第23話 侯爵家令息

 ダンジョンで出るあいつは〔ホモーク〕と名付けられた、のか?被害にあった冒険者のご冥福をお祈りします。死んではいないが、精神的に死んだも同然だ。俺なら死ねる。


 冷凍設備に入ったがまさに冷凍倉庫だった。気温までは分からないが間違いなく氷点下だろう。右側を見るとオーク肉の塊が並んでいた。1列が10個でそれが5列あり最後の列は4個並んでいる。なるほど54個だな、てことはこの広さだと最大10列まで並べることが出来そうだ。たぶん重さと運ぶことを考えると3段くらいが限度だろう。【アイテムボックス】からあの形に200個を合わせて出せないものだろうか?


『【アイテムボックス】の整列・分布排出機能が発動します。』

『オークの肉を整列した状態で排出します。残126個です。』


 オーク肉が綺麗に並んで積み上げられた。一瞬で終わったので俺も吃驚してしまった。リベルトさんも口があんぐりと開いてしまっている。口の中が凍りますよ?


「すげぇな、一瞬で終わったぞ?おまえ此処で働かないか?倉庫整理が無茶苦茶捗るじゃないか……ちと数えるから待っててくれ。」


 整列しているので数えるのはすぐに終わる。ちゃんと254個あるようだ。


「残りの部分にも出せるか?46個だが…」


 俺は頷くと残りの部分にもオーク肉を出した。全部で246個納品したことになる。


「助かったぜ、今度暇なときにでも倉庫整理手伝ってくれや、駄賃は弾むぜ」


「時間があれば来ますよ……」


 まぁ社交辞令だ。倉庫番なんぞやりたくない。積み終わったので外に出た。短い時間だったがかなり身体が冷えた気がする。そのままの格好で入ってたら風邪をひいてたかもしれない。


「もう終わったの?早かったわね」


「そうだな……とりあえず246個納品できたよ」


 リベルトさんに受領書を貰い冒険者ギルドに戻ることにした。カウンターに行くと冒険者の数も少なくなっていた。みんな依頼を受けて出かけてしまたのだろう。残った冒険者から鋭い視線を向けられているが、相手にしても仕方がないので無視する。


「マリーズさん戻りました。これが受領書です。」


「お預かりします。246個の納品ですね1個10,000Gなので、先ほどと合わせると結構な額ですがどうしますか?」


 オーク肉も最大買い取り額だ。〔ホモーク〕のせいで納品が減っているからラッキーだったな


「リリーと半分にして、あと銀貨20枚分だけそのままください。残りはギルド証にお願いします。」


「わかりました。ギルド証をお預かりします。」


 俺とリリーはマリーズさんにギルド証を預けた。カウンターの下で何やら作業をしてギルド証が返され、カウンターの上に銀貨20枚が置かれた。


「以上になります。納品ありがとうございました。」


 銀貨を回収してギルド証を回収すると、〔所持金:1,661,000G〕となっていた。これで懐もだいぶ温かくなった。現金も28,600Gあるのでギルド証が使えない店でも大丈夫だろう。


「アル、半分も貰って良かったの?荷物を運んだのはアルよ?」


「リリーと一緒に倒したんだから構わないさ、いちいち考えるのも面倒だろう?」


「そうね、普通は取り分で喧嘩になることが多いのだけど、アルらしいわね」


「オホン、用がお済なら早めにお帰り下さい。カウンターでイチャイチャされると困ります。」


 俺とリリーは顔を真っ赤にしてその場を離れた。恥ずかしすぎる……酒場の方からは睨むような視線が飛んできているので、さっさと冒険者ギルドを出た。出たところで金髪のイケメンに声をかけられた。


「君はリーゼロッテとどういう関係なんだい?」


 冒険者らしいが何だかゴテゴテした装備を身につけている。わかりやすく貴族のボンボンて感じだ。イケメンは嫌いだよ!


「えっと何方どなたですか?初対面だと思うのですが⋯」


「質問に質問で返すな!まあ良い、私はリーゼロッテの婚約者でヘリング候爵の息子のエルンストだ。」


 ほーん、貴族様で婚約者ねぇ?どんな奴だろ【解析】


名前:エルンスト・ヘリング(18)

種族:ヒューマン(男)

ジョブ:剣士

所属:冒険者ギルド(C)

称号:候爵家次男

レベル:12

ステータス

 STR:120

 VIT:110

 INT:80 [+10]

 DEX:130

 AGI:95

 LUK:65

魔法:

 なし

スキル:

 【共通言語】【礼儀作法】【剣術】

装備:

 ミスリルショートソード・ミスリルの胸当て・革のブーツ・叡智の指輪


 候爵家の次男か、このステータスは普通なのか?これでCランクなのは何かの間違いな気がする。そして高級装備!てかINT低くね?


「あんたの婚約者になったつもりは無いわ。それに伯父の辺境伯が断ったはずよ」


「君はまだそんな事言っているのかい?そんなものは関係ない、私と君が愛し合ってるから問題無いのだ!ごちゃごちゃ言わずに私についてきなさい。」


 どう見てもリリーに嫌がられてる様に見えますが?ここは一芝居打つのが正解かな?恋人だって言い切ってやろう。不敬罪とか言いそうだけど、リリーもおるし何とかなるだろう。それよりもリリーがかなりお怒りモードです。斜め後ろにいるのだが、見るのが怖い……

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