第3話
「先輩に会いにいかなくてもいいの?」
いつもなら、授業が終わる度に柊先輩の教室に行っている。
だけど、今朝のことが引っかかってどうしても行く気になれなかった。
「行きたいんだよ?行きたいんだけどさ…」
山口先輩と柊先輩が一緒にいるかもしれないし?
仲良くしてるのを見ると、心の中にある自分の悪い顔が出てくるんだもん。
私だけの先輩なのに、仲良くしないで欲しい。
なんて思っちゃう。
こんな自分嫌だから。
だから、行けない。
「喧嘩でもした?柊先輩が怒ってるところなんて想像できないけど」
喧嘩…ではない。一方的に私が避けてるだけ。
「いや、喧嘩はしてないよ。してないんだけど…」
「してないなら、どうして会いに行かないの」
不思議に思っても仕方ない。
普段なら移動教室で遅刻しそうになっても、一目見に会いに行くんだから。
「他の女の人と一緒にいる姿なんて見たくないの」
こんなことを思う私は重いんだろうか。
「え?そんなの今に始まったことじゃないでしょ。柊先輩人気で、常に周りに人いるじゃん。それでも毎回会いに行って凄いなって思ってたけど、力尽きた?」
私、そんなふうに見られてたんだ。
確かに、今考えてみれば行き過ぎていたような気もする。
「何とかしてよー」
咲月に頼んだところで、意味ないってことくらい分かってるんだけど
「何とかって言われても…あ、柊先輩だ」
「嘘っ、」
咄嗟に隠れてしまった。
「あ、咲月ちゃん。心桜いる?」
お願い、言わないでっ、
「心桜なら…トイレじゃないですかね、」
ありがとう。そして嘘つかせてごめん。
「もしかして心桜に何かあった?」
「へ?」
「いつもなら会いに来てくれるのに、今日は来なかったから何かあったのかと思って…」
「特に、何も…聞いてないですよ」
「そっか、なら良かった。ありがとう」
「…もう出てきていいよ」
「嘘つかせてごめん」
「それはいいけど、柊先輩、心配してたね」
「…うん、」
いつもなら毎時間来る子が来なかったら、そりゃ何かあったと思うか、
心配させてしまった。
「…これでいいの?」
良くない。良くないけど…
「…」
「避けてばかりじゃ何も始まらないよ」
「そうだけど…」
本音言って嫌われたくない。
「お昼ご飯一緒に食べるんでしょ?」
先輩とは、毎日一緒にお昼ご飯を食べている。
だけど…
「今日は、咲月と食べてもいい?」
こんな気持ちのまま先輩とご飯を食べても気まづいだけ。
「いいけど…ほんとにそれでいいの?」
「今日だけ、」
明日からはまたいつも通り。
先輩には次の授業で提出しないといけない宿題がまだ終わってないから、今日は一緒にご飯食べられないって連絡した。
何か言われるんじゃないかって心配したけど、
"分かった。頑張ってね"
そう返ってきたから、嘘ついた私が言うのもなんだけど、寂しいって思ってくれないんだな。ってやるせない気持ちになった。
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