第18話 初めてのダンジョン4

 リリーと話をしていて自分が完全にリリーのことが好きになっているのを理解した。気持ちを偽る気はないが恥ずかしいものである。リリーの頬も少し赤くなっているのがわかった。


「串焼き美味しいね、今度来る時も買ってから来ようね」


「そうだな、美味いな」


 二人で五本づつ串焼きを平らげた。結構お腹いっぱいなんだけど、リリーさんたらまだ余裕そうだ。そんな細い身体の何処に入るのだろうか?


「良く食べると思ってるでしょ?まったく恥ずかしわね」


「ははは、良く食べる人は好きだよ、見てて気持ちが良いからね」


 リリーは顔を真っ赤にして俯いている。ちょっと直球を投げすぎたかな?ま、嘘を言ってる訳では無いから良いか、もっと豪速球を投げてみるか?


「さて、そろそろオーク討伐の続きをするかい?さっきの連中も進んで近くには居ないだろうから」


「そうね、そうしましょう。また大量に来るだろうから膝潰しは任せたわ」


「任せてくれ、じゃぁ行くか」


 リリーを先頭に3階を闊歩する。まさにオークホイホイだ。かなりの時間戦っているとオークが途切れた。そろそろ殲滅したのかもしれない……


「ありゃ?全部倒しちまったか?」


「かなり倒したからそろそろ打ち止めかしら?それにもう良い時間だから戻りましょうか」


「だな、宿に帰ってゆっくりしよう」


 広場に向かって歩いて行くと、一匹のオークが現れた。今までのオークと何かが違う。【解析】してみたが他のオークと同じで特殊な種族でもなく、特殊なスキルを持ってる訳でもない…


 ただ見ているのが今までと違って俺だ………まじか?ケツの穴がチリチリした、そして全身に悪寒が走る。【危機察知】が反応している………オークの鼻息も荒くなってきている。


「ブモォォォォォォォォォォォゥ」


「まずい、俺狙いだ。リリー膝を潰してくれ!」


 リリーは混乱してるのか動けてない、これは本格的にヤバいぞ俺の貞操がピンチだ!!こっちに向かって両手を広げて突進してきた。こいつ俺にタックルを仕掛けて押し倒す気だな、ならこちらから仕掛けてやる。オークはガニ股だあの間ならすり抜けられる。


 俺はオークに向かって走っていく、目が合うとニチャァと笑いやがった。恐怖を抑えてスライディングをする。奴の股間の下からすり抜けざまに盾で強打してやった。ちっ最悪な物が見えたぜ……


『スキル【盾術】を取得しました。』


「ブモォォォォォォ」


 オークは股間を抑えて悶絶して倒れている。その隙に立ち上がり首に剣を刺した。魔石と肉がドロップした。リリーの方を見るとまだ動いていない。あれ?プルプルしてる?


「あはははははは、ひぃーお腹痛いもうやめてよね、あははははは、ひぃーひひぃひひひぃひぃ」


 めっちゃ笑ってるよ…俺すげーピンチだったんよ?覚悟を決めて突っ込んだんですけど……オークが居なくなったのはあいつのせいか、他のオークがあいつから逃げたからか…そりゃ雄が狙われる訳だから逃げるよな、リリーの匂いの誘惑に勝つ恐怖か……本当に最悪だな


「リリー、疲れたから帰ろうぜ」


「あはは、そうね帰りましょ、あはははは」


 まだ笑ってるよ、どんだけツボに入ったのよ……俺は完全にやる気を無くしてダンジョンから脱出した。ダンジョンのギルド支部でゴブリンの魔石を30個ほど換金した。1個1,000Gなので30,000Gだ。リリーと2等分して15,000Gづつで今日の換金は終わりにした。宿に泊まれるので問題は無い。


 気力はなかったが、あの馬車に乗る気もないので黙って走って帰った。リリーは時折走りながらも笑っていた。部屋に戻り普段着に着替えてリリーが来るのを待った。何のやる気も起きん!


コン、コン、コン、コン


「おまたせ、食事にしましょ」


「うーい」


 二人で食堂に降り夕食を食べる。俺のやる気がない事がわかっているのかリリーも黙って食事をしている。二人とも食べ終わり部屋に戻った。ベッドに横になりボーッとしているとまた、扉がノックされた。

「リーゼロッテよ、開けて」


「今開けるよ」


 扉を開けるとリリーが中に入ってきた。


「お邪魔するわね、椅子に座って良い?」


「どうぞ、こんな時間にって言ってもまだ早いか、どうしたんだい?」


「あら?アルの事を心配して見に来たのよ?大丈夫?」


「ははは、大丈夫だよ。さすがに雄のオークに襲われるのは勘弁してほしいけどね」


 うんざりした顔で肩をすくめて見せた。


「私も初めて見たわ。普通のオークが人種の女を攫って犯し、繁殖するのは聞いたことがあったけど、男を狙うなんて………」


「だろうね、あいつだけが特殊な性癖だったんだろう?本当にもう会いたくないわ。もし出会っても次はちゃんと攻撃してくれよ?」


「わかってるわよ、アルを狙ってるって聞いたら可笑しくなっちゃって、ごめんね」


 励ますのと謝りに来たんだろうな、もしかしたら俺の部屋に入る時点で覚悟もしてきたのかもしれない……でも今じゃない気がする。それに二人とも話してないことがある。もう少しきちんと話し合いたいからそれが終わってからにしよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る