第27話 辺境伯との対面

 リリーが暴走している。俺が部屋を見せてくれるか聞いたのも悪かったのだろうが、こんな時間から子作りはしませんよ。たぶん……


「リリーちゃん、話が横に逸れてるわよ?そういう事をする話じゃなくて、これからどう行動するかって話しよ」


 カタリーナさんが軌道修正してくれた。リリーの顔は真っ赤になったままだ。


「あっ!やだ!私ったらなんてはしたないのかしら……」


「そう思ってくれてるだけで嬉しいよ、その話は今度ね」


 とりあえず俺も軌道修正して話を元に戻そう、そうしないと俺もエロい方向に進んでしまいそうだ。この後は伯父さんに会うって事で良いのかな?


「それで辺境伯様には会わなくて良いの?挨拶くらいはしておきたいと思ってるけど…」


「そうね、伯父様には会って報告する事もあるから、呼んでもらうわ。忙しければ次の機会になるけど良い?」


「問題無いよ、辺境伯様の都合に合わせるさ」


 カタリーナさんはメイドさんに目配せをした。するとメイドさんは一礼し部屋を出ていった。さすが本物のメイド、次に何をすれば良いのか言葉にしなくても理解している。いつの間にかテーブルの上に紅茶が置かれていたな。いつ置いたのだろう?俺は何も気にせず話している間に飲んでいたな………


「呼びに行かせたわ、アル君は全然動じないのね。辺境伯が来るとなると萎縮する人は多いのよ」


「慣れですよ、あちらにいた時に身分が高い人と会うことは何回もありましたから」


 そんな話をしているとノックの音がした。


「辺境伯様がお見えです。」


 俺は立ち上がって辺境伯が入ってくるのを待った。辺境伯は俺を見た後、カタリーナさんの隣に座ると


「グレッシェル辺境伯だ。アルフレッド君だね、掛けなさい」


「グレッシェル辺境伯様、お初にお目にかかります。冒険者のアルフレッドです。平民ゆえ、言葉遣いに至らぬ点があると思いますがご容赦ください。」


 そう言って俺は椅子に座った。


「ははは、その挨拶の時点で平民ではないぞ、堅苦しい挨拶はここまでにしよう。公式の場でない限り俺と話す時は普段の話し方で構わない、俺も普通に話すからな、名前はクリストフだ。よろしくな」


「わかりました。よろしくお願いします。」


「さて、早速本題に入ろう。リーゼロッテ、今日は何の用だ?彼の紹介だけではあるまい」


「お久しぶりです伯父様、侯爵家のボンクラと冒険者ギルド前で会ったのですが、私の事を婚約者だと言い出したので脅して断っておきました。」


「あぁ、あの馬鹿息子か、わかったこちらからも文句を言っておこう。その時アルフレッド君は一緒だったのかい?」


「はい、俺も一緒に居ました。リーゼロッテさんの恋人だと言っておきましたが何か問題があります?」


 リリーが何やら不機嫌な顔になってる……あ、リーゼロッテさんて言ったからかな?次からはリリーと呼ぼう。クリストフはそんなリリーの顔を見て不思議な顔をしている。


「問題はない、リーゼロッテの相手はリーゼロッテが見つけるものだ。私が兎や角言うことでは無いし、言ってもきかんだろ?」


「そうですね、そういう話は聞く気がないですね」


「誰に似たんだか…カタリーナそっくりだ」


「あら、お兄様?私だけじゃないでしょ?お兄様だってお父様の縁談話を聞かずにイレーヌさんを連れて来たじゃない?」


「うっ、確かにそうだな……」


 辺境伯家の人達は自分の気に入った人を伴侶にするのが当たり前みたいだな、貴族家的には少々問題かもしれないが……


「だがそうなると、あの馬鹿息子はアルフレッド君にちょっかいをかけるかもしれないな……」


「可能性はありますね、何か対応方法はありますか?」


「本人については、基本的に殺さなければ殴り飛ばしてくれてもかまわない。それ以外は、出来るだけ殺さないようにしてくれ、捕まえて衛兵に突き出してくれるのが一番助かる。衛兵には伝えておくから問題なく処理してくれるだろう。」


「わかりました。そう対応します。ただし俺以外に特にリリーに被害が出そうな場合は容赦しません。」


「そうしてくれ、そりにしてもリリーか……ズルいな俺もそう呼びたい」


 リリーって呼びたいんだ。可愛い姪なのに他人行儀にされるのは嫌なんだろうな、おっさん気持ちはよくわかるぞ!


「伯父様はダメです。ただ……今から言う事を二つ実行してくれるなら、リリーって呼んでも良いですよ?」


 愛称呼びを交渉の材料にするのか、説得脅迫するよりは良いな……


「少し怖い気もするが、聞こう」


「アルに監視を付けて情報を集めてますね、今までは良いですがこれからはダメです。少なくとも私達が寝泊まりしている所に間者を入れることは止めて下さい。」


 リリーは一呼吸置くと、次の条件を話し始めた。


「もう一つですが、今まで集めた情報を絶対に外に漏らさないで下さい。ある程度時間が経てば自然にアルの情報は冒険者やギルドから流れます。その時私がアルの恋人である以上、伯父様に探りを入れる輩が必ず居ると思います。その時に余計な事を言わなければ良いです。」


 本当にヤバい部分は隠して、ある程度は情報を公開するつもりだな。インパクトがあるとすれば魔法と収納か?ギルドには収納が使える事はバレてるからな、そのうち魔法もバレるだろう。スキル回りさえ誤魔化してしまえばなんとでもなるか、さすが貴族のお嬢様だな。

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