Karte14 パラノイア
「またクラスの男子に執拗に話しかけられたりしてない? いつでも言ってね」
「ありがとう。大丈夫…でも視線がすごく気になる」
零花は、けっ! と睨みつけるな目で男子を追い払った。
「やだねぇ本当に…一緒に帰ろう」
「う、うん」
瑠璃羽は学校を転々としていたため、初めて友達が出来たような気がして嬉しそうに返事をした。
「越知さんて、趣味とかある? お家帰ったら何してるの?」
「読書…が多いかな?? 丸河さんは?」
「読書!? 零花でいいよ!」
「じゃあ…わたしも瑠璃羽で」
「あたしも読書好き! 読書ってどんなの読むの??」
話しながら、校門の手前に差し掛かった頃だった。
「あっ…読みかけの本、教室に置いてきちゃった。取ってくるから門で待ってて!」
そう言って瑠璃羽は教室に戻っていった。
「あれぇ?? 瑠璃羽ちゃんじゃーん」
「誰ですか?」
「酷いなぁ、クラスメイトの顔忘れたのぉ?」
いつも執拗に話しかけてくる男子生徒三名がニヤニヤしながら寄ってきた。
「何か用ですか?」
「いいからちょっとおいでよ」
そう言って男子生徒の一人は瑠璃羽の手を掴んだ。
「やめてください」
「いいから大人しく付いてこい!!」
無理矢理に掴まれた手を解こうとしたが、男子生徒の力には到底叶わない。
「今日は病院の日だった。早く行かないと…」
病院に行く予定だった景が、教室から出るとき瑠璃羽が引っ張られていく姿を目撃したのだった。
「あれは…越知さん? クラスメイトたちと一緒だけど、手を引っ張られていたような??」
景はそっと尾行することにした。
「ほら、こっちだ!」
「いや! どこに連れて行くの!?」
連れて行かれた先は、校舎の奥側にある今は使われていない教室だった。
「君が瑠璃羽ちゃん? 可愛いねぇ」
「なんですか?貴方…」
景はすぐにわかった。
明快と殴り喧嘩した隣のクラスの男子だった。
それ以外にも同じクラスの男子が三人。
「君、俺様のオンナにならない? スタイルも良さそうだし、最高じゃねぇか」
「はぁ?」
連れてきた生徒の一人がニヤニヤしながら隣のクラスの生徒に問いかけた。
「連れてきたんだから、約束守ってくれるんでしょ?」
「あぁ。俺様がじっくり楽しんだあとならな。それまでは許さねぇぞ」
「ひひひっ! 楽しみだぜ」
「おう、連れて来た甲斐が有ったな」
歩み寄る男子生徒たちの顔はとてつもなく怖かった。
「何言ってるんです? 貴方の彼女になんてなりませんし…触れさせもしません、勝手に決めないで」
「その強気な所もいいねぇ」
「ちょっと…やめて」
このままだと危ない!
変なところを見てしまった。
そう思った景はどうしたら良いのかわからなくなった。
「こんな時……どうしたら?」
景にも瑠璃羽にも男子生徒たちが悪魔のように見えた。
笑っている姿がもう人間ではないきっと悪魔だ。
景は内なる悪魔が出ている人間がわかるようになっていた……ふと頭に過った。
「ヴィラン!? 明快の時のようにやってみるか?」
景は薬を飲むと勢いよく扉を開けた。
「誰だ貴様!?」
「忍夜……くん?」
「お前……明快との喧嘩を邪魔した奴だな、ちょうど良かった。お前を斃して続きをじっくり楽しませてもらおう」
先にクラスメイト三名が束になってかかってきた。
だが、今の景にとっては喧嘩慣れしていない相手の攻撃はもはや、静止しているようにしか感じない。
あっという間に三名はやられてしまった。
「さすが明快とタメ張るだけのことはあるな」
「力で女を手に入れようなんて最低だな。明快ならそんなことはしない。あいつは血の気は多いが義理人情に厚い真っ直ぐな男だ」
「うるせぇ!!」
喧嘩の立ち回りは我武者羅ではあるが、パワーもスピードもそれなりにあった。
でも景には相手の攻撃でさえも、自分が出した一手のように見えてしまう。
「なんだコイツ……パンチが入らねえ」
「遅すぎるよ。」
そう呟いて景はパンドラの匣を握りしめ、殴った。
「きたねぇ悪魔だ」
「お、お前ら行くぞ! 覚えてやがれっ!」
そう言って蜘蛛の子を散らすように教室から逃げ散っていった。
「越知さん大丈夫?」
「う、うん……ありがとう」
「怖かったかな? びっくりしたよね?」
瑠璃羽はどうしたらよいかわからなくなって、感謝の言葉だけを伝えてその場から立ち去った。
「零花ちゃん待ってるし、わたし行くね。本当にありがとう!」
景にもどう処理したらよいか分からずに、行き場のない思いだけが残った。
「おれも病院行かなくちゃ…てか、悪魔ってなんだ?」
そして人間とは何か?に通ずるほどの哲学めいたことを急に考えしまった。
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