第40話
「終わりました、キアラ様」
「お疲れ様。さて、それでなんだけど」
「ひっ!?」
最後の一人となった生徒はさっきまでの威勢は消え失せ、恐怖しか残っていなかった。そんな彼にキアラは傍から見たらまるで聖母のような優しい笑みを浮かべながら、彼に問うた。
「それ、その錠剤。誰から貰ったのかしら?」
「っ……」
「知ってるわよね?私たちミレニア家には、反政府軍撲滅部隊を設立してることも、それは反政府軍が所持していた魔力増強剤と全く同じだという事も。で?もう一度聞くけど、それ、誰から貰ったのかしら?」
「……っ!」
息を飲んだ生徒を他所に、フィスは証拠を見つけるために死んだ生徒の衣類を漁っていた。
その間もキアラの視線は怯え切った生徒に向けられていた。
「で?そろそろ答えてもらわないと、やりたくないけど拷問しないといけないの。
そう言って彼女はそばに鏡を顕現させる。その鏡から強烈な魔力を感じ、生徒の顔は青ざめていた顔を白にしていく。
「でも」
と、キアラは一旦そう置いて、
「もし白状してくれたら、これは使わないかもね?」
「っ!」
少しでも助かる可能性がある。気まぐれのものかもしれないが可能性を見出した生徒はそれで諦めたようで大人しく白状した。
それを聞いていたキアラはどんどん笑みを深めていく。
「こ、これでいいでしょう?お、俺は助けてくれるんですよね……?」
「えぇ。助かったわ」
その彼女の言葉に生徒は安どの表情を浮かべ、
「─────フィス」
「はい」
その表情のまま、彼はこの世を去った。
「これで、分かったわね。この学園にいる、反政府軍が」
「えぇ」
「フィス。やるわよ。今日」
「今日、ですか」
「善は急げ、っていうし」
「……手続きは」
「いらないでしょ。いつものことじゃない」
「……分かりましたよ」
フィスは渋々彼女の命令に従うことにした。これはフィスにとって珍しいことで、基本的に彼女の言う事には即決するのだが、今回は事が事であるのと今から屋敷にいるメンバーに声をかける必要が出てきた。
本当だったらこんなこと許すわけないのだが、結局いつやっても変わらないからと自分を言い聞かせたのだ。
それからフィスはすぐに屋敷へと戻り、その場にいた騎士もとい撲滅部隊の部隊員に部隊長としての命令を下す。
「キアラ様から、オーダーが入った!今日の深夜に決行する!」
「「「「っ!?はっ!」」」」
突然フィスが帰ってきたと思ったらそう告げたのだ。その場にいた騎士やメイド、召使は一瞬驚くもすぐに自分の役割を果たさんと動き始める。この時点でキアラは明日休む旨を担任に伝えていた。
この学園においてキアラが撲滅部隊に所属していることはかなり知られている。が、フィスも所属していることは学園長などの一部の者しか知らない。しかし担任には特例として伝えてあるため、スムーズに手続きが進んでいった。
これで明日はフィスとキアラは公的に休む許可が出た。
そして、夜。
「フィス」
「はっ」
「標的は」
「“塾”です」
「みんな、聞いたわね。対象は“塾”と言われる、学習小屋。情報だと平民らに対して魔術や勉学を教えている学校のようなものらしいけど、実際は裏で反政府軍への勧誘及び隠れ家として機能していたらしいわ。それも今日で終わらせる」
そう言って彼女は鏡を自分の傍に顕現させる。そして“塾”目掛けて一つの魔術を放った。
「
瞬間、“塾”の中にいくつも点在した赤い点が出始める。この点は彼女と撲滅部隊にしか見えないようになっており、対象は反政府軍の構成員だ。
本来この魔術は透明になった敵などに対して使うものだが、キアラの魔術は過去の情報を取得しそれを照らし合わせてこの魔術に反映させている。その為例え誰が反政府軍か知らなくともこうしてオートで判別してくれるのだ。
「やっぱりこの魔術と私の
「……キアラ様、それでも十分だと思います」
部隊員の一人が呆れたようにそう言うと、他の隊員も同意するように頷く。しかしキアラもそんなことなど分かっていたようで、愛想笑いを浮かべた。
「分かってるわよそんなこと。そんじゃ、軽口も叩いたことだし行きましょうか」
その一言で緩んだ空気が一瞬で引き締まる。
「撲滅部隊、対象は反政府軍の根城、“塾”。命令はただ一つ─────殲滅あるのみ!行くわよ皆!総員、出撃!」
「「「「「はっ!」」」」」
そして一斉に彼らは乗っていた“塾”の屋根をぶっ壊したのだった。
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