第37話
「そんなこともあったね」
俺は軽く笑いながら言った。
「そんなこともって、昨日のことでしょ」
咲月が突っ込んできた。
「まぁね」
そう言って、肩をすくめた。
「早く仲直りして欲しいんだけどなぁ」
咲月がため息をついた。
俺も、同じ気持ちだった。
「どうもこうもすれ違いばっかりで、なかなか、ね」
俺は苦笑いを浮かべた。
あの人の気持ちも分からないことはないけど、だからって心桜ちゃんを傷つけていい理由にはならない。
「あ、勘違いしないでね」
咲月が急に真剣な表情になった。
「ん?何を?」
「私は別に柊先輩の味方じゃないよ」
咲月の言葉に、俺は少し驚いた。
「それって、」
もしかして、、
「あ、かと言って遥希の味方でもないから」
だよね。
「じゃあ」
「心桜の味方だよ。心桜がどんな選択をしようと、心桜が幸せになれる方を応援する」
咲月らしい。
「そっか」
俺は静かに答えた。
「だから、遥希といる方が心桜は幸せなんだったら、私は遥希を応援する」
咲月が微笑んだ。
「ありがとう」
「別にあんたにお礼言われる筋合いないし」
咲月が照れくさそうに言った。
「…今はどっちだと思う?」
ふと気になって聞いてしまった。
「えー、うーん。中間かな、」
考え込んで出た答えがそれか、
「ふっ、中間?」
想定外の答えに思わず笑ってしまつた。
「先輩といる時の心桜ってほんとに幸せそうじゃん?でも、最近はしんどそうで。しんどいときに傍にいてくれる遥希と一緒になる方が幸せになれるのかもとか考えちゃって」
咲月の言葉に、俺は心桜ちゃんのことを思い出した。
あの時の心桜ちゃんは、ほんとに幸せそうだったのに。
今は…。
「そっか、」
心桜ちゃんのことを考えると、胸が痛んだ。
心桜ちゃんが俺を選んでくれさえすれば…
「てか心桜のこといつから好きなの?」
咲月が突然聞いてきた。
「内緒〜」
冗談めかして答えた。
「はぁ?ムカつく」
咲月が怒ったふりをした。
「心桜ちゃんが幸せそうに笑うから、諦めようと思ってたのに」
俺は本音を漏らした。
「あんたってなんやかんや良い奴よね」
咲月が感心したように言った。
「そうかな」
そんな風に思ったことないけど。
「だって心桜のために自分の気持ちを隠そうとしてたんでしょ?」
気持ちを伝えたとしても、断られることは分かってたし。
「まぁね」
それに、自分の気持ちを押し付けて心桜ちゃんを困らせたくなかった。
「私も心桜には幸せになって欲しいからなぁ」
心桜ちゃんが幸せになるためには…
「やっぱり先輩が変わらないと、」
俺は心桜ちゃんのことを考えながらボソッと呟いた。
「ん?」
「いや、独り言」
もし俺が心桜ちゃんを幸せにできるのなら、どれだけ良かっただろう。
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