第23話


歩いている時も、ずっと私のことを支えてくれていた。


私を支える蒼大くんの温かい手は、私の不安を和らげてくれるようだった。


夜風が冷たく、頬を撫でるたびに、少しずつ心が落ち着いていくのを感じた。


風の音が静かに耳に響き、心の中のざわめきが少しずつ消えていく。


「少し休もっか、」


遥希くんの声が優しく響いた。

私は頷いて、公園のベンチに腰を下ろした。


「…巻き込んじゃってごめんね、」


私は視線を下げて言った。


惨めな姿を見せたことが恥ずかしくて、目を合わせることができなかった。


「僕のことはいいんだよ。それより、心桜ちゃんは大丈夫?」


遥希くんの声には、心からの心配が込められていた。


その優しさに触れるたびに、胸が締め付けられるような気持ちになった。


「大丈夫…じゃないかも、」


私はつぶやいた。


言葉にしたことで、自分の気持ちが少しだけ軽くなった気がした。


「そっか、そうだよね、」


遥希くんに弱音なんて吐いても意味ないのに、彼はただ静かに頷いてくれた。


その姿に、少しだけ救われた気がした。


どうして、遥希くんの前では素直な自分でいられるんだろう。


「…て、こんなこと言われても困るよね。ごめんね、」


自分の感情を押し付けることが、蒼大くんにとって負担になっているのではないかと心配だった。


「困らない。困らないよ、心桜ちゃん。だから、何でも話してよ、ね?」


と遥希くんは優しく言ってくれた。その言葉に、私は少しだけ安心した。


彼が本当に私の気持ちを理解しようとしてくれているのが伝わってきた。


彼の優しさが、私の心に染み渡っていくのを感じた。


「…柊先輩のことも、咲紀先輩のことも、全部が混乱してて…どうしたらいいのか分からないの。自分の気持ちも、ちゃんと整理できてないし…」


遥希くんは静かに頷きながら、私の話を聞いてくれた。


その姿勢が、私にとってどれだけ心強いか、言葉では表せない。


「二人が仲良くしても、嫉妬しないように頑張るしかないんだけどね、」


嫉妬しちゃうから駄目なんだ。


嫉妬なんてしなかったら、こんなに苦しい思いしないのに、


「それは…無理なんじゃない?」

「え?」


「嫉妬しなくなるって、つまりは好きじゃなくなるってことでしょ?」

と遥希くんは静かに言った。


その言葉に、私はハッとした。


好きだから嫉妬して、悲しくなるんだ。

嫉妬しなくなったらそれはもう…


「心桜ちゃん、無理に抑え込まなくていいんだよ?自分の気持ちを大切にしていい」


その言葉に胸が温かくなり、涙がまた溢れそうになったけど、今度はそれを堪えた。


私の気持ちを理解しようとしてくれる人がいることが、こんなにも心強いなんて。


「遥希くん、ありがとう。今日のことだけじゃなくて、いつも私のことを気にかけてくれて…。遥希くんがいなかったらもっと辛かったと思う」


「心桜ちゃんが少しでも楽になれるなら、それで僕は嬉しいよ」


そう言って、優しく微笑んだ。


その言葉に、私はさらに安心感を覚えた。



彼の存在が、私にとってどれだけ大きな支えになっているのか、改めて実感した。

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