第7話
「これじゃあどっちと付き合ってるのか分からないじゃない!」
と、まぁ、言った相手は柊先輩ではなく、
「柊にそう伝えればいいんじゃない?」
朝陽先輩だ。
廊下で偶然会って、愚痴を聞いてもらっている。
「無理ですよ、言ったところでどうにもならないって分かってるので。それに、言えないですよ。こんなわがまま」
先輩に嫌われたくない。
「放ったらかしにしないでって、そんなの我儘じゃないよ」
「でも…」
幼なじみを大切にしたい気持ちは理解できるから。
困らせてしまうだけだ。
「彼女なのに、目の前で他の女の子とイチャイチャしてるところを見て文句も言えないなんて、そんなのおかしいでしょ?」
「それはそうですけど、」
柊先輩はそんなつもりなくて、ただ沙紀先輩の面倒を見てるだけ。
なのに、私がそう見えているだけ。
「前にも言ったけど、我慢してたらいつか壊れちゃうよ?どちらかがずっと我慢しないといけない関係なんて長くは続かないからね」
「はい、、」
分かってる。分かってるんだけど、
「ま、心桜ちゃんが本音を言うよりも、先に柊が気づいてあげないといけないんだろうけどね。彼女のことを構うのは彼氏の役割なんだから」
沙紀先輩ばかり構うのは確かに寂しいけど、
「だけど、今日は久しぶりにデートするんです!」
沙紀先輩が学校に来るようになってから、暫く放課後デートをできていなかった。
「嬉しそうだね」
「それはそれは嬉しいです!」
「楽しんで来てね」
「ありがとうございます!」
___
「心桜、」
「先輩!早く行こ!お腹空いた!」
待ちに待ったパンケーキ。
先輩とのデートが楽しみすぎて、今日一日ずっと上の空だった。
「ごめん、」
「先輩…?」
ごめんって、何?
あぁ、待たせてごめんってことね。
「沙紀の体調が良くなくて、」
まさか…
「…だから?」
「面倒を見ないといけなくなった」
また、沙紀先輩…
「なんで柊先輩が?」
「沙紀のご両親は共働きだから、面倒を見れる人がいなくて」
最近体調良くなってきたって、さっきまですごく元気そうだったのに…
なんで、どうして今日なの?
「…また沙紀先輩のせいで、」
柊先輩と久しぶりに二人きりで過ごせるんだって、今日はすごく楽しみにしてた。
それなのに、また邪魔されるんだ。
「心桜、」
「沙紀先輩の所になんて行かないで、私のそばにいてよ」
一度ぐらい私のことを優先してくれてもいいじゃない。
「そんなこと言わないで、」
そんなこと…?
「私は、苦しくて仕方ないのに…柊先輩にとっては、そんなこと、なんだね」
何度もドタキャンされる私の気持ちなんて、先輩にはどうでもいいの…?
体が弱いからって、幼なじみだからって。
ほんとにそれだけ…?
「違う、そうじゃなくて」
「私は我儘も言っちゃダメなの?何もかも我慢しないといけないの?」
柊先輩と一緒にいる時間が減っても、私を構ってくれなくても、一度だって我儘を言ったことはなかったのに、
「沙紀だって好きで体が弱いわけじゃないよ」
何それ…
「沙紀先輩のこと、庇うんだ」
私なんかよりも、沙紀先輩の方が大切なんだ。
先輩は…一度でも私の気持ちを理解しようとしてくれたことはあるんだろうか。
いつも私ばっかり…
幼なじみだから仕方ないって、我慢して我慢して…
「心桜、聞いて。俺は『そんなに行きたいなら行けば』」
分からない。先輩の気持ちが分からない。
「心桜」
いや…
知りたくない。
理解もしたくない。
もう、何も考えたくない。
「聞きたくないっ…!」
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