまで進み続けるのであった――。

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