第18話 ジュナチネ

※前回までのあらすじ。


強大な力を秘めた宝玉を探しつつ、浄化の旅を続けるムクロたち。

宝玉の手がかりを掴んだものの、大事な仲間のシャロンが突然いなくなってしまう。

復讐相手を殺すため、都市ジュナチネに向かったと推察するムクロ一行。


だが同時に、最強の戦闘集団スヴァルトピレンも、同じく宝玉を狙っていると知るのだった。



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※本編






 なんとか無事にジュナチネに到着した。

 ロンド派が支配する主要都市。私とビムの故郷キウイスと変わらない面積と人口を誇っている。


「街、静かだねビム。お祭りは今夜でしょ?」


「ロンド派流ってやつさ。本番ではっちゃけるためにエネルギーを溜めているんだよ」


 祝福祭。ベル派では感謝祭と呼ばれているメールー教のイベント。


 マスクで顔を隠して、飲んで歌ってはしゃいで踊ってを一晩中やるのだ。

 もちろんこれはロンド派のやり方。ベル派は違う。

 そもそもベル派は昼間に行う。


 祭りの起源は一緒でも、祝い方に差があるのだ。


「えーっと、とりあえずシャロン探そっか。マリアンヌの近くで待っていればいいのかな」


「マリアンヌ様は大聖堂で休んでいると思うぜ。夜の賛美歌や、明日の共同礼拝に出席するはずだから」


「詳しいね」


「こういうイベントに参加する有名聖女の仕事なんて、だいたい決まってるだろ?」


「そっか」


 てことは、大聖堂に向かえばいいんだね。

 と歩き出そうとしたとき、


「やめた方がいい」


 ルミナが私の腕を掴んだ。


「ロンド派は魔族嫌いが多い。まして、大聖堂にいるような信仰深いヤツはな。近づいた時点で追い出されるのがオチさ」


「でもそうしないとシャロンが」


「あいつだってバカじゃない。俺たちが問題を起こして騒ぎになれば、警戒して大聖堂から離れる可能性だってある。いま優先すべきは宝玉。スヴァルトピレンを倒すことだろ」


「……ルミナがそうしたいだけでしょ」


「あぁ」


 むっ、素直なやつ。

 宝玉よりもシャロンでしょ、優先するのは。


「俺もルミナに同感だぜムクロ」


「ビムまで」


「勇者もこの街にいるかもしれない。たぶんだけど、お母さんに会おうとするはずだ。一番最悪なのは、鉢合わせして喧嘩売られるパターン。シャロンさんを探している場合じゃなくなるよ。ムクロ、勇者にそうとう恨まれているだろうし」


「そっかな」


「あと、いまさらだけどさ、シャロンさんがこの街にいる確証がないだろ? 十中八九シャロンさんも、勇者がジュナチネに向かっていることは覚えている。おそらく母のマリアンヌ様に会うだろうと予想して、警戒している」


「うん」


「なら、大聖堂じゃなくて、マリアンヌ様が祭りの後、街を離れて馬車で帰っているタイミングを狙うのかもしれない。つまり、ジュナチネじゃなくて、ジュナチネの周囲のどこかにいるかもしれないんだ。だったら、確実に行われる宝玉の取引に力を入れようぜ」


「うーん」


 よくわかんないけど、それじゃあ私たちは無駄足だったのかな。


「もしシャロンさんがピンチになったとき、宝玉があれば切り抜けられるかもしれないだろ? 宝玉パワーで勇者を倒したり、宝玉を渡して見逃してもらったり」


 確かに、それはそうかも。

 シャロンは頭が良すぎて、何を考えているのかわからないから。


 もう一度通信具で通話をかけてみる。

 やっぱり出ない。


「大丈夫。シャロンさんはそう易々と死んだりしない。追っかけていれば、必ず会えるさ。現に、グーレの街にいるよりは、シャロンさんに近づいているだろうしさ」


「……わかった。ビム、ありがとう」


「えっ!? な、なにが!?」


「私を止めてくれて。私、考えなしに行動しちゃうから」


「あ、いや、別に……。っても、肝心の宝玉の取り引きについてなんにもわからないんだよな。どこでやるかとかさ」


「え? そんなの、ルミナみたいに調べればいいじゃん」


「ルミナみたいに?」


「下っ端をとっ捕まえて聞き出す」


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 ワルワル団と取引するのは、ジュナチネで暗躍するギャング、アクアク団。

 戦力も悪さもワルワル団より上らしい。


 地元のヤンキー曰く、メンバーは腕にドラゴンの刺青をしているとのこと。




 日が沈む。

 人々がロウソクや松明に火をつけて、路上で酒や肉を楽しむ。

 誰かが楽器を鳴らし、そのリズムに合わせて踊って、歌って。


 私たちはジュナチネでも特に治安の悪い地域へ向かった。

 ここは本当に無法地帯。騒ぎに浮かれて建物を破壊しまくったり喧嘩をしていたり。


 まったく、これのどこが祝福なんだか。

 ただ暴れる理由にしているだけじゃん。


「いた、ドラゴンの刺青」


 酒を片手に、偉そうに歩いてる。

 周りにいるのは子分かな?


「よし、行ってくるね」


「ほ、本当に大丈夫かムクロ」


「へーきへーき」


 ワザと彼らの目につくように、怯えた演技をしながら路地裏に入る。

 いかにも、弱そうな女って感じで。


 すると案の定、


「ひひひ、仕事前に楽しんでやるぜ」


「けけ、アニキ、俺たちも混ぜてくださいよお」


 私を追って、彼らが来た。


「お嬢ちゃん、ダメだぜえ? ひとりでこんなとこで歩いちゃあ」


「そうなの?」


「俺たちみたいなのに、弄ばれちゃうぜえ?」


「ところでさ、あんたらはアクアク団のボスかなんか?」


「……は?」


 と、ここらでビムとルミナがやってくる。

 ちょうど、挟み撃ちの形になったわけだ。


「な、なにもんだてめえら!!」


「大人しく話してくれたら、乱暴はしないよ。気絶はさせるけど」


「な、なめてんじゃねえぞガキが!! いくぜお前ら、ドラゴンフォーメーションだッッ!!」



「「了解!!」」


「うおおおおおッッッッ!!!!」









 そんなこんなで、無事怪我もなく情報収集完了。

 こいつらは単なる下っ端だった。


 で、肝心の取引場所は街外れの墓地。

 時刻は、午前〇時予定。


 そこに、ケフィシアの宝玉がくる。





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※あとがき


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