第6話
なんて、言えたらいいのに、
「心桜…?」
「あ、ごめん、ボーっとしてた。えっと、なんの話だったっけ」
「映画二人で行ってもいいですか?」
行って欲しくない。行って欲しくないけど、
「私に聞かなくても、先輩が行きたいなら…いいと思いますよ?」
「やったぁ!じゃあまた今度予定立てようね」
「そうしようか」
うん。これでいいんだ。こうやって耐えないと先輩の彼女は務まらないんだから。
これぐらいで怒ってたらキリがないしね。
それに、こんなの序の口にすぎない。山口先輩や、春香ちゃんよりも手強い相手がいる。
「沙紀!学校に来てて大丈夫なのか?」
「うん。最近体の調子が良くて。医者さんからも、とりあえず様子を見ながら、学校に行ってもいいって許可をもらったの。まだ歩いて学校には行けないんだけど、」
沙紀先輩は柊先輩の幼なじみで、昔から体が良くなかった。
暫くの間、学校を休んでいたんだけど、ここ最近また学校に来るようになった。
先輩はそんな沙紀先輩のことが心配で心配で…
沙紀先輩が学校にいる時は私なんて二の次。
学校だけじゃない。私生活だって。
沙紀先輩のせいでデートが潰れたことだって一度や二度じゃない。
何がムカつくって、沙紀先輩がすっごくいい人だってこと。
性格悪い人だったら、私だって文句の一つや二つぐらい言ってやれるし、何より先輩を取られる心配だってせずにすんだのに。
性格いい上に可愛いんだもん。不安にだってなるでしょ…
はぁ、実は、すごく性格悪かった!とかないかな…あったら凄く嬉しいんだけど、あるはずないか。
___
「ごめんね心桜ちゃん…柊と二人で食べたいでしょ?私は大丈夫だって柊に言ったのに聞かなくて、おじゃま虫みたいで嫌なんだけどなぁ」
「全然、そんなことないですよ。気にしないでください、」
いつもならこの時間は、柊先輩と二人きりで誰にも邪魔されずに一緒にいられる。
だけど、偶にしか学校に来れない沙紀先輩は、仲良しの友達も特にいないみたいで、そんな先輩をほっとけないって、先輩が学校に来る時だけ三人でお弁当を食べてる。
もちろん。私もそこまで悪魔では無い。
偶にしか学校に来ない幼なじみが一人でご飯を食べている姿をを見ると胸が痛いだろう。
私は、二人の時間が無くなったから拗ねてるんじゃない。
「沙紀、昼ごはんそれだけ?」
「うん、あんまり食欲なくて、」
「それでもしっかり食べないと…俺の卵焼きひとつあげるから食べて。あとおにぎりも」
「えぇ、大丈夫だよ。こんなに食べられない」
「いいから。しっかり食べて健康でいないと」
「もう、ありがとう」
これだよこれ。
二人の世界って感じで、私なんていないみたい。
これじゃ、どっちがおじゃま虫か分からないよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます