第43話 魔法について2

 リリーが魔法名だけで魔法の発動に成功した。これで俺の推測通りに魔法が発動することが検証できたことになる。詠唱はイメージがなくても資質と魔力さえあれば発動することが可能になる。イメージしないため応用は効かないが同じ魔法を同じ威力で使うことが出来る。


「な!ちゃんと魔法が使えたわ……アルどういうことなの?」


「俺の推測通りだったよ、要はイメージが重要なのさ。イメージさえできて魔力があれば魔法は発動する。もちろん資質による部分もあるだろうけど……だからこんな事も可能だよ」


 なにも言わずにリリーが使った魔法を発動させて壁にぶつけた。所謂、無詠唱ってやつだ。


「無詠唱……、魔導士の絶対的な目標よ……それをいとも簡単に……」


「確かにこれに気付くには長年の研究が必要かもしれない、でもイメージで魔法が発動することに気が付けばすぐにできるようになるはず……今まで使ってきた魔法のやり方が染みついているから難しいかもしれないけど……」


「でも、私はイメージして詠唱とは違う言葉で発動したわ。コツさえつかめればすぐにできるようになるのかしら?」


「俺のやり方を説明するからやって『そうね、試してみたいわ』みる?」


 食い気味に返事をされた。やる気満々なので説明をしてみる。


「さっきやったようにイメージは出来るよね?それで魔法名として《ファイヤーボール》と詠唱してもらったわけだけど、その詠唱を声に出さずに頭の中でやるんだ。別に《ファイヤーボール》って言葉にとらわれる必要はなんだけど……このイメージはこの言葉みたいに決めればわかりやすいでしょ?」


「そうね、だからアルは魔物を倒すときに《ウィンドカッター》って言ってたのね?その言葉がコボルトたちの首を刎ねるような効果がある魔法が発動するように……」


 リリーは賢いな、俺の魔法名がどんな意味を持っているのか理解してきている。これなら無詠唱も可能かもしれない……


「そうだね、それもあるし。さっきはリリーが俺の魔法のことを知らないから意味はなかったけど、これからは俺が《ウィンドカッター》って言えばどんな魔法が発動するかわかるでしょ?」


「そうね、詠唱を聞けば使う魔法がわかるのと同じね、《ウィンドカッター》は空気の刃が発生してそれで切り裂く魔法ね……イメージさえできれば使えるかもしれないわ」


「それは練習するしかないね、とりあえず無詠唱が出来るか試してみない?さっきの《ファイヤーボール》って詠唱を頭の中で唱えて発動してみるんだ」


「やってみるわ」


 リリーは壁に向かって集中しているがなかなか発動しない。しばらくウンウンうなっていたが急に魔法が発動して壁に当たり爆発した。


「できたわ!」


「すごいな、こんな短時間で出来るとは思ってなかったよ。今までの魔法の使い方が身についてるから難しいかと思ってたんだけど……何回か練習してみて魔物との戦闘中に発動しなかったら危ないからね」


「わかったわ、何回かやってみる」


 上手くできて嬉しかったのかニコニコしながら魔法を発動している。ほぼ完全に出来てるのではないだろうか?ニコニコしながら黙ってファイヤーボールを連発する女……まさに〔灼熱の魔女〕だな……


「そろそろ耳がおかしくなりそうだから、ファイヤーボールはやめよう」


「そうね、私の耳もキンキン言ってるわ。風魔法は比較的静かだからそれでやってみない?」


「でも、魔力は大丈夫?魔力が枯渇すると危ないんじゃ?」


「そうね、確かにかなり発動させたから、ダンジョンで練習するのは危険かもしれないわね、アルは大丈夫なの?」


「まだ大丈夫そうだよ、リリーに初めて会ったときは魔力が枯渇しかけたから剣の練習をしてたんだよ、ちなみに衛兵が見た光はこれだね《ライト》」


 天井付近に光の球を打ち出した。明るさは眩しくないくらいに抑えてある……もうム〇カ大佐をやる気はない。


「なるほどね、でももっと明るかったみたいなことを言ってたけど……」


「それはあの時加減をせずに《ライト》を使ったからだよ、俺も眩しくてしばらく目がチカチカしたくらいだから……ちょっと休憩しようか、今日は帰るだけだし帰りはオークが出てもかなりの速さで帰れると思うよ?アイテムを拾う手間がないからね」


「ここから1階にもどれるわよ?」


「…………忘れてた」


 この広場には転移システムの石柱があるからすぐに戻れるんだった。なんか恥ずかしいなぁ………


「でも、オークを倒せば稼げるから走りながら帰るのもありね。私もオークで魔法の練習ができるし……」


 またオークの殲滅が確定したようだ……肉は上手いし、金になるから構わないんだけどね……それに今度ホモークが出ても魔法で倒すから怖くないし……ほんとか?


「なら、少し休憩してから魔法の練習を続けよう。時間がわかる時計があれば便利なんだけど……」


「王都に行けば時計はあるけど、持ち運びができるような物はないわよ?」


「そうなのか……俺のいた世界では腕にはめるサイズの時計があったんだが……」


 時計はかなり細かいギミックが必要だからな……電池や時間は魔法で解決できそうな気もするけど……こちらの世界の時計はどんな仕組みなんだろう?

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