第38話
数日後。
「今日から風紀委員会に所属となりました、キアラ・ミレニアと申します。宜しくお願いします」
「同じく風紀委員会に所属します、ミレニア家所属のキアラ様の従者であります、フィスです。宜しくお願いします」
パチパチと、ここにいる風紀委員の数人が拍手する。と言うのも風紀委員会に所属している生徒の人数そのものが少ないのだが。ここにいる生徒の人数はネオたち含めて10人ほど。これが風紀委員会に所属している生徒全員である。
「という事で僕が推薦するキアラさんとフィスだ。入れていいよね?」
(こんな気楽に入れていいのか?)
「あぁ」
(……いいんかい)
会長だと思われる生徒が頷き、二人が風紀委員会に所属することが決まった。
「私がこの風紀委員会の委員長、ベラリザ・ローゼンメイデンだ」
「ローゼンメイデン……!」
ベラリザ・ローゼンメイデン。栄えあるこの学園の歴代風紀委員長の中で最強と言われており、その実力は生徒会長にも迫る程だ。それに彼女の実家であるローゼンメイデン家はこの国でも随一の権力を持っている公爵家。その長女でもある。
「まぁ実家があれだが、気にせずベラリザと呼んでほしい。よろしく頼むよ」
「「よろしくお願いします」」
キアラとフィスの二人が頭を下げれば、再度拍手がパラパラと教室中に響いた。それから風紀委員会の生徒一人ひとりが自己紹介を終え、次に話し始めたのは彼らの役職についてだった。
「ネオ、彼らの要望はなんだっけ?」
「なるべく離れたくないんだって」
「……」
(言い方……)
変な言い回しをされたフィスとキアラは何とも言えない微妙な表情をする。そんなことをしている間にも彼らの話は続く。
「だったら第二実行班を新設して二人に入ってもらおうか。今実行班は一つしかないし大変だろう?」
「そうだね」
ネオが素直に頷くと、ベラリザは他の人にも意見を聞くことに。
「どうかな」
「経理などに関してはもう人員足りてるし、実行組だけいなかったからねぇ……いいんじゃない?」
「私は問題ありません」
「私もー!」
「俺も。前に実力見て問題ないって思いましたから」
みんなそれぞれ賛成の意を示していく。毎年風紀委員会では新入生を入れてこなかったために、生徒会から早く新入生の中から風紀委員会に入れろと急かされていたからというのもあるのだが。二人がそんなこと知る由もなかった。
「それじゃあ二人は明日から校内の見回り及び、違法生徒の制圧をよろしく頼む」
「「はい」」
そしてベラリザは二人に最初から用意していたワッペンを渡す。
「これは風紀委員にしかつけることが許されない制服だ。これを無くすことは絶対に許されないからそのように」
「はい」
「かしこまりました」
白い制服を渡された二人は、神妙に頷いたのだった。
それから二つ三つ必要なことを説明した後、キアラとフィスは教室を出ていった。それを見届けた他の風紀委員たちは互いに顔を見合わせる。
「ふぅ……これで生徒会に何も言われなくてもよくなったよね」
「毎年毎年新入生を入れろとばっか言われていたからな……鬱陶しかった」
「入れろと言われてもさ、実力的に無理なもんは無理だったしねぇ」
「だが今年はあの二人がいてよかった。他にも気になった新入生はいたが……」
「あの二人には絶対に劣るよ。絶対に」
ネオはそう強く宣言した。それに対し挑発的な笑みを浮かべる生徒がいた。
「ネオ、本当にそうか?俺にはそうは見えなかったんだけどなァ」
「僕はそう見えた。ただそれだけだよ。それとも何?僕よりも弱い分際で何か言う事でもあるの?」
「……チッ」
「まぁ二人ともいいじゃないか。キアラ様はもちろんだけど、彼も実際強かったし」
「……コーラスが言うんなら、そうか」
二人の模擬戦を見たことのあるコーラスと呼ばれた青年は、大人しくなった自分の友人を確認した後ベラリザの方を向く。
「委員長、今度彼らが模擬戦をしている様子を見てみてください。きっと驚きますよ」
「そうだね。確かにコーラスの言う通りかどうか確かめる必要はある」
「え、僕の言葉は信じてくれないの?」
「ネオ、君は日ごろの発言を見返してみたまえ。それじゃあ今日の定例委員会はこれまで。次の定例委員会で使う教室は別途指示を出すからよろしく頼むよ。それじゃあ解散」
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