【#27】交わる刀
現在、町での準備を終え、森の最奥にあるという神社へ向かっている。
町で落ち着いたエンラに、あの時一体何が起こっていたのかを尋ねると詳細に事を話してくれた。
まず、ノブナガが現れたのは第五の祠主ダイテングをソロで討伐してわずか数分後だった、まるで時を窺っていたかのようなタイミングで突如背後から話しかけてきた。
どうしてと悩む前には既に襲われ、応戦して何とか生き延びたが、ノブナガは凄く強かったらしい。
しかも、持っている力の数割しか使ってない感じで奇妙な術を使ってきたと。
この奇妙な術とは、恐らく妖術だと思うが、エンラは初見だからな。
それからすぐに俺とサタンが駆け付けたことで攻撃の手を止めたが、その妖術に押さえられ、声が出せず立てなかった。
この一連の事が、エンラの体力ゲージが不規則に減少していた原因だ。
そして、妖術についてだが、これは称号【妖を祓う者】によって今まで目に見えなかった妖術が視認できるようになった。
途中からクエストに参加したサタンとエンラも祠主を倒した際に、持っていなかった【祠主】を獲得したらしい。
これで、俺達は【妖を祓う者】により、妖術対策は万全。
まあ、サタンに関しては【未来眼】のままでいくらしいが。
俺もそれには賛成だ。
◆
倒壊した家屋が並ぶまばらな自然の中を通り抜けると、突如目の前に立ちはだかる壁のような階段。
ライドモンスターから降り、何百段はあろうかという石の階段を上っていく。
「あ"あ"~、面倒なのだ~」
「サタン、こんなの余裕ッスよ!」
「そうだぞ、サタン」
「うぅ~、レットとエンラの精神力がおかしいのだ」
確かに、これはゲームなので階段を上ることで疲れることはない。
しかし、視界に映るのは進んでも進んでも石の階段、疲れを感じてもおかしくはない。
かくいう俺も、平気な顔を装ってるが、正直辛くなってきた。
「到着!」
「やっと上り切れたッスね!」
「……ふう、やっとか」
階段を上り切ると目の前に現れたのは、石造りの鳥居。
その間から見える参拝者が最初に訪れるであろう場所の立派な拝殿が建っている。
そこに至るまでの道には石畳が敷かれ、道の中間辺りだろうか、つい数時間前までNPCとして接した人物は
その名前は赤色に変わり、『"戦国武将"ノブナガ Lv.1500』と表示されている。
だが、あんたはもう
「待っていたぞ、まさか全ての祠主を倒してしまうとはな。 俺の計画は失敗したというわけか」
祠は町を中心に、五角形で配置されていた。
計画というのは、自分では触れることができない祠を他の誰か、今回の場合はプレイヤーに壊し回させることで、手に負えないレベルの妖達を暴れさせる予定だった。
祠主が町を襲うという別のシナリオがあったかもしれないが、相手が悪かったな。
高レベルの妖は全て討伐され、計画は破綻した。
そして、原因である、俺、サタン、エンラを襲い始めたのだろう。
「計画は白紙になってしまったが、お前達を殺してまたやり直せばいい」
「では、行くぞ」
ノブナガがそう言い放った瞬間、カランと下駄が地面を叩く音がする。
嫌な予感がした俺はすぐさま刀を抜き、構える。
その予感が的中し、瞬間移動した武将は目の前に現れ、抜いていた刀を右上から振るい刀を交えた。
斜め十字状に交えた刀は火花を散らし、その重みは少しでも気を抜くと圧し潰されそうだ。
そして、称号【妖を祓う者】によって景色は一変した。
既に無数に張り巡らされている糸状の妖術は下手に動くと、引っかかってしまい何が起こるか分からない。
エンラはカバーしに行こうにも、妖術が行く手を阻んでいる。
武器を犠牲に確かめるはサタン、左の瞳を蒼く染め、糸状の妖術に触れた。
触れた瞬間に樹脂状結晶の形をした手鏡は、無数の斬撃に襲われる。
それを見据えていた魔王は手鏡を手元にワープさせ、間一髪のところで躱す。
鏡を以て確認してくれたお陰で張り巡らされた妖術の正体を見破った。
だが、それとともに確信したことが一つ、俺が持つ武器『砂漠ノ守護刀』は相性が悪い。
キュウビノキツネを遥かに凌ぐ妖術の質と量、
しかし、そうなるとこの重い攻撃を受け続け、そこから隙を見出さなければならない。
一度、力を込めてノブナガを大きく弾く。
不意を突かれたか、後ろへとバックステップを入れたノブナガは再び下駄を鳴らさんとする。
その一瞬で、目の前を人差し指と中指で二度タップし、メニューウィンドウの上から二本目のバー『装備』を開く。
右半分に表示された装備ボックスの中から『暴食刀』を左半分に表示されている武器と入れ替えるようにドラッグする。
カランと鳴り、次は背後へと瞬間移動を行う。
振り返らず新たに左へと携えた刀を抜き、背に担ぐように構えると、赤い刃と銀の刃は交わり火花を散らす。
攻撃力は劣ってしまうが、『暴食刀』、また宜しく頼む。
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