第28話 リリーの説得

 リリーは辺境伯が自分の事を愛称で呼ぶ許可するために二つの条件を出した。俺の監視を止める事、俺の情報を漏らさない事だ。


「一つ目の条件は分かった。二つ目も問題はないが……彼は、多少不思議なところはあるがごく普通の冒険者に見えるのだが……情報を統制する程だろうか?」


「アルは複数属性の魔法が使えます。それに【収納】持ちです。多分、既に私より強いでしょう。」


「なっ、本当なのか?」


「そうですね、リリーの言ってる事は間違っていないですよ、ただ対人の戦闘経験差が大きいのでリリーより強いってのはわかりません。」


「わかった。二つの条件両方ともきちんと実行しよう。」


「約束を破ったら二度と口を聞きませんからね?」


「うっ、わかった。話はそのくらいか?」


 最後にしっかり説得脅迫をしてきたな、リリーさんを怒らすと酷い目にあいそうだ。


「そうですね、伯父様に報告するのはこれくらいかと…あ、アルとは正式に恋人としてお付き合いします。」


「うん、それは全く問題無い。アルフレッド君、リリーをよろしく頼む」


「お任せ下さい。必ず守って幸せにしますので」


「良い返事だ。そうだ今は屋敷にらんが俺にも息子がいる。今度来た時にでも紹介しよう。是非仲良くなってくれ」


「わかりました」


 辺境伯家とは家族全員と仲良くしておかないとな、リリーに迷惑をかけるのは避けたい。それに貴族の権力はもしもの時に何かと使えるだろう。


「そろそろ昼の時間だな、リリーもアルフレッド君も昼食を食べていきなさい。俺は仕事があって一緒に食べれないがカタリーナは大丈夫だろ?」


「私は特に急ぎの仕事はないわ。それにもっとアル君とお話したいから今日は泊まってもらうつもりよ」


 なんですと!泊まりは想定外だ。何か逃れる手はないか?そうだ宿の部屋はまだ料金を払ってないから追い出される。それを言えば大丈夫か?ここに泊まるとリリーとイチャイチャする事が難しくなってしまう。宿ならあわよくば………


「ありがたいのですが、宿の部屋代をまだ払ってないので追い出されてしまいます。今日のところは」


 カタリーナさんは何か不思議そうな顔をしている。リリーはバツが悪そうだ。ん?何か問題があったか?


「アルが宿を追い出される事はないわ。例え宿代を払わなくても……」


「えっ!どういうこと?」


「あの宿ねオーナーは伯父様なの、そして3階は辺境伯家のプライベートルームなのよ。だから宿代はかからないの……」


 あれ?てことはあそこは辺境伯家の別宅扱いで、既に俺はお客様として泊まっている?宿代は払ったけど意味は無い?そうか宿代を取らないと貴族である事を話さないといけないから……てことは女将さんも事情を知ってるのか、最初に部屋を確保しに行った時全部決めて来たんだな…


「なるほど、理解したよ。そんな事なら最初から言えば良かったのに」


「だっていきなり貴族の娘だなんて言ったらアルが離れちゃうと思ったから……」


 あはは、可愛いやつだ。でもその頃から好意はあったんだな、じゃなきゃ膝枕なんてしないか……またしてもらお、今度は恋人として


「気持ちはわからなく無いけど、リリーが貴族のお嬢様でも俺には関係なかったよ、吃驚はすると思うけどね」


「そうかもね、でも良かったわちゃんと話せて」


「解決したみたいだな、アルフレッド君の部屋は、カタリーナの方で準備させておいてくれ、リリーと同じ部屋はまだダメだぞ。俺はそろそろ仕事に戻らんとならん。」


「お兄様わかりましたわ。リリーちゃんと同じ部屋でも良いと思いますよ?」


「さすがに未婚の状態ではまずいだろ。外聞もあるからな…俺個人としては問題ないんだが、貴族として考えるとこの屋敷で勧める訳にはいかん。ではアルフレッド君、また夜にでも妻と息子を紹介しよう。」


 暗に「この屋敷じゃなかったら自由にして良い」って言われてるようなものだね、リリーも理解したのかまた顔が真っ赤になっている。


「色々とありがとうごさいました。よろしくお願いします。」


 クリストフさんは頷いて部屋を出ていった。かわりにメイドさんがやってきて昼食の準備が出来た事を告げた。


「さて、リリーちゃん、アル君ご飯を食べましょう。」


「ご馳走になります。」


 メイドさんに案内されて食堂に向かった。食堂は思ったより小ぢんまりしていた。大貴族だから長いテーブルがあって椅子がずらっと並んでいるのを想像していたので、ちょっとがっかりだ。


「アル、狭いって思った?」


「狭いとは思ってないけど、もっと長いテーブルがあって椅子がたくさんあると思ってた。」


「そういう場所もなくはないけど、いちいちそんな所で食べないわよ。片付けが面倒じゃない、ほかの貴族が来たりした時しか使わないわよ」


 なるほど合理的ではあるな、ここは家族用のプライベート食堂ってところか……どこに座るか迷っているとリリーが教えてくれた。リリーも隣に座り、カタリーナさんは俺の正面に座った。ニコニコした顔で俺のことを見ている。


「アル君ごめんね、来ると分かってたら豪華な食事を用意させたんだけど……」


「全然かまいませんよ、急な来訪なのに昼食まで頂けるのですから」


 話していると食事が運ばれてきた。ん?どっかで見たことあるような食事の内容だ………

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