第12話 4人目!!

「本当にありがとうございます。騎士御一行様」


 気を失っているルミナを縛り上げたあと、村長たち村人が集まってきた。

 聖女のヒュイも一緒だ。


「あの、ムクロさん」


「ん?」


 ヒュイは頬を赤らめながら、私を見つめた。


「助けてくださりありがとうございます」


「いいのいいの。へへへ」


「お姉様と呼ばせてください!!」


「へ?」


「私のお姉様になってください!!」


 そ、そんなキラキラした瞳でグイグイ来られても。

 私には既に妹がいるし。


 はははと苦笑いでやり過ごしていると、シャロンがルミナの側で蹲った。


「それにしても、絶眼の持ち主でしたか」


「知ってるの?」


「一部の血筋にのみ現れる力です。魔族のなかでも、格式高い家柄で生まれたようですね」


「ふーん」


 村長曰く、このあとルミナを処刑するらしい。

 生首を村の入り口に置いて、他の魔族への脅しとするのだ。


 だけど、


「ねえ、ビム、シャロン、ちょっと話がある」


 二人を村長たちから離れたところに連れ出す。

 まずはビムに耳打ち。

 案の定、ビムは目を見開いて驚いた。


「正気かムクロ!! いくらなんでもあいつはヤバいって!!」


「だって気に入ったんだもん。仲間にする」


「気に入ったって……まさか、恋!?」


「へ? あはは、違うよ〜。なんか面白そうじゃん、あいつ」


「な、なんだ。違うならいっか。……って、よくない!! あいつは純粋な魔族だぞ? 仮に仲間にしても、絶対裏切るに決まってる」


「そうかな〜。どうしてもダメ?」


「うっ!! ムクロにどうしてもと言われると……シャロンさんはどう思うっすか?」


 うーんとシャロンが考え込む。

 シャロンまで反対するなら、諦めるけど。


「気に入ったから、ですか。私も同じ理由で仲間になっている以上、とやかくは言えません。しかし大前提として、彼が申し出を受け入れるでしょうか」


「無理かな?」


「そうですねぇ、私が試してみます」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 シーラ村を出発し、私たちは馬車で次なる目的地へ向かった。

 その道中、野原で休憩をしていると、


「起きたようですね」


 ルミナが馬車の荷台から降りてきた。

 どういう状況なのか、まったく理解できていない様子。


「な、なにがどうなってる……?」


「本当はあの村で殺されるはずだったんだけどね、シャロンが『魔族は大きな教会で処刑しないといけない』って嘘ついてくれて、連れ出した」


「は? 意味わからん」


「私たちの仲間になってよ」


「…………………………なんで?」


 ごもっともな質問されちゃった。


「なってほしいと思ったから」


「だから理由を言えよ」


「理由? うーん、なってほしいと思ったから?」


「こ、こんなバカに負けたのか俺は……」


 呆れたビムが代わりに説明してくれた。


「ムクロは直感というか、本能で決断するタイプなんだ。闇堕ちする前からそのきらいがあったけど、闇堕ちしてから特に顕著で」


 闇堕ちは闇堕ちでも、半分闇堕ちね。

 だって、ビビッと来たんだもん。まさに本能が選んだ感じ。

 もしかして、これが恋ってやつなのかな? 一目惚れ? うーん、違うような気がするけど。


「だいたい、何なんだよお前ら」


 ビムが口を開く前に、私が答えた。


「ケフィシアの宝玉を回収して、魔王を倒すパーティー」


「お、おいムクロ!! 正直に言わなくていいんだよそういうのは!!」


「あ、ごめん」


 嘘つくの苦手なもんで。

 というか、聖女は嘘をついてはいけないって、小さい頃から教え込まれていたもんで。


 ルミナが大仰なため息をついた。


「俺は魔王なんぞに従っちゃいない。戦えと言われたら戦う」


「え!? じゃあ!!」


「だけど、お前の仲間になる義理なんてこれっぽっちもないね。俺には俺の目的がある」


「なにそれ」


「この世で最も強い魔族になり、新たな魔王になる」


「へー、子供っぽい」


「てめえ!!」


「あはは、ごめんごめん」


「ムカついた。絶対に仲間になんてなるか。だいたい、純粋な魔族が人間と仲良くするなんて、恥もいいとこだぜ」


 困ったな。

 そこまで拒絶されちゃうと、無理強いもできないかな。


 半ば諦めかけていると、シャロンが口を開いた。


「すでに恥では?」


「あ?」


「闇堕ちした程度の人間に負けて、おまけに命を救われた。……魔族としては充分恥ですよね?」


 ちょちょちょ、なに挑発してんのシャロン!!


「なのにその恩を仇で返すなんて……『小物』というか、『器が小さい』というか、まあ実際、『子供』のようですし」


「俺が小物だと!? ふざけんな、そもそも助けてくれと頼んだか? 俺が!!」


「くすくす、あそこで、あんな小さい村で処刑されて、晒し首にされるなんて、ふふふ、それこそ末代までの恥ですよ。そっちの方が良かったですか?」


「くっ!!」


 おお?

 なんかルミナが悔しそうに歯を食いしばってる。

 プライド高いんだろうな。シャロン曰く、お坊ちゃま魔族らしいし。


「私たちの任務が終わったら自由です。それまで付き合ってもいいんじゃないですか? それに、少なくとも私と一緒にいることはメリットになりますよ?」


「なんのだよ」


「眼精疲労回復の魔法が使えるので。絶眼を使いすぎても問題ありません。九時間熟睡した日の朝みたいなスッキリお目目になりますよ」


「……」


「これも修行だと思って。ね? 強くなりたいんですよね?」


「……ちっ。わかったよ。どうせ俺はそこのバカに負けたしな。従えばいいんだろ」


 わわ!!

 すごいシャロン。上手くいったよ!!


「よろしくルミナ。私はムクロ」


「バカで充分だろ」


「じゃあルミナのことはチビザコって呼ぶね」


「はぁ!? ふざけんなバカ!!」


「ふざけてないよザーコ」


「こ、こいつ〜」


 なにはともあれ、ルミナが仲間になった。

 これで四人。目指すは魔王討伐。浄化作業!!


 あと宝玉か。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※あとがき


メインキャラはこの四人です。

女二人、男二人。ドロドロしそうですね。


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