【#4】底辺狩り

 武器と防具が揃ったことだしステータスでも見てみるか。


『ステータスオープン』



名前……『レット』


武器……『暴食刀』

防具……『コッココート』


体力……『700』


攻撃力……『1200』

防御力……『200』


称号……【龍殺し】



 ん? いつの間にか称号の欄が追加されてるぞ。


 そういえば暴食龍を討伐した時にログが出ていたな。


 前作にはなかったシステムだ。


【龍殺し】……龍種に対してのダメージ量が1.3倍上昇する。


 ほう、なかなか強いじゃないか。


 攻撃力が凄まじい。

 暴食刀にして正解だ。


 美しい銀の鞘に、刀身は血のように赤く染まっている。


 コッココートは虎似鶏トラコッコの防具で、虎色のロングコートだ。


 フードつきだが、大きな鶏のトサカが生えているように見えるので、一生被ることはないだろう。


 武器のステータスはこんな感じだ。


『暴食刀』

・攻撃力+1200

・固有アビリティ【暴食】

・形態変化


 固有アビリティと形態変化は使ってみないと分からないな。


 さて、そろそろ次の街に行ってみてもよさそうだ。


 一度行った特定の場所へは街に設置されている転移石テレポートストーンに触れると戻ることができるので、ルーポこの街にはまたいつでも来られる。


 だが、次の街と言っても自分の足で行くのは遠い。


 あれが必要だ。


 早速あそこに向かおう。


 俺の運よ、頼んだぞ。



 ◇◇◇



 俺はみんな大好きとある場所へと向かっている。



「おい、今回のはどうだ?」


「超よく撮れてますよw」


「ぎゃはははははw」


 何だ? まあ、色んな奴がいるだろうし、俺には関係ない。


「あいつでも撮っちゃいます?」


「レット? 無名だなw」


「検索したら出てきましたよ、『レットチャンネル』登録者30人ですってw」


「底辺きたー!」


「俺行ってきます」



「すみませーん」


 さっきうるさかった奴らの片方が話しかけてきた。


 黄緑髪の青年アバター、装備は黒狼短剣と黒狼鎧の黒長狼ブラックエルダーウルフ一式か。


「あそこにいる連れが『俺に勝ったらレアアイテムあげちゃいます』っていうPvP企画してるんですけど一戦いかがっすか?」


 まったくやる気はないし、急いでるんだが……。


 俺はコメント欄を見てみた。


〇 今作は称号とかあるんですね

〇 俺も欲しい

〇 称号探し流行りそう

〇 失礼な奴らだな

〇 ちょっと無理かも

〇 いるんだよなああいう奴

〇 怖い

〇 こいつ底辺狩りじゃね?

〇 悪い意味でバズってるやつか

〇 炎上系かよ

〇 自分より弱そうな人だけを狙って、それを配信してますよ

〇 動画も上げてる

〇 でもレットさん相手じゃ無理じゃね?


 まだ一日目だぞ? 他ゲーとかで有名なのだろうか。


 これ以上被害を出さないためにもやるか。


「やろう」


「マジっすか! あざーす!」


 男は連れを呼びに行く。



「いやあ、今回は俺たちの企画に参加していただきありがとうございます」


 もう片方がやってきた。


 金髪の青年アバター、見慣れない防具に武器は虎似鶏トラコッコつちか。


「その防具って……」


「気付いちゃいました? これ『爆弾亀ボンバータートル』って奴の素材なんですよ」


 爆弾亀……新規モンスターだな。


「早速ですが、PvP受けていただいてもいいですか?」


「ええ、勝ったらもらえるレアアイテムとは何なんですか?」


「そ、それは勝ってからのお楽しみですよ! 知らない方が面白いでしょ!」


 ああ、これはあれだな。

 乗っておくか。


「そうですね!」


『デルポからPvPの申し込みが届いています』


『承諾しますか? YES/NO』


 もちろん。


『YES』


『デルポとのPvPが承諾されました。 これより、PvPを行います』


『3』


 お、カウントダウンが始まった。


『2』


 一対一のPvPは基本的に相手の体力を0にするか、相手が降参したら勝ちだ。


『1』



『スタート』



 開始と同時にデルポが鎚を両手で持ち、オラア! と叫びながらこちらへ突進してきた。


 上から叩きつけてくる鎚を右側に飛び、躱す。そして姿勢を低くし、スキルモーションに入る。


『抜刀』


 デルポの背後に回り、振り向くと、鎚を持った男に縦の傷がつき、体力ゲージの六割が減る。


「はっ⁉︎」


 ゲージの減り具合に驚いているようだな。


「まさかここまで減るとは」


 俺は暴食刀の刀身を眺めながら呟いた。


 焦った様子を見せながら次は鎚を横に大きく振ってくる。


 確かに横降りの方が当たる面積が大きいが、必死になりもう周りが見えていないようだ。


 地面を蹴り、空中へ回避する。


「待ってたぜ!」


 デルポは振った勢いのまま一回転し、鎚をぶん投げてきた。


 確かに空中だと避けられないな。


 だが。


 飛んできた鎚をタイミングよく蹴り、さらに上へ飛び上がる。


「ええ⁉︎」


 上空で刀を縦に一回、横に一回振り、十字の斬撃が完成する。


『十字斬』


 その斬撃はデルポへ一直線に向かっていく。


「嘘だろ⁉︎」


 まさか空から斬撃が飛んでくるとは思わず、その場に立ち尽くしていた。


 斬撃はデルポを斬り裂き、体力ゲージがなくなった。



『勝者』


『レット』




「まだやるか?」


「い、いえ……」


「やることあるよな?」


「大変申し訳ございませんでした」


 あれ?


「い、いや、勝ったらもらえるレアアイテムの事なんだが……」


「すみません、負けるつもりがなかったのであれは嘘でした」


 ええ……。


「そうか。 じゃあ、俺は行く」


「ちょっと!!」


 何だよ……今ならめっちゃ出る気がするんだから早く行かせてくれ。


〇 レットさん強すぎ

〇 デルポってこんなに弱かった?

〇 気持ちよかった

〇 爽快

〇 ありがとう

〇 レットさんについていくわ

〇 ps高すぎる

〇 かっこいい



 ◇◇◇



 はあ、疲れた……。


 デルポ達は登録者を増やしたくて底辺狩りに手を出したらしい。


 あの後話し合った結果、今まで迷惑かけた人に謝っていくと言っていた。


 デルポ達あいつらのせいでこのゲームをやめた人がいなければいいんだが。


 その際に、お詫びもするそうだ。


 そもそも底辺狩りあんなことをしていっても、近いうちに負けていただろう。


 たまたまそれが俺だっただけだ。


 レアアイテムはもらえなかったが、代わりにと『ゴールド』をもらった。


 ゴールドはGHO2この世界の通貨だ。


 だが、これからあることに挑戦する俺にとっては好都合かもしれない。


 自分の足で走っていては次の街は遠いと言ったな。


 そういう時は『ライドモンスター』に乗れば解決だ。


 ライドモンスターは基本的に自分の足で走るよりも速い。


 そして、ライドモンスターの入手方法の一つに『ガチャ』がある。


 そう、『ガチャ』だ。


 全財産をかけてでも出してみせる。

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