【#11】コラボ

 ノータさんと合流するため一度サウザに戻った俺は他に手掛かりがないか探し時間を潰す。


 特にこれといった手掛かりを見つけられないまま、その時は訪れた。


「やっほ、アン……レットくん」


 今にも眠ってしまいそうな朧げな声。

 ゆっくりと歩いてきたマイペースな彼、いや正確には彼女だったか。


 寝癖が酷く、薄茶色の髪は形というものが定まっていない。

 蒼く光る瞳を囲む大きなタレ目は気怠そうな表情でさらに垂れているように見えてしまう少女。


 紺色の甚平を着用している。

 装備の見た目を変えられるアバターアイテムだろうか。


 耳と尻尾だけは持ってたりはするんだが、全身変わるものは貴重だ。

 アバターガチャ専用のアイテムかもしれない。


 レットとして挨拶を返すが、これがなかなかに難しかった。


 ノータさん、いや、ノータとは前作で親交があり、彼女にはかなりお世話になった。

 彼ではなく彼女と教えてくれたのもその時だ。

 本人は間違えられても気にしないが、親しくなった人だけには教えてくれる。


「あと、ごめん」


 急に曇った表情で俺の反応を伺うかのように話す彼女を許さないことが出来る人などいるのだろうか。


 懐かしい雰囲気に飲み込まれ、俺はつい口調を忘れ返答してしまう。


「どうした……ではなく、どうしました?」


 そう問いかけると、さらに彼女の表情は曇り出してしまった。


 まずい、返答を間違えてしまったか。


 しかし、そんな杞憂はある人物の登場により終わる。

 というか表情が曇った原因がその人物だとすぐに察した。


「やあやあ! アン……レット!」


 はあ、とついため息をついてしまった。

 ノータの背後からぬるりと現れた第一声で元気だと分かってしまう男。


 前作とプレイヤーネームが同じであれば彼はセブン。


 黒髪黒眼の元気という文字を体現したかのような表情をするザ日本人男子。


 だが、着用しているこれでもかというほどの金色に光る鎧はどちらかといえば西洋のものに近い。


「こ、こんにちは」


 少し圧倒されているかのように挨拶を返してしまったが、セブンもノータ同様、前作ではかなりお世話になった一人。


 今作もそうなるだろうが、二人は所謂トッププレイヤーと呼ばれる上位プレイヤーだ。


 ダメ元で手伝って欲しいと頼んだのはそのため。


 まあ片方は付いてきてしまったが、心強いことに変わりはないし、セブンならいいかと良い方向で解釈しておく。


「なあ、二人のステータスを見てもいいか?」


「いいよ」

「もちろんだよ!」


 口調は慣れないことをするくらいならこのままでいこう。

 二人も何か思うところがあれば指摘してくれるだろう。


 目の前の気怠そうな彼女とそれとは対照的な金色鎧に視線を向け続けると現れる他プレイヤーのステータス。


 勝手にやってもバレてしまうし、相手も良い気分ではない。

 なので、基本的には許可を得てから見るのがマナーになっている。


 パーティーやフレンドであれば自分のメニューから自由に開けるし、一応ステータス隠蔽のアイテムやスキルも前作では存在していた。


 では、失礼するとしよう。


名前……『ノータ』


武器……『大樹の植木鉢』

防具……『大樹の鎧』


体力……『3000』


攻撃力……『1』

防御力……『1500』


称号……【森の加護】


 どれも知らないものなのばかりで新鮮だ。

 攻撃力1の武器とは興味深い。

 体力は装備に補正が付いているのだろうか。


名前……『セブン』


武器……『暴食剣盾』

防具……『輝くゴーレムアーマー』


体力……『5000』


攻撃力……『1600』

防御力……『3000』


称号……【破壊】


 俺と同じ暴食武器か。

 しかし、体力と防御の数値……形状変化を使用した時の破壊力は凄まじそうだ。


 流石はトッププレイヤー、既にここまで強いとはな。

 これは負けていられないぞ。



「ありがとう、確認させてもらったよ」


「ん」

「どうだったよ!」


 その後俺のステータスも二人に見てもらったが、やれやれという表情で一言「変わらないな」とため息混じりに二人共呆れていた。


 そこで一つ疑問が過ぎる。

 俺は二人のことを知っているが、二人はレットとは初めましてだよな……あれ、もしかして、バレてるのか?


 まあ、バラすつもりはないが、隠すつもりもない。

 むしろこのまま話していても問題がない分都合が良いのかもしれない。


 お互いのステータス確認を終え、コミュニティバーからフレンドをタップし、二人のフレンド登録をする。


 そして、その下にあるバー、パーティーを開き最大六人まで組めるパーティーを三人分埋めた。


 全員準備は万端だ。


「行こう」


「「了解」」



〇 きたあああああ

〇 うおおおおお

〇 初見です

〇 初見です

〇 やばやば

〇 え? ちょっと待って? レットさんて何者⁇

〇 こんなん観るしかないやん

〇 楽しみすぎる

〇 はあ、はあ、緊張してきた

〇 始まる前にトイレ行っとかないと

〇 ノータさんにセブンさんまで⁉︎

〇 これは絶対バズる

〇 頼んだあああああ

〇 神コラボあざす

〇 どうなっちゃうのこれ

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