Chapter.Ⅵ ヴィランの正体
Karte.29 BUTTERFLY EFFECT
「今話したのが真実との過去の出来事よ……」
実花は思い出すのが辛かったのだろう。表情を曇らせ、同時に歯を食いしばった怒りさえも込み上げているのが分かった。
「どちらもジョーカーが関わっていること、計算されたかのようにここに集められたこと、すべてが偶然とは思えない。これもジョーカーの筋書き通りだとしたら、今回の件は軽く見てはいけない事案だ」
偶然なんてものが存在しないことは過去の出来事も然ることながら、世の中の摂理を知っている我生にとっては全てが必然なのではと思ってさえいるのだ。
「まだ、分からないことが多いの。だからこそ今回の件は私たちも関与して景くんたちを守りたい」
過去の出来事がすべて現代に繋がっているのなら、景も瑠璃羽も自身の問題だけでは済まされないだろう。
「話の流れは分かりました。おれたちは真実さんの時に失敗した何らかの計画をジョーカーによってやらされているということですか?」
「わからないことだらけだけど、今はわたしたちは騙されてると考えるほうが自然なのね」
察しの良い二人はすぐに実花と我生の話に賛同はする。しかし二人の言っている通りまだわからないことが多いのだった。
「真実さんは今どうなっているの? あたし覚えてる! そういえば中学の時に助けてもらったことがあった」
当時は絡まれていたところを何気なしに助けてもらったという認識だったが、事が事だけに零花は真実の容体を誰よりも気にしていた。
「真実は……今も意識は戻っていないの。あの事故が単なる交通事故なのかすら私は疑っているわ」
「そうだったんですね……」
実花はもう一つ提案があった。だけど言い出すのが怖かった。
「そう……それと景くんには……」
実花の重苦しい口の開きに全員の顔が強張るが、我生がそっと呟く。
「薬……のことだ。景くんも真実と同じく服用していることはわかっている」
そう実花が一番気にしていたのはそこだった。全員少し考えたような表情を浮かべるが、全員が目を合わせ恐ろしい表情に変わる。
「景くん……ヴィランと言ったかな。その薬を一度、俺に全て渡してはくれないだろうか?」
景は少し戸惑った表情を浮かべる。拒否しているようにも覗えるその表情に実花は少し強い口調になる。
「お願い! 景くん今回の一件はもう貴方だけの問題じゃない! それに成分によっては薬物取締法違反に問われる可能性だってあるの!!」
「そんなっ!? 薬物だと知らなくても罪に問われるの? 景は犯罪者になっちゃうの?」
「その可能性はある。所持していた使用していたという結果しか警察は判断しない。だから景くん俺に一度成分を調べさせてほしい」
景はポケットから全て取り出し机に出した。
「これで全部ね?」
「はい。一度追加で貰うという約束をしてそれからは貰えてません」
「今日はもうこれで解散しましょう」
「待ってください! オレも話します! 過去のこと少しでも参考になるのなら……」
※D.N.A-DeoxyriboNucleic Acid「羽琉明快編」参照
――――――――――――
我生とルーシーの通話
「電話が鳴ったら
「何だそれ?」
「
「思っている以上に複雑なのは想定内だ。それより例のアレはどうだ?」
「
「確かにな……何か方法は無いか?」
「
「出来るのか!?」
「あたいはキャン・オア・キャントでは無く、ドゥ・オア・ドントで行動する。」
「その答えは?」
「もちろんDoよ! 不可能ですら解釈で捻じ曲げる女。それがあたいルーシーですから」
「流石だ任せたぞ!」
………………………。
「あ、切れた。頭良い人、用件伝えたらすぐ電話切る説……仕方無いやりますか!
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