第42話 魔法について1

 魔法を使って討伐すると、コボルトは剣でも一撃なのでそんなに変わらないが、ミノタウロスの戦闘時間が短くなり効率的に討伐できるようになった。ミノタウロスの肉も目標の20個に到達した。


「やっぱり戦闘時間が短いから早いわね、アイテムを拾う時間が無くなればもっと効率よくやれそうね、それに私も同じように魔法が使えればさらにスピードアップしそうだわ」


「そうだなぁ、俺の【アイテムボックス】は特殊だからもしかしたら拾えるかもしれないぞ?ちょっとやってみるか……」


 俺はコボルトのナイフをいくつか地面にばらまいた。3メートルくらい離れた場所からアイテムを【アイテムボックス】に回収するようなイメージをしてみる。


『【アイテムボックス】の自動回収機能が発動します。』

『討伐した魔物のアイテムおよび死骸を自動的に回収しますか?「YES/NO」』


 もちろん「YES」だ。ばらまいたすべてのナイフが回収された。あとはどのくらいの距離まで使用可能かを試すだけだな……


「うまくいったみたいね、わざわざ拾わなくて良いのは便利ね……かなり反則だけど……」


「そうだな、地面に手を伸ばす必要もないし、まとめて回収できるから効率は良くなるな、それと俺たちが討伐した魔物は自動回収してくれる機能があるようだ。ほかにどんな機能があるかは試さないとわからないが、今はこれで問題ないだろう。」


「そうね、アイテム回収は【アイテムボックス】に任せましょう。時間は……昼過ぎくらいかな?広場に戻ってお昼にしましょ?」


 朝からダンジョンに来てるとはいえ、昼過ぎで目標が達成できてしまった。今日1日はかかると思っていたのだが……リリーが走り出したのでついていく、迷いなく走っているので、この階層の地図を全部覚えているのかな?途中で出てきたコボルトとミノタウロスは魔法で倒していく。遠距離で倒しているのでアイテムが落ちているそばを走り抜けると自動的に回収される。便利だな……止まる必要がない……しばらく走ると5階の最初の広場についた。


「昼はストックしてある串焼きで良いかい?」


「ええ、構わないわ。不味い携帯食料を食べようとは思わないから……」


「昼メシの後は、魔法についていろいろ検証してみよう。まずはリリーが使う魔法、この世界の魔法についてだな、その後リリーが俺の魔法の使い方を試して使えるかだな……」


「わかったわ。私もお母様から習っただけだから、その方法を話すだけよ?とりあえず使えるから使ってるだけだし……」


 なるほどね、もしかしたらカタリーナさんに聞けばもう少し詳しい内容が聞けるかもしれない、今度会った時に聞いてみよう。食事も終わったので、この世界の魔法について話を聞いてみる。


「とりあえず、知ってると思うけど私は火魔法と風魔法が使えるわ。火魔法の方が得意ね、魔法を使うときは必ず詠唱が必要になるわ。魔力を集めて詠唱すれば魔法が発動するわ」


「なるほど、詠唱が重要なんだね?」


「そうね、詠唱なしで魔法が使える人は一部の魔導士だけよ?この国だと宮廷魔導士くらいかもしれないわ。一部の冒険者にも居るかもしれないけど……わからないわね、詠唱なしで魔法が使える事なんて他人に話さないから」


「今、火魔法の詠唱はできる?魔法を発動させないようにして……」


「できるわよ、魔力を集めなければ発動しないから、普通に喋るのと同じよ?こんなふうに、「火よ我が手に集いて火球となれ」ね?これが詠唱よ」


 ふむ、詠唱の内容に意味があるのだろう。言葉からのイメージだと《ファイヤーボール》だな、詠唱することでイメージしなくても魔力と資質があれば魔法が勝手に発動するのか……俺の場合だと魔法名が詠唱の代わりになっていてイメージを補完している感じだな……こちらに来てすぐに魔法を試したときは魔法名さえ言ってなかったからな……


「だいたい予想はできた。リリー、さっきの詠唱で壁に向かって魔法を使えるかい?」


「できるわよ、普通に使ってみれば良い?」


「そうだね、ただ魔法が発動してから壁に当たって終わるまでをよく観察しながら使ってみてもらえる?」


「わかったわ」


 少し不思議そうな顔をしているが、頷いて魔力を集めるために集中し始めた。


《火よ我が手に集いて火球となれ》


 勢いよく火の玉が飛び出して壁にぶつかり爆発して消えた。広場全体に大きな音が響いたが誰もいないので気にしない。


「どう?こんな感じよ、何かわかったの?」


「そうだね、リリーは今の火の玉をちゃんと観察できた?「火の玉が現れて飛んでいき、壁にぶつかって爆発した。」言葉にするとこんな感じだね」


「そうね、わかるわ」


「それじゃ今見たものを頭の中でイメージしてみて、出来たら《ファイヤーボール》って言ってみてね、魔力を集めることは忘れないでね」


「うーん、イメージは出来そうね、じゃぁやってみるわ」


 また魔力を集めるために集中し始めた。そしてすぐに魔法名を唱えた………


《ファイヤーボール》


 今度も先ほどと同じように火の玉が飛び出して壁にぶつかり爆発して消えた。うまくいったようだ。イメージさえできれば発する言葉は、詠唱でも魔法名でも変わらない。

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