第47話


「そんな…私はただ普通に話していただけなのに…」


私は涙がこぼれそうになった。


「心桜、気にしないで。俺たちは何も悪いことしてないよ」


遥希くんが優しく言った。


その言葉に少しだけ心が軽くなった気がした。


「そうだよ。こんな奴なんか相手にせずに無視しよう」


咲月も同意した。


だけど、男性はさらに絡んできた。


「無視するな!お前らが、特にこの女がうるさいせいで、こっちは迷惑してるんだ!」


私、この人に何かした?

何か気に触ることしたかな。


心がざわついた。


「ちょっと!会社で嫌なことがあったのか知らないけど、私たちに当たらないで貰えますか!?子供だからって黙って聞くと思ったら大間違いだからね!」


咲月は怖がりもせずに反撃した。


私はただそれを眺めることしか出来なかった。


何を言っても反論してこないと思ったから、私に目をつけたんだろうか。


遥希くんは、ずっと私の背中を優しくさすってくれていた。


その温かさに少しだけ安心した。


「子供のくせに生意気な!」


「今、あなたが一番煩いってことに気づいてますか?」


こんな人よりも遥希くんの方がずっと大人だ。遥希くんの冷静さに感心した。


「なんだと!?」


「もういい加減にしてください…!」


私は涙をこらえながら叫んだ。


もうこれ以上聞いていられなかった。


その時、店員さんが駆け寄ってきて、男性を制止した。


「お客様、他のお客様に迷惑をかける行為はおやめください」


店員さんが毅然とした態度で男性に注意した。


その瞬間、店内の空気が少し和らいだ気がした。


「こいつらが煩いからお前の代わりに注意してやったんだろ!」


男性は怒りを抑えきれずに反論した。


「騒いでいた様子は見られませんでした」


店員さんの冷静な対応に、少しだけ安心した。


「ふん、もういい!」


男性は不満そうに言いながら、店を出て行った。

やっと静かになった。


「心桜、大丈夫?」

咲月が心配そうに尋ねた。


「うん、大丈夫…」

私は涙を拭いながら答えた。


もう何がなんだかよく分からなかった。


「今日はもう帰ろうか?」

遥希くんが優しく提案した。


「だけど、」


せっかく来たのに。楽しい時間を過ごすはずだったのに、こんなことで終わってしまうのは悔しかった。


「私たちのことは気にしないで。また来ればいいよ」

咲月が優しく言った。


確かに、今ここに残ったら、二人に気を遣わせてしまうことになる。


「うん、そうする…」

私は頷いた。


その後、三人で店を後にし、家に帰ることにした。


帰り道、私はずっと考えていた。


今日は楽しい一日になるはずだったのに、どうしてこんなことになってしまったんだろう。

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