第21話
カフェでの時間はあっという間に過ぎ、私たちは楽しいひとときを過ごした。
ケーキを食べ終わり、カフェラテを飲み干すと、外はすっかり暗くなっていた。
「そろそろ帰ろうか?」
「うん、そうだね。」
私たちはカフェを出て、夜の街を歩き始めた。
突然、遠くから見覚えのあるシルエットが近づいてきた。
心臓が一瞬止まってしまいそうになった。
「柊先輩…?」
咲紀先輩と一緒に歩いているのが見えた。
柊先輩も私と遥希くんに気づき、驚いた表情で立ち止まった。
「心桜…、?」
私は何も言えず、ただその場に立ち尽くしていた。
「心桜ちゃん、大丈夫?」
遥希くんが静かに言った。
柊先輩の表情が険しくなり、ぼそっと言った。
「こんな時間まで一緒にいるんだ…」
な、にそれ?
自分のことは棚に上げて、私のこと責めてるの?
私は涙をこらえながら、怒りを込めて言った。
「そんなこと言うなら、先輩こそ…!こんな時間まで二人でいるじゃん」
柊先輩は一瞬言葉を失ったが、私の問いかけに対して、少し戸惑いながらも答えた。
「学校を頻繁に休んでて、授業についていけないから勉強を教えて欲しいって頼まれて、図書室で勉強を教えてたんだよ。それで、暗くなったから家まで送るところで…」
…またか。
胸が締め付けられるような感覚に襲われた。
柊先輩の言葉が正論だってことは理解していた。それでも心の中のモヤモヤは消えなかった。
いや、だからこそ、ムカついた。
「…また私が我慢しなきゃいけないんだ」
私は、視線を落とし、地面を見つめた。
「え…?」
身体が弱くてなかなか学校に行けない幼馴染のために勉強を教えて、暗くて危ないから家まで送ってる。
そう言われたら何も言えない。
彼氏が幼馴染に優しくするのに嫉妬して、他の男子にこんな時間まで恋愛相談に乗ってもらった。
私の方がおかしいのかもしれない。
「そんなこと言われたら、何も言えないもん」
拳を握りしめ、涙が頬を伝った。
ずるい。
ずるいよ。
柊先輩は何も言えず、ただ立ち尽くしていた。
もうここに居たくない。
今すぐ走り去りたい。
「心桜ちゃん、もう行こう」
私の気持ちに気づいてくれたのか、
遥希くんが静かにそう言った。
私はうなずき、遥希くんと一緒にその場を離れようとした。
「待って。そんな顔のままで行かせられるわけないよ」
柊先輩は一歩前に出て、私の手を取ろうとしたけど、私は一瞬ためらった後、手を引っ込めた。
「心桜、お願いだからちゃんと話そう」
「もういいよ、柊先輩。私、もう疲れちゃった」
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