第44話

「心桜が変わる必要なんてないよ、」


違う。そんなことない。


"一人が我慢しないといけないような関係はすぐ壊れちゃうから"


朝陽先輩の言葉を思い出した。


今回の件は私にも非があった。


「私も、もっと素直に気持ちを伝えるべきだった」私は涙をこらえながら言った。


私が我慢すればいいって思ってた。

でも、そのせいでこんな大事に。


「それは、心桜の気持ちに気づけなかった俺が悪い。それに、気持ちを伝えられない雰囲気を作てた俺に責任がある」


柊先輩は自分を責めるように言った。


柊先輩はどこまで優しいんだろうか。


「柊先輩に自分の気持ちを伝えられなかったのは、私のわがままで困らせたくなかったから」


私は目を伏せた。


「困るなんて、」

柊先輩は驚いた表情を見せた。


「それから、本当は怖かったんだ」

私は声を震わせながら続けた。


「怖かった?どうして?」

柊先輩は優しく問いかけた。


「私の気持ちを伝えたら…柊先輩が離れていっちゃうんじゃないかって、思ったから、」


私は涙をこらえきれずに言った。


「そんなわけないよ」


柊先輩はそんなことで離れていったりしないって分かってた。


分かったけど、


「柊先輩のこと、信じきれていなかったんだと思う」

私は涙を拭いながら言った。


「心桜…」

柊先輩の声が優しく響いた。


「今まで、先輩ばかり責めてごめんなさい。こんなことになるなら、最初から自分の気持ちを伝えるべきだった。急に距離置きたいなんて言ってびっくりしたよね」


私は自分を責めるように言った。


「俺が心桜だったら、同じことをしてたと思う。だから、心桜は何も悪くないよ」

柊先輩は優しく微笑んだ。


「私、これからはちゃんと自分の気持ちを伝える。嫌なことは嫌だっていう」


「うん、俺も心桜の気持ちをもっと理解したいし、心桜にも俺の気持ちを分かってほしい」


柊先輩の目には決意が宿っていた。


「私も、柊先輩のことをもっと理解したいし、柊先輩にも私の気持ちを分かってほしい」


私は微笑んだ。


「これからはもっと心桜と一緒にいる時間を作るよ。俺のためにも、心桜のためにも」

柊先輩は優しく言った。


「柊先輩、私たち…まだ間に合うかな、」

私は不安げに尋ねた。


柊先輩は一瞬ためらった後、深く息を吸い込んで言った。


「心桜、俺とまた付き合って欲しい」

柊先輩の声が震えていた。


「ほんとに、私、でいいの…?」


「何言ってるの。心桜じゃないとダメなの」


私は涙がこぼれそうになりながら、微笑んだ。


「こんな私でよければ、お願いします。」


柊先輩は私を優しく抱きしめた。



「ありがとう、心桜。大好きだよ」

「私も、大好き」

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