第49話

月曜日の朝、私は学校の教室で咲月と遥希くんと一緒に座って話していた。


カフェでの出来事が頭から離れず、心の中で不安が渦巻いていた。


「この前は災難だったね」

遥希くんが言った。


遥希くんの声には心配が滲んでいた。


「ほんとにね」

咲月が同意した。


咲月の表情も心配そうだった。


「あの日のことなんだけど、あの男性がどうしてあんなに怒っていたのか、まだ気になってるの」


引っかかる部分がある。


どうしてだか、理由はよく分からないけど。


「うん、確かに変だったよね」


「会社で嫌なことあって八つ当たりしただけだって。子供だからって下に見てるんだよ」

咲月が言った。


咲月の言葉に、私は少しだけ納得した。


だけど、心の中にはまだ不安が残っていた。


「でも、もしかしたら何か理由があったのかも」



自分でもなぜこんなに気になるのか分からなかった。何かが引っかかっていた。


「他の理由って?」

遥希くんが疑問を投げかけた。


「それは分からない…」

自分の不安をどう説明すればいいのか分からなかった。ただ、何かが違うと感じていた。


その時、携帯が鳴った。


画面を見ると、見知らぬ番号からの着信だった。


心臓が一瞬止まりそうになった。


私は少し躊躇して、結局電話に出なかった。何か悪い予感がして、怖くて出られなかった。


その日の放課後、私は一人で帰宅していた。


夕暮れの道は静かで、少し心細かった。


ふと、後ろから足音が聞こえた。


振り返ると、あの日の男性が立っていた。


心臓が激しく鼓動し、全身が震えた。


「お前、あの日の女だな」

男性が冷たい目で私を見つめた。


「えっ…」

驚きと恐怖で声が出なかった。


どうしてまたこの人がここにいるのか、理解できなかった。


「お前のせいで、俺は仕事を失ったんだ。どうしてくれるんだ!」


男性は怒りを露わにしながら、近づいてきた。


「そんな…私は何も…」


恐怖が全身を支配し、逃げることすらできなかった。


その時、男性は突然私の腕を掴み、引きずり込もうとした。


冷たい手が私の腕に食い込み、痛みが走った。


心臓がさらに激しく鼓動し、息が詰まりそうになった。


「誰か助けて!」

私は必死に叫んだ。


周囲には誰もいないように感じたけど、それでも声を張り上げた。


「黙って着いてこい!」


恐怖と絶望が入り混じり、涙がこぼれそうになった。


私は必死に抵抗した。だけど、力の差は歴然だった。


男性の力強い手に引きずられ、恐怖が全身を支配した。


逃げたい、でも逃げられない。心の中で何度も叫んだ。


「離して!」


私は叫びながら、必死に腕を振りほどこうとした。


男性の握力は強く、逃れることができなかった。


絶望感が胸に広がり、涙が溢れそうになった。




その時、遠くから誰かが走ってくる音が聞こえた。

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