第41話 ミノタウロス3

 ミノタウロスを討伐したが、まだ1匹だけだ。もっと効率よく倒していければ良いんだが………リリーは俺の秘密を知っているので魔法を解禁してみることにする。


「そうか、なら次は俺が魔法を使ってみるよ。とりあえず風魔法で首を狙ってみるかな?切れればすぐに終わるだろうし……」


「うーん、さすがに1回じゃ切れないと思うけど、牽制にはなるしダメージを与えられれば戦闘時間も短縮できるわね。」


 周りに他の冒険者が居なければ積極的に魔法を使ってみよう。3匹のコボルトが現れたの風魔法を使ってみる。えっと、風の刃で切るイメージだな。リリーに当てないようにコボルトの首の高さに……


「《ウィンドカッター》……なんちて……」


『スキル【詠唱破棄】を取得しました。』

『スキル【同時発動】を取得しました。』


バシュ!バシュ!バシュ!


 3匹とも首が切れて頭が落ちた……血が噴き出したかと思うと、黒いモヤに包まれてナイフと魔石が地面に落ちた。リリーは剣を抜いたまま固まっている。


「コボルトだしこんなもんか?それにしても3発同時に発動するとは……」


「アル?何したの?魔法だとは思うけど、なんで3匹同時に倒してるの?」


「いや、風魔法で首を切る練習?をしようと思ってやってみたんだけど……ミノタウロスの時にいきなり使うよりは良いかな?って思ったからさ……3匹同時に倒せるとは思ってなかったけど……」


「そ、そうなのね。詠唱もしてないし、同時に同じ魔法が3つも発動するなんて……」


 ふむ、新しいスキルも覚えたし、魔法能力も高いようだ。ある程度予想してたけど……もしかしたらミノタウロスも一撃で仕留めれるかもしれないな……


「新しいスキルも覚えたぞ、【詠唱破棄】と【同時発動】ってスキルだって、リリーは知ってる?」


「【詠唱破棄】は聞いたことあるわ。でも熟練の魔導士しか使えないはずだけど……【同時発動】は知らないわね。さっきみたいに同じ魔法が同時に発動する効果があるのは分かるけど……」


「とりあえず楽は出来るんじゃない?コボルトならいくら現れてもすぐに終わらせられるわけだから……」


「そうね、魔法とスキルのことは今度ゆっくり教えて頂戴、コツが分かれば私も使えるかもしれないから……」


 確かにリリーも同じように魔法が使えれば敵を倒すのが楽になるだろう。それにこちらの魔法についてもいろいろ話が聞けるだろうから……今度は俺が先頭に立ち歩いていく。コボルトが現れるが全て魔法で倒している。


「《ウィンドカッター》」


バシュ!バシュ!バシュ!


「《ウィンドランス》」


ズバッ!ズバッ!


 新たに《ウィンドランス》も使ってみた。はっきり言えば呪文名は適当だ。自分がイメージした形に魔法が発動するので、《ウィンドランス》は風の槍がコボルトの頭に刺さるイメージをしている。頭が爆散するので実体が残る外では使いたくない……


「私はいらないみたいね……楽で良いけど……」


 リリーが活躍できなくていじけてる?確かに一切攻撃してないから経験値は入らないだろう。ミノタウロスの時は少し攻撃してもらってから魔法を使うようにしようかな?コボルトは倒したところでたいした経験値じゃなさそうだし……


「コボルトはたくさん出るから良いんじゃない?ミノタウロスの時はリリーに攻撃してもらって隙をついて魔法を使うよ、あとコボルトにはいろんな魔法を試してみるから倒せないやつが居たら倒してくれ」


「わかったわ、コボルトは任せる」


 それからコボルトが出るたびに火魔法を試してみた。《ファイヤーボール》コボルトが消し飛んだ。《ファイヤーアロー》頭が爆散した。《ファイヤーウォール》コボルトは火の壁に囲まれて焼け死んだ。解除が遅れたのでアイテムも溶けてしまったが……


「火魔法はこんなところだな、強力なのは良いが実体が残る外で使う場合は、注意しないと全部焦げてしまう……」


「なんか〔灼熱の魔女〕って呼ばれてる私より強力なんだけど……」


 話していると気配察知に大型の魔物がかかった。ミノタウロスだろう。


「お、ミノタウロスが来たぞ!リリー、牽制を頼んだ。隙をついて風魔法で首を落としてみる。」


「わかったわ、やっと剣が振れるわ」


 少々フラストレーションが溜まっていたようだ。ここはある程度戦ってもらおう。リリーがミノタウロスに攻撃を仕掛ける。俺も剣を抜いて何回か攻撃する。ミノタウロスの意識がリリーの方に向いたとき……


「《ウィンドカッター》」


バシュ!


 ミノタウロスの首が落ちた。すぐに黒いモヤが発生してアイテムに変わった。魔石と肉で今回は斧は落とさなかった。


「簡単に首を落とせたわね、次は最初に魔法を使ってみましょう。それでも一撃で倒せるなら走って討伐すれば早くミノタウロスの肉が集めれるわ」


「今回はミノタウロスの肉が目的だからさっさと集めてしまうか……リリーの戦闘や魔法の検証は集め終わったあとにするか……」


 それからは完全に作業になった。走りながら魔法を使ってコボルトの首を落としていく。アイテムを拾ったらすぐに走り始める。1時間くらい走って繰り返しているとミノタウロスの肉は目標の20個に到達した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る