第44話
「以上が報告となります」
「ご苦労」
制圧を終えて、荒れていた闘技場など全てを片付けたフィスたちは一度集まって報告を済ませる。
今回の騒動はレインハルト派の生徒によるものと断定され、近くレインハルト本人にも話を聞くことになるだろう。
「それにしても……」
風紀委員長、ベラリザが難し気な表情で今回起きた事件を振り返る。そこにあったのはただただ純粋な疑問だった。
レインハルト派に反政府軍に与していると疑惑を持たれている貴族が多く所属していることは知っていた。だがしかし、こんな分かりやすい事件を果たして起こすだろうか。
(もしかして……これは陽動?だとしたら─────)
彼女の頭の中で一つの可能性が浮かび上がる。それは想像したくない可能性だった。
「─────既に学園内に侵入されているかも」
「「「「っ!?」」」」
フィスがボソッと言ったその言葉にこの場にいた全員が驚愕に目を見開く。主語が抜けていたが、間違いなく想像したものは同じだった。
あまりにも大きな騒ぎを速攻で抑えたことはよかっただろう。でないとこれ以上被害が起きただろうから。
「すぐに学園内を調べろッッッ!!!そしてもしいたのなら─────殲滅するんだ!!!」
「「「「はっ!」」」」
風紀委員会の全員が一斉に走り出す。焦りを胸に抱えながら、そして何事もないことを願いながら。
フィスは走りながら魔術で異質な魔力が無いか横切った人全てを調べる。
「フィス!」
「お嬢様、俺はこっちに行きます!」
「ええ!」
途中キアラと別れ、ついでに体も魔術で強化し更に走る速度を上げる。もしも、もしもこの中に反政府軍がいたとしたら。
(……絶対に、殺す)
そうして走り続ける事20分ほど。
「っ!?」
突如大きな爆発音が学園中に響く。この爆発音は魔術と魔術がぶつかり合った時に生まれる音で、少しの金属を引き裂く音も含まれていた。
それが聞こえた瞬間、フィスは即座に音が鳴った方向を察知し、そこに向けて魔力探知の魔術を放つ。
(あれは─────委員長!)
ベラリザの魔力と学生のとは違う異質な魔力がぶつかり合っているのを察知できたフィスは、
「強化術」
最大出力の強化術で、地面に踏み込みで足跡ができるほど力み─────飛び出した。
いくつもある曲がり角を壁を蹴ることで無理矢理方向転換して進んでいく。
「わっ!?」
「な、なにっ!?」
一瞬黒い影が見えた生徒らは驚きのあまり一瞬だけ動きを止める。それが幸いしたのか、もしくはすんでのところでフィスが避けているのか、怪我人を出すことなく現場に到着することができた。
「フィス!こいつだ!」
「はい!」
「ちいっ!」
フィスの姿を確認したベラリザが更に魔術の出力を上げる。しかし敵もそれに対抗すべく同じように出力を上げた。
「
威力が信頼できるフィスの魔術によって敵の首筋にツーっと細い線が見え始める。
「っ!」
「チッ!外した!」
「フィス!もっと攻撃を加えろ!私がサポートする!」
「はいっ!」
そして魔術が発動した直前で敵はそれを察知ししゃがむことでなんとかそれを避ける。だが、
「─────闇沼」
「っ!?」
ベラリザの魔術により敵の足元に黒い沼が出現し、足を捉える。この黒い沼は
しかしこの男にはそれがなかった。故に─────
「
「ッッッ!!!」
男に備わっていた第六感が猛烈な警報を告げる。このままだと自分は首を斬られて死ぬ。
(そんなことはできない……!)
時間稼ぎをしてくれた仲間の為にも─────そう覚悟を決めた男はフィスの魔術が発動する直前に、
「っ!それは!」
「がっ!?」
懐から取り出した小さな玉三個を一気に飲み込んだ男は次の瞬間、足を捉えていた闇沼を魔力だけで弾き、
圧倒的な魔力で成せるそれらに、二人は思わず動きを止めてしまった。その間にも男は新たな魔術の準備をし始める。
(まずいな……─────あ)
強烈な魔力と、魔術の気配に二人は守りを固めようとするが、それをすぐに止めた。新たな気配を、上空から感じたからだ。
「もう諦めたか。は、ははは……これでお前らは─────」
「─────
その一言で、この場にある全てが変わった。
男の頭上から降り注がれた、巨大な白雷が一瞬にして黒焦げにし、その余波でフィス達がいた場所ギリギリまで地面を黒一色に染め上げたのだ。
当然、男の意識は消え去り、永遠に戻ることは無かった。
「……まさか、彼女がここに来るなんて」
これほどの事を成せる者は限られている。
その成せる者の一人、
フィスと一度対峙した彼女が、彼達を助けたのだ。
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