第13話
「心桜ちゃん一緒に帰ろ」
「うん」
遥希くんは今日一日、ずっと隣にいてくれた。
きっと、先輩が来た時に守れるように、監視してくれてたんだと思う。
先輩は、あの後から一度も来なかった。
帰りも用事があって一緒には帰れないと言ったけど、来るかもしれない。
そう思ってたけど、来なかった。
沙紀先輩と帰ったのかもしれない。
なんか、もうどうでもいいかも。
何もかも。
「元気…?」
「え?」
元気ないことバレてた…?
顔に出ないように気をつけてたんだけど、
「今日の朝からずっと浮かない顔してたから。気になってたんだよ」
心配かけないようにしてたつもりだったのに、気づかれてたんだ。
「心配かけてごめんね、もう大丈夫だから」
明日からは、また元通り。
になれるように、元気出さないと。
いつまでも暗い顔していられない。
「別にいいんじゃない?」
「え?」
いいって何が…
「心配かけていい。それに、無理に元気出そうとしなくてもいいんじゃない?」
「へ、」
どうして、、
私の心の声を読めるの?
いや、それよりなんで元気にならないでいいなんて、、
「ちゃんと、しんどい時はしんどいって言っていいんだよ。じゃないと、ちゃんと元気にはなれないでしょ?」
そんな言葉…誰にも、先輩にさえ言われたことなかった。
「遥希くん…」
「美桜ちゃんって、我慢して本音隠しちゃうタイプなんだよね。それで、全部一人で背負っていっぱいいっぱになっちゃう」
「そうかも、」
私よりも私の事をよく分かってらっしゃる。
「でも、俺の前では無理しなくていいよ」
「え…?」
「我慢しなくていい」
その言葉を聞いた瞬間
私は驚きとともに胸が熱くなった。
遥希くんは私の知らない、一番欲しい言葉をくれる
今まで抑えていた感情が一気に溢れ出し、目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
「うぅぅ」
「…うん。今までよく頑張ったね」
自分では気づいていなかったけど、かなり我慢していたみたいだ。
「ずっと、ずっと辛かった。でも、誰にも言えなくて…」
震える声でそう言うと、彼は優しく私の肩に手を置き、静かに言った。
「大丈夫だよ、美桜ちゃん。俺がいるから、もう一人で抱え込まなくていいんだよ」
その瞬間、私は初めて心からの安堵を感じた。
彼の温かい言葉と優しい眼差しに包まれ、少しずつ心を開いていく自分がいた。
生きてきた中で、こんなに泣いたのは初めてかもしれない。
そんな私を、彼は何も言わずに優しく抱きしめ、背中をそっと叩いて落ち着かせてくれた。
まさか、こんな所を見られていたなんて、、
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