第4話
「心桜帰ろう」
長かった一日が終わり、翔先輩が教室まで迎えに来た。
「先輩、えっと…今日はちょっと用事があって…先に帰ります」
「用事って?」
どうしよう、そこまで考えてなかった。
「えっと、」
「嘘ついてる?」
バレた
「う、嘘なんて、」
「心桜が嘘つく時、敬語使うって知ってる?」
「っ、」
私にそんな癖があったなんて、
「なんで嘘つくの」
悲しそう…
でも、いま先輩と話してたら喧嘩になる。
「考え事したいから、一人で帰りたくて…じゃ、じゃあまた明日!」
もう、逃げてしまおう
「待って」
「っ、何、」
腕を掴んで離してくれない。
「朝から俺の事避けてるよね」
「別に避けてないよ…」
「避けてるよ」
「避けてないってば」
また、きつく言っちゃう。
「正直に話して」
正直に…?
みんなに優しくしないで、私だけに優しくして。
なんて、言えるわけない。
「別に話すことなんて何も無い。離して」
「話してくれるまで離さない」
掴まれていた腕に力が強く入るのが分かった。
「話なんてない。ただ一人帰りたいだけ」
お願い。離して。
わがまま言って困らせたくないんだよ。
「尚更、それが理由なら一人でなんて帰せないよ」
「なんで、」
「一人で帰りたいなんて思わせちゃったから。ねぇ、言っててくれないと分からないよ」
言うまで、離してくれなさそう。
「…今日の朝、」
「朝…?あぁ、彩音ちゃんとはほんとに何も無くて、」
「そうじゃなくて。あの人に、柊先輩が、私の事を子ども扱いしてて、カップルに見えないって言われて、言い返せなくて…」
「え、彩音ちゃんが?心桜にそんな事言ったの?」
やっぱり先輩には聞こえてなかったんだ。
「うん…」
それなら、先輩は信じてくれないんだろうな。
きっと、私の聞き間違いで終わるはずだ。
「そんなこと言う子じゃないんだけどな…」
やっぱり。
「もうい『だけど心桜が嘘つくわけないし』」
「嫌な思いさせてごめんね」
「え、信じて、くれるの…?」
「…?当たり前でしょ?」
信じてくれないんじゃないかって勝手に思い込んでた
「彩音ちゃんには俺が話しておくよ」
「…」
「これからは、何かあったら俺のこと避けずに正直に言って欲しいな」
「ごめんなさい、」
「何かしてあげたくても、どうすることも出来ないし、避けられると、結構悲しいからさ」
先輩…
今日一日避け続けて、悲しい思いをさせてしまった。
「ごめんね、気をつける」
「じゃあ、帰ろっか」
「うん、」
「あ、そう言えば、明日どこ行きたいか決めた?」
この前のデートで映画は行ったし…遊園地にも行ったし…
「うーん、特になくて、」
「じゃあショッピングモールでブラブラする?」
「うん!」
「じゃあ、明日12時噴水広場の前で集合しよう」
「分かった。楽しみだな〜」
まさか、あんな事になるなんて思ってもいなかったけどね。
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