第41話
遥希くんの名前を出したのが間違いだった。
ただ…
もっと俺を頼ってほしいだけなのに、
俺が原因だって言うなら、ちゃんとそう言って欲しいのに。
他の人から心桜の気持ちを聞きたくなかった。
もちろんそれに気づけなかった俺が一番悪いってことぐらい分かってる。
けど、
「心桜、」
俺は心桜に向かって一歩踏み出した。
心桜は後ずさりした。
「だから、先輩が言いたいことは、私が浮気してるって、そういうこと、ですか、」
心桜の声は震えていた。
違う、違うんだよ。そういうことじゃない。
俺が言いたいのは、
「いや、そういうわけじゃないよ。ただ、最近の心桜の様子を見て、何か変わったのかなって思っただけで…」
俺は焦りながらも、心桜の目を見つめた。
どうして、こうも自分の気持ちを上手く言えないんだろう。
俺の知らない間に、遥希くんの傍でどんどん変わっていっているように感じたから。
それが寂しくて悔しくて、
それに、心桜が遥希くんのことをただの友達だと思っていたとしても、きっと遥希くんは…
昨日の心桜を見つめる目は…。
ただの友達として大切に思ってる訳じゃなさそうだった。
「どうしても、距離を置かないといけないの?」
離れていかないで。
なんて、そんな自分勝手なことは言えない。
そんな決断をさせてしまったのは、他の誰でもない俺だから。
だけど、せめて心桜の傍にいさせて欲しい。
「え?」
心桜と離れている間に、もしものことがあったらって考えただけでも…。
「…心桜を誰にも取られたくないんだ」
俺は心の底からの本音を吐き出した。
「誰も取らないよ」
心桜は、ほんとに鈍感だなぁ。
「遥希くんは…?」
「だから、遥希くんとは何にもないって言ってるじゃん」
心桜の声には苛立ちが混じっていた。
どうやって説明すれば、心桜は分かってくれるんだろうか。
「そう思ってるのは美桜だけかもしれないよ」
俺は静かに言った。
「何が言いたいの」
心桜の目が鋭くなった。
友達だと思ってるのは心桜だけだよってこと。
「遥希くんは、そうじゃないかもしれないでしょ、」
俺は心桜の目を見つめ続けた。
心桜がまだ気づいていないだけで、遥希くんは少しずつ心桜にアピールし始めていたとしたら、
「それって、遥希くんを疑ってるってこと…?」
心桜の声が震えた。
疑ってる、というよりも確信してる。
あの目は、俺と同じ目だから。
そして、心桜は一瞬ハッとした表情をした。
俺はそれを見逃さなかった。
「身に覚えがあるんじゃない?」
俺は問い詰めた。
「違っ…ちょっと待って、どうして、」
心桜は動揺していた。
やっぱり既になにか言われたかされたんだね。
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