夢の中のルールを理解しながら攻略していくような流れは、ゲーム的な楽しさもあり、読者に「次はどうなるのか?」という興味を持たせる構成になっています。
恐怖の要素があるものの、主人公がどこか余裕を持って受け止めており、「夢だから大丈夫」と楽観的な姿勢を見せつつも、徐々に違和感を覚えていく流れが面白いです。
特に、ゾンビの種類を見極めたり、戦闘に備えたりするあたりは、ゲームのプレイヤーのような感覚で動いており、読者にも「こういうゲームをプレイしている感覚」を共有させる工夫が感じられました。
ホラー要素として、暗い通路、不気味な蛍光灯の点滅、異様なゾンビの描写などがしっかり盛り込まれており、読者に不安感を抱かせる演出がされています。一方で、ゾンビの動きや追いかけ方がややコミカルに表現されている部分もあり、シリアス一辺倒ではないのが読みやすさにつながっています。
また、主人公の身体能力が高いため、絶望感よりも「どう切り抜けるか」というゲーム的なワクワク感が強いのも特徴的です。
主人公(女性)が明るいキャラなので、最初は「軽い感覚で読める転生ものかな?」って思っていました。
回を重ねると、あら不思議。読めば読むほど、神話ベースの設定の奥深さと、しっかりとした重厚な展開を味わえます。
とはいえ主人公は一貫して変わらずポジティブで、舞台も日本がベースのため、サクサクと読み進めることができます。
和洋折衷な神話系の話を屋台骨に、術式関連やバトルには科学的な要素も詰め込んでいたり、読み応えもバッチリ。
序盤は主人公の知識がゼロベースで進む、世界観や設定、状況を読者と一緒に把握していくスタイルです。何なら、主人公の名前が判明するのも結構後です。
その辺りの把握が済んで物語が本格稼働するのは序章後半〜からで、それが人によってはスロースタートな印象を持たれるかもしれません。作品の全体像を掴み切る前に1、2話で手を引く人もいるかもしれないと思うと「ここからが面白いのに勿体無い……」の一言です。
物語が進むにつれて味わい深くなっていくので、是非とも腰を据えてじっくり読んで頂きたい作品です!
主人公は「寝ているときに夢を見ていると気付ける」タイプ。
だから今回も、ゾンビが襲ってくるパニック映画のような世界に入り込んでも、「お、これは夢だな」と余裕の構え。
でも読者は主人公より先に気付きます。
多分これ、夢じゃないよって・・・
思えば最初からおかしかった!
ずっと『私』とカギかっこ付きの一人称。
しかも本作のタイトルは『おいでませ神様のつくるミニチュア空間へ』。
これらが意味するところは?
主人公が夢だと思い込んでいて深刻にならないので、ハードモードの世界観でもスラスラ読めます。
真実を知った時、主人公はどう考え行動するのか?
ハラハラしながら読み進めましょう!