第12話

「今日は一度も会えなかったでしょ?だから、会いに来ちゃった」


「そう、なんですね」


すみません。

私は、今日は会いたくなかったです。


「その人が沙紀先輩?」


咲月の敵意むき出しの目。

久しぶりに見た。


「あ、うん」


「こんにちは。心桜ちゃんの友達の沙紀です」


友達…

私は先輩のこと…


こんなこと思うなんて、やっぱり最低だ。私。


「どうも。私の名前は…別にいいですよね。もう会うことないんですし」


「ちょっと咲月、」


いくらなんでも、それはやりすぎ。


「きっとまた会うと思うから、仲良くしてね」

「…」


うんともすんとも言わない。

自分の意志をしっかり持っていて、流されない咲月はすごい。


そして、咲月の敵意にまるで気づいていない先輩もすごい。


「柊から心桜ちゃんは大事な約束があって、今日は一緒に食べれないって聞いたけど、お友達のことだったんだね」


そうだろうとは思ってたけど、


「そうです。先輩も柊先輩と二人で食べたんですね、」


「そうだよ、心桜ちゃんがいなくて柊も寂しそうだった」


誰のせいで…

誰のせいでこうなったと…


「何かあったんだよね?」

「え?」


「柊の元気がなかったから、そうかと思って。何があったかは聞いてないけど。明日は心桜ちゃんも一緒に食べれたらいいなぁ」


何それ…

「私も一緒…?」


何か。私がおまけみたいな言い方…

それって、私が言う言葉じゃないの?


私が、気にしすぎなだけ?


「えっと、心桜と友達なんですよね」


「もちろん」


「友達なら心桜の気持ち、少し考えれば分かるはずですよね。心桜が柊先輩と一緒にご飯を食べない…食べたくない理由ぐらい」


咲月…


「理由…?柊と喧嘩したからじゃ…」


沙紀先輩には分からないんだろうな。

天然だから。


分からずにしてるから余計に腹が立つんだけど。


「分からないふりをしているのか、ただの馬鹿なのか…」


「咲月、もういいから、」


沙紀先輩は悪くない。

誰も悪くない。


体が弱いのも、そんな幼なじみを気にするのも


別に誰も悪くない。


むしろ私が…


「でも、」


「いいから。すみません、咲月が言ったことは気にしないでください」


「分かった、じゃあ授業始まるから行くね。何かあったら相談して欲しいな、私じゃ頼りないかもしれないけど」


相談なんて絶対に出来ない。

したくない。


「ありがとうございます、」


あなたのせいで。なんて。


「何あの女…最後の最後まで嫌味ったらしい」

「天然だから仕方ないよ」


「あんなの人工でしょ」

「ふふ、何それ」



それでも、咲月が私の気持ちを代弁して言ってくれたから、少しスッキリした。

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