第20話 祝福祭・表
※本編前のキャラ紹介
・ムクロ……主人公。少し荒っぽいだけの半分闇堕ち聖女。イライラすると完全に堕ちして暴走する。浄化のために冒険中。
・ビム……ムクロの幼なじみ。頼りないけど根性はある。ムクロが好き。
・シャロン……魔族と人間のハーフ。魔法が得意な女の子。一族を虐殺した仇への復讐を誓う。
・ルミナ……魔王の息子。チビで生意気だけどそこそこ強い。
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遠くから花火の音が轟いてきた。
二三時を超えて、ジュナチネの中心でパレードがはじまるのだ。
まったく、子供は寝る時間だってのにいつまでもお祭り気分で。
「ムクロ、気を抜くなよ」
「うん」
墓場付近にある巨木の陰に隠れて、取引を見張る。
まだワルワル団しか集まっていない。
それでも、三〇人ぐらいはいるだろう。
ちなみにこっちは私とルミナの二人きり。
ビムは逃走用の馬を用意して待機している。
「来たな、アクアク団だ」
腕にドラゴンの刺青を入れた集団がやってきた。こっちも四、五〇人はいる。
ワルワル団のボスが前に出た。
「さっそく始めましょうか」
アクアク団のボスらしきおじさんが、タバコの煙を吹いた。
「ブツは?」
ワルワル団の一人が袋から透明な玉を取り出した。
見たところ、普通のガラス玉。
「あれがケフィシアの宝玉なのかな?」
「間違いない。お前や普通の人間には視認できないだろうが、俺の絶眼には映っているぜ。あの玉が放つ、微弱ながらも禍々しい聖なる力がな」
「そっか、絶眼はあらゆる力を見抜くんだもんね。じゃあ本物なんだ」
ワルワル団は宝玉を地面に置くと、用意したハンマーで思いっきり叩いた。
が、宝玉は割れるどころか、逆にハンマーを振った団員をふっ飛ばしたのだ。
「見ての通り、ただの玉じゃない」
「よし、取引開始だ」
アクアク団が札束の詰まった麻袋を二つ見せる。
私たちが飛び出すのは、取引終了後。アジトに戻り、アクアク団が油断したタイミングだ。
「ねえムクロ、アクアク団は宝玉を手に入れてどうするんだろう。選ばれし者しか使えないんでしょ?」
「アクアク団の支配地域は意外と広いからな、自分たちの船で海を渡って、さらに高額で売買できるのさ」
「ふーん」
さあ宝玉と金の交換がはじまる。
そのときだった。
「ボス!! 上!!」
四人の人影が上空から降下してきた。
いるだけで圧倒されるほどの存在感を放つ、不気味な連中。
「あ、あのときのメガネの女!! たしかエルヴ」
「静かに。来やがったな」
「スヴァルトピレン」
エルヴの他には、ガリガリの男と、斧を担いだ大柄な男、それとちょっぴりイケメンな若い男。
あのボサボサ髪のレクフルへートはいない。
動揺している両組織に、エルヴが告げる。
「選びなさい。死ぬか、大人しく宝玉を渡すか」
「な、なにもんだてめえら!!」
ギャングの下っ端たちが剣を抜く。
瞬間、エルヴは目にも留まらぬ速さと手刀で、近くにいた下っ端どもを瞬く間に殺していった。
腹を貫き、首を裂き、まるでナイフのように鋭い手刀を、赤く染めていく。
「見ての通り、力の差は歴然よ。運が悪かったと諦めることね」
うーん、本当に人間かよあいつら。
下手な魔族より強いじゃん。
そんなのが四人もいるのか……。
すると、ワルワル団のボスが、
「へ、へへへ、欲しけりゃくれてやるよ。命には変えられねえからな」
「おりこうですね」
「必死こいて探してろ!!」
同時に、部下たちが一斉に大量のガラス玉をばら撒いた。
どれもこれも透明なガラス玉。ケフィシアの宝玉と瓜二つだ。
取引相手のアクアク団もこれにはビックリ。
ワルワル団たちは散り散りに逃げていく。
アクアク団のボスが叫んだ。
「くそっ、てめえら、絶対に探し出せ!! 探してから逃げろ!! 大金のタネだぞ!!」
部下たちは大慌てでガラス玉を回収し、それぞれ逃げ始めた。
こ、これじゃあ誰が本物の宝玉を持っているのかわからない。
しかもどんどんいなくなっていくし。
イケメン男が冷静に指示を下す。
「エルヴとヴレーデで散った連中を始末し、玉を探せ。ローガはワルワル団のボスを殺れ。俺はここに残っている落ちている玉を調べる」
「「「了解」」」
エルヴと
「くっそ〜、これじゃ宝玉手に入らないよ」
「そうでもないぜ」
「へ?」
「俺の絶眼は、しっかり本物を追っていた」
「そっか!! その目ならわかるんだもんね!!」
同じような玉がいっぱいあっても、バッチリ見分けられるんだ。
「ワルワル団のモヒカン頭の手下が、本物を持っている」
え、つまりワルワル団は大量の偽物だけをばら撒いて、本物は自分たちで所持したまま逃げたってこと?
んで、アクアク団は偽物だけを拾っていると。
「そいつはどこへ逃げたの?」
「俺についてこい」
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墓地から少し離れた空き地で、私たちはモヒカン手下に追いついた。
「あんたが本物持っているのね」
「ひぃ!! なんでわかったんだ!!」
「さっさとよこしなさい。熱風攻撃!!」
アチアチに温めた空気を放ち、モヒカンをふっ飛ばす。
ルミナの言う通り、彼の手には透明の玉が握られていた。
問答無用で奪い取る。
瞬間、
「ぬわっ!!」
私の全身にビリビリと痺れる感覚が走った。
なんだこれ。宝玉の力か? そんなに痛くないけど……。
とりあえずルミナに見せる。
「間違いない、ケフィシアの宝玉だ」
「よし、騒ぎに乗じてなんとか手に入ったね。ワルワル団ナイス!!」
「スヴァルトピレンに見つかる前に去ろうぜ」
「うん!!」
と、ビムが待機している場所へ向かおうとしたとき、
「ほう、どうやってパチモンと見分けたんだ?」
ローガと、イケメン男が、そこに立っていた。
「な、なんでここに!?」
大柄のローガがニヤリと笑う。
「気づかねえと思ってたのかよ、てめえらの気配。しっかり注意していたんだぜ」
「マジ?」
「そしたらてめえら、妙に確信持った顔で行動するもんだから、フォーゲル隊長が命令を変更したんだ。てめえらを追えってな」
やばい。
けど、向こうだって二人。
それに玉は私たちが持っているんだ。
倒せなくても、どうにか逃げるくらいはできるはず。
けど、その前に。
「あんたが、スヴァルトピレンのリーダー」
イケメン男、もといフォーゲルに問う。
「へえ、俺たちを知っているんだ。そうだよ、俺が隊長。君は……たぶん元人間かな?」
つまり、こいつがシャロンの仲間の虐殺を実行した主犯格。
「ちょっと質問」
「ん? なに? 地理の質問なら勘弁してよ。土地名覚えるの苦手なんだ」
「なんで、殺し屋なんかやってるの?」
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※あとがき
お、お、応援よろしくおねがいします……。
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