ヴィラン

本作は「離人症性障害」という精神疾患を診断された忍夜景さんが「ヴィラン」という薬と出会ったことをきっかけに、物語が展開していきます。

離人症性障害という疾患の精神描写も緻密で、「ヴィラン」という薬の存在や彼を取り巻くクラスメートや医師などといったさまざまなキャラクターとの関係性・設定なども細やかで、ミステリアスだけどどこか現実的な部分もあり引き込まれます。

おすすめの作品です✿

ご都合主義のようなものがなく、作中の全てに意味を持たせられている構成力に感服しました。
最初は謎ばかりに思えますが、気付いていた謎も気付かなかった謎も、物語の進行とともに徐々に開示され、それがまた物語に深みを与えています。
その上で、丁寧に人間が描かれており、一人一人のキャラクターの魅力が引き立っています。

じっくり考えながら読書を楽しみたい方に是非おすすめしたい作品です。

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（187文字）

「事実は小説より奇なり」
最近は、理解出来ない言動の人が多い。依存症、偏執狂。
アナザーワールドの人と思うしか、割り切る方法はない。

主人公は精神疾患である離人症性障害を診断された忍夜景。
その疾患により、自身が自身で無いような感覚に陥ることがしばしば。
精神科に通い、友人の助けもありどうにか日常生活を送ることが出来ている。
そんな中怪しげな人物と出会い、ヴィランという薬を渡される。
タイトルにもあるこのヴィランを服用すると……


登場人物の描写の随所にミステリアスな雰囲気が散りばめられています。
離人症の他、悪魔や統合失調症、美少女転校生などの物語のカギとなりそうな存在もあり次はどうなるんだろうとハラハラします。

カテゴリは現代ファンタジー。どこまでが現実にあり得る描写なのか、ファンタジーな要素なのか不思議な感覚にも…続きを読む