第25話 リリーママ

 もう知ってたが、リリーの身分が判明した。俺はリリーに連れられて辺境伯家の応接室に居る。場違い感が酷いが大丈夫だろうか?


 「アル、こっちよ」


 リリーが笑いながら座る場所に案内してくれた。入口に近い席が正解らしい、忘れてたな確か会議室とかもそうだった。


「ごめんね、そこまで作法に詳しい訳じゃ無いから」


「貴族でもないのに、エスコートの仕方も問題なかったし十分よ」


コン、コン、コン、コン


「カタリーナ様がお見えになりました。」


 リリーの母親が来たのでとりあえず立ち上がっておいた。リリーは笑って座ったままだ。ドアが開くとメイドと一緒に美しい女性が入ってきた。髪も赤くてリリーに似ている。リリーと違うのはホワホワした雰囲気を纏っているくらいだ。本当に母親なのか?姉だと言われても疑わないぞ!奥の席に座ると話しかけてきた。


「リーゼロッテの母親でカタリーナです。アルフレッドさんですね、どうぞお掛けになって」


 おっふ、全部知ってるんだろうな。どうなるか怖いがここは普通に対応すれば大丈夫だろう。


「初めまして、アルフレッドと言います。本日はお招き頂きありがとうございます。」


 一礼して挨拶し席に座った。


「リリーちゃん。アルフレッドさんは本当に庶民の出なの?若いのにしっかりしてるし、礼儀も正しいわ」


「私の知ってる範囲だと庶民よ?」


 伊達に長年会社員をやっていたわけでわない、マナーにうるさい客も多かったからな。特に俺の担当した取引先の部長は………言ってもしゃーないか


「そうなのね、ところでリリーちゃん、今日はどうして戻ってきたの?あんなに帰るの嫌がっていたのに」


「侯爵家のクソボンボンに冒険者ギルド前で会って、婚約がどうとか言い出したから伯父様に直接報告に来たの」


 クソボンボンて、本当にアイツのこと嫌いなんだな


「あらそうなの?てっきりアルフレッドさんと恋人になったから紹介しに来てくれたかと思ったわ」


「うっ、それは……まだちゃんと……」


 顔を赤くしながらチラチラと俺のことを見ている。


「リリー、気にしなくて良いよ。僕は君が好きだから是非恋人になって欲しいよ」


「なっ……私もアルが好きよ、それに恋人になる事も承諾するわ」


「あらあら、まあまあ、母親の前で告白するなんて!若いわねぇ、でもとってもステキだわ」


 カタリーナさんは両手を赤く染めた頬に当ててクネクネしている。なんかちょっとエロいな……


「アルフレッドさん、私の恋人にもならない?とってもステキな方だわ」


 ブフォ!なんつーこと言うんだこの人は!あなた人妻でしょ?なんで娘の恋人の恋人になろうとしてんのさ


「なっ、駄目に決まってるじゃない!それにお父様はどうするのよ!」


「あんな人知らないわ。勝手に出ていって生きてるか死んでるかも分からないのだから、もう戻ってきても家に上げないわよ」


 ほう、もしかしてリリーの父親は冒険者だったのか?そうすると納得出来る事が増えるぞ


「それでも駄目よ、アルは私のなんだから!」


「仕方ないわねぇ、でもアル君って呼ぶくらいは許してくれる?」


「そのくらいなら……いいわ」


 少し考えるそぶりを見せたが、諦めたのか愛称呼びに許可を出した。


「ありがとう。アル君、この子の父親は冒険者なの、10年前に家を出ていってから一切連絡が無いのよ、ギルドに聞いても分からないって言われるし」


「そうなんですね、カタリーナさんもリリーも寂しかったんじゃないですか?」


「そうね、最初は寂しかったわ。でもリリーが居たし数年したらどうでも良くなったわ、私が貴族の仕事に戻ったのが間違いだったのかしらね?あの人硬っ苦しい事が本当にに苦手だったから…リリーちゃんは?」


「私?私は父親が居なくなって寂しい時もあったわ、でもお母様が居たからそのうち気にならなくなったわよ?冒険者の話はお母様からも聞けたし……」


 リリーが冒険者になったのは父親の影響かと思ったけどカタリーナさんの影響でしたか、少しは父親の影響もあるんだろうけど…


「それはそうと、アル君何者なの?貴族では無さそうだけど、庶民てわけでも無さそうなのよねぇ、何だか歳上と話してる気分になるわ」


 ぐっ、鋭いな答えに困る質問が来たよ……防諜が大丈夫なら話してしまうか?リリーとカタリーナさんだけなら問題ないか?


「そうですね……ここで話した事は他言無用って事にしてもらえますか?あとこの部屋は防諜は大丈夫ですか?」


「アル平気よ、魔導具を起動して、メイドに人払いを頼むわ、それにノック無しに入ってくる馬鹿はいないわ」


 リリーは立ち上がって入口付近に立っているメイドに人払いを頼んだ。それから部屋の端にある棚の引き出しから箱を取り出してテーブルの上に置き魔力を流した。


「これでこちらの声は外に漏れないわ、後、入口のメイドはお母様の専属メイドだから何処にも情報を漏らさないわ、例え当主の伯父様であっても」


「わかった。これから話すことは荒唐無稽こうとうむけいに聞こえるかもしれないです。でも最後まで聞いて下さい。質問は話し終わってから聞きます。」


「ついにアルの秘密が聞けるのね、楽しみだわ」


 リリーさんやそんなにハードルを上げないで下さいな……俺は地球で死んでから今までに起こった事を全て話すことにした。

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