第24話 辺境伯家へご招待

 侯爵家の次男に絡まれた。自称リリーの婚約者らしいが……こいつ自身の暴走だろう。イケメンだが自分の事しか考えない自己中野郎だな、イケメンってだけで嫌いなのに自己中までついてくるとは……救いようがないな……


「婚約者ですか?でもリリーと俺は恋人同士ですよ?婚約者の話なんてリリーから一度も聞いた事が無いですし、辺境伯様からも断わりがいってるようですけど?」


「なっ?庶民が貴族の事に口を出すのか?無礼だ……ぞ…」


 剣を抜こうとしているが、何故かプルプル震えて止まっている。こいつどうした?


「その剣をどうするつもり?抜いたらどうなるかわかってるわね」


 おっと、お怒りモードのリリーさんが爆発しそうですよ?俺にも止める自信はないから頑張ってくれ!てかやられてしまえ!


「あんた私に勝てないでしょ?抜くより先に首が飛ぶわよ。それにアルは私の恋人よ、手を出したら容赦しないからね」


 おっと恋人発言頂きました!顔がニヤけそうになるな。リリーは俺の隣に来ると腕を取って組んできた。お胸様が腕に当たって大変気持ち良いです!


「なっ、そんな……」


「はっきり言うわ。貴方のような人は大っ嫌いよ!金輪際関わらないでちょうだい!」


 貴族のボンボン君は、その場に膝をついて項垂れてしまった。本人からはっきり言われたのは初めてだったのかもしれない


「バレちゃたわね、私が貴族の娘だって事、アルの事だから感ずいていただろうけど……」


「あれ放っておいてよいのか?」


「大丈夫よ、そのうち帰るわ。それより私の家に行きましょ?大事な話がしたいわ」


「わかった」


 家って事は、リリーの両親が居るって事だろ?いきなり挨拶か緊張するな……リリーは何やら合図らしき仕草をしている。何してるんだ?護衛に何か頼んだのかな?


「いったん宿に行きましょ」


 リリーと宿に戻ると立派な箱馬車が止まっていた。御者席からナイスミドルが降りてきて一礼した。


「お嬢様、お迎えに上がりました。お連れ様も御一緒にどうぞ」


 そう言うと箱馬車の扉を開けた。これはエスコートするのが正解か?馬車な先に乗り手を出してエスコートする。


「どうぞ」


「ありがとう」


 リリーは手を取って答えてくれた。御者さんはウンウンと頷いている。やった正解だった。対面で座れるので御者席側に座った。


「ふふふ、アルにエスコートしてもらえるなんて嬉しいわ」


「これでも紳士なんでね」


 御者が扉を閉めてしばらくすると馬車は動き出した。椅子がフカフカなので揺れるがお尻はそんなに痛くない。この揺れだとサスペンションはないから、普通の馬車はかなりお尻にダメージが入りそうだ。


「…………ごめんね、貴族であること黙ってて」


「そうだろうなぁとは思ってたよ、でもリリーは貴族だろうが冒険者だろうがリリーだろ?関係ないさ」


「本当にアルらしいわね、そんな貴方だから好きになったのかな?」


 おっと、さり気なく告白されたぞ!これはどう答えるのが正解だ?今は流すべきか?いや、好意がある事はちゃんと伝えておこう


「ははは、それは嬉しいね。俺もリリーが好きだよ、最初から可愛いなって思ってたし、それに一緒にいて楽しいからね」


 リリーの顔が真っ赤になってる。リリーに先に言わせてしまったのは残念だったが仕方がないだろう。こんな形で想いを伝える事になるとは想像もしていなかったからな、あの貴族のボンボンに感謝だな


「デート出来なかったわね、何か買いたい物とかあったんじゃないの?」


「そんなに急ぎでもないし、街中をブラブラして何処に何があるか覚えたかっただけだよ、デートはまた後日したらいいさ」


「そうね、楽しみにしているわ」


 窓から外を見てみると大きな邸宅が並んでいる通りを走っている。貴族なんかが住んでいる地域だろう


「ここら辺は貴族の邸宅がある場所よ、大店の商会長とかの家もあるわ」


「確かに大きな屋敷が多いな。一度住んでみたい気もするが、こんな広い家は俺では持て余すな」


「ふふふ、そうね私も小ぢんまりした家の方がいいわ。沢山部屋があっても困るわ」


 馬車は一際大きな邸宅の門をくぐると庭を抜け豪邸の前で止まった。


「到着しました。」


 扉が開いたので先に降りリリーをエスコートする。内心はかなりビビっているがそのままエスコートして屋敷の中に入った。


『スキル【無表情ポーカーフェイス】を取得しました。』


 なんかこれも詐欺師が使いそうなのだが……


「お帰りなさいませ、リーゼロッテお嬢様」


 10人くらいのメイドさん達に出迎えられた。おー、本物のメイドさんだ。やはりメイド喫茶にいる人達とは別物だな、所作がめちゃめちゃ美しい


「そのまま応接室に行くわ。お母様を呼んできて」


「かしこまりました。旦那様もご在宅ですが如何いかがされますか?」


「伯父様は後にするわ、でも私が戻って来たことは伝えておいて」


「かしこまりました」


「こちらへどうぞ」


 別のメイドさんが来て前を歩き出したのでついて行く、扉の前まで来ると開けてくれたので中に入った。応接室セットがあるので下座に座ろうと思ったがどこだっけ?確かマナー講座で習ったはずだが覚えていない……てか伯父様って言ってたから辺境伯家のお屋敷か……リリーの両親の家じゃないのか……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る