第13話 ルミナの秘密
ルミナが仲間に加わり、改めて魔王退治の旅を再開。
とはいえ、私たちが現在いる大陸は魔族が少ない平和なところであるため、なんともまあ、のんびりトコトコ進んでいる。
馬車に揺られながらうとうとしていると、ルミナが仏頂面で話しかけてきた。
「ムクロ、お前だれに魂を汚染された」
「闇堕ちってこと? さあ? 覚えてないんだよね」
「覚えてない?」
「面倒を見ていた孤児の子供たちが殺されて半分闇堕ちしたらしいんだけど、記憶にないの」
「……変なやつ」
まるまる一年の記憶がないのだ。
そこに誰がいて、何を話して、どう暮らしていたのか、まったく思い出せない。
「なんでそんなこと聞くの?」
「お前、俺と戦っているとき急激に強くなっただろ。普通の闇堕ち程度で人間があそこまで強くなることはない。きっと秘密がある」
「ふーん」
「魂の汚染が可能なのは上級以上の魔族だ。けれど、人間が汚染されたところで得られる力は、その魔族の一〇分の一以下が普通なんだ。なのにお前は、上級クラスの力を持っていた」
私を闇堕ちさせた魔族がそれくらい強いのか、それとも私の才能なのかな。
闇堕ちの才能ってなんだ?
そういえば、とシャロンも質問してきた。
「記憶がないって、一年間まるまるですか?」
「うん。派遣先の街についてからきっかり一年だね」
「となると、意図的に記憶を消された可能性がありますね。異能か魔法か不明ですが」
「あ〜、確かに綺麗に一年分の記憶がないって、ただの記憶喪失にしてはおかしいもんね」
「医学的なことは詳しくないですが、おそらく」
「じゃあそいつが、ケフィシアの宝玉を奪ったのかなあ」
ちなみにルミナには宝玉のことを話した。
望めば大勢の人間や魔族を消せるほどのパワーを持つ玉だって。
かなり興味を抱いたみたいだった。
「今度は私の番。ねえ、ルミナの家って魔族界隈でも有名なの?
「有名? 有名どころじゃないさ」
「?」
「俺の親父は魔王だ」
「……はい?」
「だから、俺の親父は」
「親父は?」
「魔王だ」
「えええええええええ!!??」
ま、まままま、マジィ!?
シャロンもびっくりしてるよ。
「え、だって魔王に従ってないって」
「親父というだけで、尊敬も憧れもしていない。俺は俺の自由に生きる」
「もしかして家出少年? 私たち魔王倒すんだけど……」
「どのみち、力をつけたら帰るつもりだったしな。親父を殺して、俺が次の魔王になる」
わ、私より小さいのに夢が大きいなあ。
待てよ? 私はルミナを倒してる。
なら実は、魔王もそんなに強くない?
って、そうだったら騎士団も苦労しないか。
「仲悪いの?」
「別に。良くも悪くもない」
「ふーん」
反抗期なのかな。
親孝行とかしたことあるのかな。
「俺は強くなって魔族の頂点に立つ」
「なんで?」
「頂点に立ちたいからだ。女にはわからねえだろうな」
うわ、女性差別。
チビのくせに生意気だぞ。
そういえば、ビムも割と一番に拘っている気がする。
俺は一番根性があるんだぞ、ってさ。
男ってそういうもん?
「ムクロさん」
「なに、シャロン」
「いまのうちに忠告しておきますけど、ルミナさんが魔王のご子息だということは、絶対に他言無用ですよ」
「わかった」
「ぜっっったいですよ。でないと、即刻離れ離れになりますからね」
「わ、わかってるよ。せっかく仲間になったんだし」
「不安です。ちなみに断言しますけど、魔王の一族だとわかってて仲間にしたことがメールー教会にバレたら、ムクロさんとビムくんだけでなく、二人の家族や親戚まで処刑ですからね」
「ええ!? ぜ、絶対言わないよ!!」
「まあ嘘ですけど」
「嘘なの!?」
「けれどそれくらい注意してくださいね」
「は、はい」
これからはちゃんと嘘だってつくよ。
半分だけ闇堕ちしてる悪人だしね。
私たちの会話を聞いていたルミナが笑った。
「今からでも降りてやろうか?」
「降りちゃダメ!!」
よしわかった。
忘れよう、ルミナの秘密。
そしたらつい口を滑らせることもないでしょ?
「ところでシャロン、次の目的地は?」
「グーレの街です」
「……え」
「なんですか?」
「グーレの街って……私が派遣されたとこ」
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※あとがき
次回から新章です。
シャロンがヒロインの章です。
ていうかシャロンが主人公の章かも。
もちろんムクロちゃんも大活躍します。
よろしくお願いしますっ!!
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